留保と必然

『中小企業のパーフェクト会計実践セミナー』(平成23年11月28.29日開催)を
3日後に控え、資料の作成が終わり、ひと息ついたところで、この原稿を
書いています。
私は、前座話で1時間ほど『望遠鏡とレントゲン写真』という話をさせて
いただきます。当日は、私の話が本にできる可能性もあるので、出版社の
編集者なども参加します。
『望遠鏡とレントゲン写真』というタイトルを見ると、一体何の話をするのか、
まったくわからない感じですが、強烈なドラッカー・ファンならば、“レントゲン写真”
という表現に反応されるかもしれません。
その前座話で、私がお話させていただくことの一つは、司馬遼太郎さんが、
“明治時代の気分”を書いた次の言葉と関連があります。
「社会のどういう階層のどういう家の子でも、ある一定の資格をとるために
必要な記憶力と根気さえあれば、博士にも官吏にも軍人にも教師にもなりえた。
そういう資格の取得者は常時少数であるにしても、他の大多数は自分もしくは
自分の子がその気にさえなればいつでもなりうるという点で、権利を保留して
いる豊かさがあった・・・」
この言葉は、私が朝日新書で書いた『サラリーマンのためのお金サバイバル術』の
後書きでも引用しました。
そして、今も多くの人が、権利を保留している・・と書きました。
しかし、「私たちは、“これから起こる必然を留保されている存在”でしかありません」
(同書より)。
そのことを、“会計”という道具と絡めてお話するつもりです。
本来、会計は、単なる測定器でした。
しかし、商売の仕組みが複雑になるにつれて、会計の思想性を加える一部の
人たちが現れました。
これは、史実として証明は不可能ですが、実務の世界を生きてきた私の確信です。
明らかに、会計には、思想性がある。しかし、会計に思想性を見いだした人たちは
一部でしかない・・というのが、私が発見した確信です。
残念ながら、商売の仕組みが複雑になった時、多くの人々は、会計を思想の
具現には利用しませんでした。
では、何に利用をしたか?
もう言う必要ないですね。“留保”に利用したのです。
例えば、こうした話を聞くことがあります。
息子に見せられないから、赤字決算を、なんとか黒字にできないか・・と要求する
経営者。
会計の利益は、抽象概念でしかありませんから、考え方次第で数字は
変えられます。
粉飾は絶対にやってはいけませんが、会計基準を変えることで、ある程度の
変更は可能です。
こうした経営者は、会計基準の変更を要求しているということになりますが、
その理由が「息子に見せられないから・・」なのです。
これは明らかに、現実を“留保”する行為でしかありません。
しかし、日本の中小企業周辺では、よく聞く話です。
会計が、「これから起こる必然を留保」しているというわけです。
2012年がはじまります。
先進国諸国も、多くのことを“留保”してきました。
そして、その精算を迫られています。
全体は個、個は全体・・・・・・・・。
今の先進国諸国の姿と調子の悪い中小企業の姿は瓜二つです。
どちらも、目の前の現実を“留保”し、現在に至りました。
私は、中小企業で、会計が“留保”に使われたことを悲しく思います。
本当は、そういう道具ではなかったのです。
そして、国の財政も同様です。
使われるべきではない使われ方をしてきたのだと思います。
そして、“留保”は精算を迫られています。
それはすでにはじまっていますが、2012年はさらに、精算は進みます。
それが“留保”の必然です。
そうした“留保”企業の影響を受けないように、与信管理は厳密に進めておきたいところです。

タイガー・ウッズと、フォレスト・ガンプを探せ

反TPP論者に対する反論として、経済学者がよく用いる理論が『比較優位』の原理です。
『比較優位』とは、デービッド・リカードが1817年に提唱した理論で、経済学者グレゴリー・マンキューの言葉を引用するならば次のようになります。


タイガー・ウッズは2時間で芝刈りをすませられるが、同じ2時間をナイキのテレビコマーシャルの撮影に使えば1万ドルを稼ぐことができる。
一方、隣に住むフォレスト・ガンプという男の子は、ウッズの庭の芝を刈るのに4時間かかり、その4時間をマクドナルドで働くと20ドル稼ぐことができる。
この場合、ウッズは芝刈りをせずにコマーシャルの撮影に行き、代わりに、フォレストを20ドル以上の手間賃で雇って芝刈りをさせるべきである。 そうすることでどちらも得をする。


芝刈りをすることでフォレストが被る機会費用(失われた価値)は、たった20ドルですが、ウッズが被る機会費用は1万ドルにも上り、フォレストは芝刈りに関して比較優位を持っているということになります。
つまり、ウッズは、たとえフォレストより芝刈りが得意だったとしても、決して芝刈りをしてはならず、それよりもコマーシャルの撮影に行くことで、大きな利益を手にすべきなのです。
この理論はそのまま会社組織にも当てはまります。
ベテラン社員であるイチローさんは、営業も事務も、新人社員であるジローくんより速かったとします。
しかし、速いからといって営業も事務もイチローさんが行ってはいけません。
イチローさんは、最も得意である営業に特化し、事務はジローくんに任せることで、会社全体の生産性は増すことになるのです。
と言ってはみたものの、こんなことは誰でも感覚的に理解し、知らず知らずのうちに実行していることです。
しかし、感覚ではわかっていても、比較優位の原理が機能しなくなる場面があります。
それは、仕事の締めきりが迫っている等、時間的にタイトな場面です。
イチローさんは、事務仕事をジローくんに任せたいが、その事務仕事自体の期限が迫っているため、やむなく自分で処理してしまう。
そして思うのです。
「あいつはいつまでたっても仕事の遅いダメな奴だ・・・。」
また、そもそもイチローさんが事務仕事をジローくんに任せてまで、特化する仕事を持っていなかったとします。
その場合、事務仕事をジローくんに任せてしまうとイチローさんの時間が空いてしまうため、事務仕事をジローくんに任せる、ということ自体が起こり得ません。
そして思うのです。
「あいつはいつまでたっても半人前だ。早く成長してもらいたいものだ・・・。」
タイトな段取りで仕事を受注したのはイチローさんであり、また、特化するような仕事を持っていないイチローさんの能力に問題があるにもかかわらず、新人ということで全ての罪はジローくんに押しつけられてしまいます。
そもそも、両者の力に大きな開きがあるからこそ比較優位の原理が働くわけですが、その大きな力の差が、(皮肉にも)問題の本質を見えづらくしている可能性があるのです。
(死人ならぬ、新人に口なし・・・)
このような問題を見つけ、正すのはマネジメントの仕事です。
そしてそのような問題を一つ一つ改善していくことで、会社の生産性が増していくのです。
皆様の会社にも、『タイガー・ウッズとフォレスト・ガンプ』はいませんか?
是非とも探してみてください。
このように、古典的な経済理論の中にも、実務の現場で活かせるものはたくさんあります。 『経済学』という響きがアカデミックな印象を与え、どうしても“マクロなお話”という気がしてしまいますが、決してそんなことはありません。
弊社でも、様々な経済理論を経営の現場に生かせるよう、岡本が解説した『なんちゃって経済学』というDVD商品をご用意しています。興味のある方は是非ともご覧ください。
最後に弊社の比較優位事例を一つ。
『岡本は、誰よりも車の運転がうまく、目的地まで速く辿り着けるとしても、決して運転をしてはいけない。』
そして理論通り、私は運転をさせられ、岡本は隣でMacBookAirを開いて仕事をする・・・。

ABC会計

私の新著『実学 中小企業の”パーフェクト会計”』では、3つの章がカットされています。
カットされたのは、すべて応用編で、かなり内容的に難しいものが含まれていました。
私としては、本だけではわからないにしても、網羅性を重視して入れておきたい内容でしたが、それが叶いませんでした。
そのカットされた内容の一つが、「ABC会計」です。
世の中には、「ABC会計」の本がいろいろ出版されていますし、ドラッカーもいくつかの著作で言及している管理手法ですから、名前くらいは多くの方々がご存じのことと思います。
「ABC会計」のツボはいろいろありますが、中小企業の場合、最も重視すべきなのは、“作業量”でしょう。
具体的には、製品やサービスごとの作業の投入量を、コストとして引き直していきます。
私たちは、限界利益が大きい商品やサービスが、自社の有力商品と考えがちですが、その商品、サービスの提供までの作業量を加味すると、まったく違う景色が見えてくることがあります。
例えば、単価が安く、利益率も低いサービスがあったとします。
しかし、そのサービスの提供までの作業量は少なく、それもパートやアルバイトの作業投入だけで、済んでしまうとしましょう。
逆に、高単価で利益率も高い商品でも、作業投入量が大変多いサービスがあったとします。
おそらく、こうしたサービスを持つ企業は、高単価のサービスこそが自社の利益源泉だと思っていることでしょう。
しかし、こうした2種類のサービスについて、作業量を加味して原価を引き直してみると、驚くような結果になることがよくあります。
“成熟社会”とか“付加価値”などという言葉が踊っている今の世の中では、付加価値の高い商品しか生き残れないと思いがちですが、実は、付加価値の低い商品こそが企業の利益源泉になっているということが実に多いのです。
もちろん、付加価値の低い商品は、単独では成り立たない商品であることが多いと思いますし、市場の競争から単価が年々切り下げられるということも起こる可能性は高いでしょう。 しかし、だからといって、ダメな商品とは限らないのです。
ブランディングの難しいガソリンスタンドやクリーニングなどのビジネスは、「ノー・インタレスト・カテゴリー」と呼ばれますが、私は、来年以後、面白くなるビジネスは、こうした領域のものだと考えています。
理由はここでは書けませんが、ある想定から、そのように考えています。
「ノー・インタレスト・カテゴリー」というとブランディングができず、価格競争に巻き込まれがちな商品、サービスだと思われていますが、やり方によっては効率的なビジネス展開がやりやすいものでもあるのです。
「ABC会計」は、一つの分析手法でしかありませんが、こうした分析手法を実行することは、企業戦略を根本から見直すことになったり、そもそものビジネスの概念を変えることもあり得ます。
ぜひとも、経営の中に、作業投入量の概念も、もっと積極的に導入してみてください。

本当に来てしまうとは・・

1998年、ドラッカーは次のように言いました。
会計システム上の問題は単純である。
会計システムは、どれだけの収入があるかはつかんでいる。
どれだけの支出があるかもつかんでいる。
どこへ支出しているかさえもわかる。
しかし、支出と成果を結びつけることができない。
 
また、次のようにも言っています。
あらゆる企業が、組織が会計システムに基づいて意思決定を行っている。
それがいかようにも操作できる代物であることを承知しつつ、そうしている。
 
こうも言っています。
会計システムのどの部分が信用でき、どの部分が信用できないかは明かである。
われわれがとうてい歩くべきでない薄氷の上にいることは明かである。
 
私の新著『実学 中小企業のパーフェクト会計』は、このドラッカーの提言に対する
会計側からの答えです(中小企業だからできる答えです)。
もちろん、ドラッカーの言っていることは大企業会計に対するものであり、
中小企業会計を視野に入れているとは思われませんが、中小企業会計は、
大企業会計よりも酷いことになっているのが実態です。
そして、私は、今まで、そのことを何冊かの本で主張し、対応策を提案してきました。
今回の新著は、そうした私の考えを実務ベースでまとめてみた本です。
そして、中小企業会計側からのドラッカーの問題提起に対する回答としています。
もちろん、本には何もかも載せることはできません。
おそらく、本に書いたことは、私の実務経験から培ったものの30%程度の
ものでしかありません。
また、最も言いたいことは活字では無理という制約もありますから、100%回答
したとは思っていませんが、小さな企業向けの「成果会計」。そして、「思想として
の会計」というドラッカー先生が聞いたら何て言うかちょっと挑戦的な考えも入れて本にしました。
おそらく、2012年以後、会計の役割は変わると思います。
もちろん、2012年から「今日から変わります」と言って、ガラっと変わることは
ありませんが、少しずつ変わっていくはずです (その変わる様の予告も本の中に
さり気なく入れてあります)。
残念ながら、多くの企業はそのことに気づかずに、従来概念で数字を見ていく
ことになるとは思いますが、ドラッカーが10年以上前に提起したことの奥深い
意味を誰もが痛感する時は、すぐそこまで来ています。
会計が得意としてきた、収入と支出の把握は、これからも必要ですが、その意味が
変わってしまう時代になってしまいました。
そういう時代が本当に来てしまうとは・・と個人的にも驚きですが。ドラッカーが
提言した製造業労働者の激減同様に、すでに、事態は動き始めたとみていい
でしょう。
新著『実学 中小企業のパーフェクト会計』をそうした視点で読んでいただくのも
良いと思います。

特需の角度

次のグラフをご覧ください。
家計調査・商業販売統計、つまりは月別推移の消費動向を表したものです。
赤いラインの直前に消費指数は伸び、ラインを跨いだ途端に急激に下がっています。

今度は別のグラフをご覧ください。車・家電・旅行の販売推移です。
グラフの推移は上と同様で、赤いラインの直前で伸び、ラインを跨いで急激に下がっています。

(参考文献:1997年度の金融及び経済の動向 日本銀行)
もう皆さんお分りかと思いますが、赤いラインは“平成9年4月”。
つまり消費税率が3%から5%に引き上げられたタイミングです。 改めて特需の尖り具合を確認することができます。
現在、政府与党を中心に、震災の復興財源(きっかけ?)として増税が、特に消費税の増税が議論されています。
震災の復興に充てるならば緊急を要する話。
増税論議が始まってから、実際の施行に至るまでの助走距離が短い消費税増税となり、さらに税率の増加幅(5%→8%? 5%→10%?)も考慮すれば、平成9年当時よりも、さらに“鋭く尖った”特需となってくるはずです。

さぁ、準備に入りましょう。
“特需”商戦をものにするための多額の仕入代金確保に備え、資金残高を増やしておく必要があります。
当たり前すぎることですが、これに尽きます。
「それだけではないでしょ?自社使用の消耗備品・固定資産等の駆け込み購入のための資金も考えなければ。」
よく勘違いされる方がいらっしゃいますが、その必要はありません。
事業者であれば、支払った消費税は仕入税額控除されて、決算時に納付する消費税を減らす効果があります。
つまり、税率が上がって消費税を多く支払ったとしても、同額の控除がされるため影響はないのです。
(一般消費者は控除することができないため、やはり駆け込む必要があります。)
念のため確認いたしますが、なにも消費税増税が確定したわけではありません。
まだまだ議論されているレベルです。
ただ、実際に発動された時には、他社に初動の差を見せつけてやりましょう。

インセンティブと、シートベルト法と、会計

経済学において、人々の行動とインセンティブとの皮肉な関係を説明する際によく用いられるのが、60年代にアメリカで制定されたシートベルト法の話です。
今では考えられませんが、50年前の車には、シートベルトがほとんど搭載されていませんでした。
その後、自動車の安全性に関する消費者運動をきっかけに、アメリカ連邦議会は、全ての自動車にシートベルトの搭載を義務付ける法律を制定しました。
『これで自動車事故による死亡者数が減少する!』と、当時の政策立案者は考えたのですが、皮肉なことに、思惑通りにはいかなかったのです・・・。
確かに、シートベルトを装着することにより、運転手自身の死亡事故は減少しました。しかし、安全性が増したことにより、運転手はスピードを上げて軽率な運転をするようになったのです。
総合的な結果として、事故1件あたりの死亡者数は減少しましたが、事故件数は増大し、むしろ、弱い立場である歩行者の死亡者数は増加してしまったのです・・・。
このように、政策は、しばしば意図せざる結果をもたらすことがあります。
中小企業における政策として、経営者は、経理・会計の強化を図ることがあります。
今までは自身で会計帳簿を入力し、試算表を作成していたのですが、比較優位の原則から、有能な経理担当者を採用し経理業務を任せ、自身は経営判断に割ける時間を確保します。
『これで、経理体制の強化は図れた。出来上がった試算表から、必要な情報だけをピックアップし、経営分析や戦略会計、経営計画の立案を行い、より有効な“次の一手”を打つ!』 ・・・とは、なかなかいきません。
もちろん、見事に会計を使いこなしている経営者の方々もたくさんいらっしゃいますが、数字に触れる時間が圧倒的に減っているため、数字に疎くなってしまう経営者の方々がいるのも事実です。
社長 「うちの変動比率って何%だっけ? 労働分配率は? 固定費の月平均額は?」
経理担当者 「社長、それは前にも説明しました!」
社長 「・・・。」
このように、経理体制を強化することによって、会社自体の経理・会計能力は上がるものの、経営者自身の会計能力を低下させてしまう、という意図せざる結果を招くこともあるのです。
では、どのような対策をとるべきなのでしょうか?
昔のように、経営者の方自身に会計帳簿の入力を行っていただく、ということではありません。それでは退化になってしまいます。
経営者の方々には、“経理”ではなく、“会計”に触れていただきたいのです。
では、どのように“会計”に触れればよいのでしょうか?
それは、話のわかる会計事務所と付き合い、会計の書籍を読むことです。
当社代表の岡本は9月に、『実学 中小企業のパーフェクト会計』を出版しました。
岡本は本書において、「会計への理解不足が、中小企業経営のボトルネックになっている。会計は、税務対策でもなく、資金対策でもない。経営を安定させるための道具だ。」と述べています。
「いまさら会計?」とは思わないでください。
一度ご覧になっていただければ、岡本が描き出す圧倒的な“会計”の世界に、心が躍るはずです。

実学 中小企業の“パーフェクト会計”

久しぶりに本が出ます。
タイトルは、『実学 中小企業の“パーフェクト会計”』
価格は、少し高めで、3360円。
非常に、ボリュームのある本です。
辞書的にも使っていただけるようにしたためです。
この本は、2005年に書き始め、後書きは2008年に
書き終えました。
書くのに丸々3年かかった本です。
そして、それからが大変でした。
ゲラチェックには、通常の本の何倍もかかり
さらに、出版社の事情も重なり、
書き終えてから3年も経過しての出版です。
おそらく、私の過去の本とはカラーがずいぶん違う本になりました。
特に、第一部は、少し難しい文体に感じるかもしれません。
ただし、この本は、第四部から読んでいただく形を取っています。そして、この
第四部が、最も、私の過去の文体に近い雰囲気になっていると感じていただ
けると思います。
別に、本は最初から読む必要はないわけですが、
そのことを執筆時に意図するというのは珍しいことだと思います。
もちろん、「はじめに」に、そのことは書いてありますから、読者の方が間違う
ことはないようになっています。
さて、この本は“パーフェクト会計”を標榜するように、
中小企業のために使える会計を目指しました。
それも、大雑把にも使えますし、オタッキーに利用することも可能になっています。
また、実際に、実行していただくために、
一部のソフトの公開や体験のための個別相談も用意しました。
会計を本当に使い倒していただくことを目的としたからです。
この本にも書きましたが、
私は、会計は思想だと思っています。
会計の専門家は、標準というものが、どこかに存在するように、
「一般的には・・・です」とか
「優秀ですね・・」
などと言いますが、
そんなものはないと思うのです。
もちろん、赤字では困りますから、
赤字がダメという標準はありますが、
会計に対する私たちの態度は、思想的なものであるべきと考えています。
そして、自分が持った思想を実践するということは、
会計を普通ではないナニカにすることだと考え、この本ではそのことを主張して
います。
ドラッカーは、
知識社会では、卓越した知識労働者しか通用しないと言いました。
有能ではダメだと言うのです。
私が、この本で提起したことも同じです。
卓越した企業を作るための会計というものを提起させていただいたのです。
発売は、9月8日です。
ぜひともお買い上げ下さい。

くら寿司の顧客サービス

大阪に本部を構える回転ずしチェーン“くら寿司(株式会社くらコーポレーション)”。
東証一部に上場した2005年には345億円だった売上高が、2010年には707億円(利益額50億円)へ。
公開数字を見る限りは、『急成長の企業』と言っていいのではないでしょうか。
ビジネス誌等でも何度か紹介されているため、ご存知の方も多いと思いますが、くら寿司では次のような顧客サービスを行っています。
■食べた皿を、その都度、皿カウンターに投げ入れいていく
■皿を5枚入れるたびに、液晶パネルでゲームがスタート
■「当たり」が出れば、各席に設置されているガチャガチャから景品をゲットできる
このエンターテイメント、イメージできましたか?
液晶パネルを使ったゲーム、「当たり」が出たときにガチャガチャから転がってくるカプセル景品、そして、ゲームのギャンブル性(筆者の実感では約25%の当たり確率)。
もう、子供にとってはたまりません。
“子供の喜ぶ顔を見る”のが好きな模範的ファミリーであれば、5の倍数で食事を終えるよう(次フロー参照)、かなりの確率で誘導されてしまいます。
■24皿⇒25皿
「あと1皿、あなたがんばって。」(4%売上増)
■23皿⇒25皿
「私が1皿がんばるから、あなたも、もう1皿。」(8%売上増)
■22皿⇒25皿
「私が1皿、あなたも1皿。子供たちは2人で1皿がんばりなさい。」(13%売上増)
たまに、同サービスの一部(液晶パネルでのゲーム等)を借用している同業者のフォロワーを見かけますが、あまりうまくいっているとは思えません。
当社代表の岡本も著書『稼ぐ超思考法』で述べていますが、このようなアイデアを目にした時、同業者による単純な人マネではなく、他の分野の方がこのような「手法」、「構造」だけを借用し、自らの事業に生かしていく“ブリコラージュ”が有効になるのではないでしょうか。

震災後の在庫の考え方

在庫は少なく!
これが経営の鉄則でした。
しかし、震災によってこの鉄則が揺らいでいるのは皆さんもご存じの通り。
在庫を極端に圧縮し、その都度仕入れるという効率性を重視してきた結果、「売るものがない」、「作れない」という状況に陥りました。
また、“仕入先を集中して、調達コストを下げる”という、もう一つの鉄則も状況の悪化に拍車を掛けています。
5月は上場企業の3月決算の発表が相次ぎましたが、製造業に関しては生産能力の回復が不透明なため、当期の業績予想の発表を見送る企業が多くなっています。
まさに、日本経済を左右しているのは、“生産がいつ回復するのか?”という点です。
生産の回復待ちは自社ではどうにもならない事なので、今後の課題として検討すべき事項は、「在庫を増やす」、「仕入先を増やす」となります。
では、大企業の生産・物流体制の見直しが叫ばれている中、中小企業にこれが出来るのか?
まずは「在庫を増やす」という点について。
在庫をどの程度増やせば良いかという問題自体はシンプルです。
例えば、今後同じような状態に陥った場合、どの程度の時間があれば“代替品”、“代替取引先”、“代替設備”を確保出来るかに応じます。
その確保までの期間が10日なのか、1ヵ月なのか、3ヵ月なのか・・・。
その期間によって、その分の在庫を増加させればよいのです。
もちろん、在庫を増やさず、もともと扱っている品物の入荷を待つという選択肢もありますが、入荷待ちの状態に応じて売上高の減少というリスクが発生しますので、原則として余力のある企業のみが採用出来ます。
とはいえ、今回の件で、すぐさま在庫を増やすべきという結論には達しません。
なぜなら、在庫を多く抱えるという事は、お金がその分在庫に回り、資金繰りを悪化させる要因になるからです。
手元キャッシュが潤沢な企業を除き、在庫増加には別途資金手当てが必要です。
また、在庫を増やすという事は、同時に不良在庫の額も増える事を意味します。
さらに、在庫の保管費用の増加も起こります。
まさに売上高の減少を防ぐためのトレードオフの関係です。
次に、「仕入先を増やす」という点について。
これは単純に仕入先を増やせばよいというだけ。
それも、地域を分けつつ分散するのが安全です。
ただ、これは“選択と集中”というコストコントロールに重要なポイントを外すという事になりますので、すぐさま仕入額を均等に分散させるべきではありません。
その準備をしておけば十分です。
つまり、主要仕入先の所在地域から離れたエリアに別の仕入先をいくつか探し、少額の取引を始めておけばよいのです。
これであれば、主要仕入先に万が一の事態が起こっても、すぐに対応する事が可能です。
以上、突発的な事態に対しては、次の一手が事前に想定されているか否かで、初動とその後の業績に与える影響が大きく変わります。
在庫の問題も、在庫額を増加させるのが根本的な解決につながりますが、現実的に実行出来ない企業もあります。
しかし、次善の策として、仕入先の選択肢を増やすという手段を実行出来ない企業はありません。
特殊な品物で、仕入先の代替が効かないのであれば、借金をしてまでも在庫を積み上げるだけです。
今回の震災にかかわらず、原材料の値上げや、原油高により、ただでさえ企業コストは著しく上昇しています。
さらに、在庫増加によるコスト高と続けば、これを吸収するのに値上げという選択肢を排除するのは危険です。
そういう意味では、今回の震災は企業の危機管理上の重要なターニングポイントでした。
このターニングポイントで何もアクションを起こせないと、次のターニングポイントを乗り切れるのか・・・と、想像しておく必要があります。

半年後・・の景色

東北地方の巨大地震の発生から一ヶ月以上が経ちました。
その影響は被災地は当然として、被災地以外にも広がっています。
政府系金融機関を中心に、中小企業の資金繰りの手当のバックアップは
されていますが、被災地が優先されるため、資金繰りに苦しむところもある
ようです。
阪神・淡路大震災の際には、被災地以外の企業では、1年を待たずに
売上げが回復したところが多かったようですが、現時点では、都内の
飲食店でも、いまだに売上げの回復は見られません。
実は、小売業やサービス業の場合、震災後二ヶ月頃が正念場と言われ
ています。
製造業は、全般的に、震災復興の絡みから生産再開にさえなれば、売上げ
回復していきますが、後ろ向きな消費ムードが明るくなるには、どうしても
時間を要します。
さらに、ずるずると状況を打開できずにいると、半年以内の倒産もあり得ます。
企業には、良い時も悪い時もあります。
通常、順調な成長が止まり、状況が悪くなれば、それに対する対応を企業
は行っていきます。
企業経営を行っていれば、必ず、事件は起きますから、こういうとき時こそ、
企業の力がためされる時です。
しかし、今回のように日本中の企業が一つの事件に遭遇した場合は、
状況の対応を怠り、単に、仲間と傷をなめあう・・ということが起こりがちに
なります。
バラバラに各企業で事件が起きていれば、事件をきっかけに、新たな対応
をする・・という健全性の循環が起こるわけですが、日本中で同時に事件に
遭遇すると、その健全性の循環が止まってしまう場合があるわけです。
地域企業が、商工会議所などの地域団体に集まって、地元の経済の地盤
沈下をお互いに嘆き合う・・という景色は日本の地方でよく見られる景色ですが、
その景色が日本中で起こってしまうわけです。
そして、ずるずると状況を受け入れていってしまう・・。これは大変危険なこと
です。
したがって、苦境を震災のせいにするのは、そろそろ止めにして、健全性の
循環をはじめなくてはいけません。
なお、銀行は、震災を機会に、ゾンビ企業の整理に入るはずです。業績の
打開が見えず累積損失がドンドンたまっていく中小企業をゾンビ企業と言う
ことがあります。
こうしたゾンビ企業も、地域の金融機関は、地元経済のために、ギリギリまで
応援をしてきました。
しかし、多くの企業の資金要請に対して、金融機関は改めて対応を企業ごとに
考えてきているはずです。
そして、ゾンビ企業の支援を止めるきっかけに、今回の震災はなるはずです。
残念ながら、こうしたゾンビ企業の倒産が、まずははじまります。
そして、次には、するずると対応を遅らせる企業の倒産が待っています。
こうした動きが、震災の半年後くらいから具体的になるはずです。
そろそろ、震災について嘆くのは止めましょう。
この日本中を巻き込んだ事件でさえ、新陳代謝のきっかけと考えましょう。
私たちは、何があっても、商売を続けなくてはいけません。