補助金騒動

事業再構築補助金の申請受付が4月15日から開始となります。

「あんなもの使えないよ!」

指針の手引きや公募要領を確認されて、多くの方がそう思われたことでしょう。

想定されていた要件よりもかなり厳しいものだったということは、補助金コンサルタントの反応で分かりました。実際、私どもも多少面食らったというのが正直な感想です。

ただし、国の思惑どおりかもしれません。異常なまでの期待値を下げるという意味では絶大な効果がありました。

補助金コンサルタントの話では、事前に一番問い合わせの多かった案件が『コインランドリー事業』とのこと。私は耳を疑いましたし、そのレベルかと呆れました…。

しかし、忘れてはいけません。

事業再構築補助金の予算額は1兆円を超えております。前代未聞の予算額であり、完全なる救済措置です。ぜひとも利用してほしいと中小企業庁も強調しております。

ここまでお伝えすれば十分かと思われますが、補助金だけが目当てで、事業の深掘りに取り組まない中途半端な企業を切って捨てるという趣旨だと、私どもは捉えております。実際、補助金が出るなら何かをしようと飛びついた企業から早々に脱落したと考えられます。

私どもは現在、一回目の申請のために数社のお客様のお手伝いを行っておりますが、もともと新たな事業、または設備投資の相談を受けていた計画を事業再構築補助金用に落とし込んでおります。補助金を受けられたらラッキー、受けられなくても実行するというレベルです。

コロナ禍にかかわらず、業績が好調な企業は事業再構築の必要性を感じないのかもしれません。また、業績が悪化し続けていた企業は事業再構築に取り組むだけの気力・体力がないのかもしれません。

ですが、事業再構築はコロナが発生したから、または売上が下がったから行うものではありません。悪い事業を切り離し、良い事業を伸ばすため、継続的に行っていく必要があります。そこに補助金は関係ありません。

従いまして、補助金をもらえるのであれば何かをやろうというレベルの計画では、今回の申請要件を充たすことは困難ですし、継続性がある事業とは考えられません。

資料だけを眺めれば確かに厳しい要件なのです。ですが、具体的にお客様と私どもがお打合せしながら検討すると「要件を充たしそうだね…」ということが多くありました。あとは準備期間も含めて、いつ頃申請を行うかというスケジュールの確認が中心です。

確かに公表資料を自社だけで検討するのは難しい判断だと思われます。しかし、そのための認定支援機関です。計画をよく相談したうえで深掘りし、それは本当にやるべき事業なのか、本当に申請できないのかなどを真剣に検討されるべきです。

ほとんどのライバルは脱落しました。
公表資料を浅く眺めただけだからです。

100万円~6,000万円もの補助金を簡単にもらおうと考えてはいけません。
どうせなら苦労の上で獲得されてください(それでも採択率は50%と予想されています)。

計画を真剣に深掘りするだけでも意義がありますし、そこまで行われてこそ事業の継続性が確保されるはずです。

「専門家」の罪

三井住友銀行は今月15日、相続、健康相談などをワンストップで提供する高齢者支援サービスを立ち上げると発表しました。サービスは提携先の「専門家」を通じてサブスクの仕組みで提供するそうです。

日々、セカンドオピニオンなどでご相談をお受けして感じるのは、世の中には多くの「専門家」がいる一方で、その専門家が必ずしも「適切な相談相手」として機能していないという事実です。

私はここ半年で、信託銀行による遺言信託がらみの相続の相談を2件受けました。

ご存じのように遺言信託とは、信託銀行などが遺言書作成の相談から遺言書の保管、遺言書の執行まで一貫してお手伝いしてくれるサービスです。

今回、いずれのケースも残された遺言に不公平感を持つご相続人がいらっしゃり、争いに発展する一歩手前でのご相談でした。

愛するご家族に争いが生じないことを願い、良かれと思って残した遺言状。故人の遺志がつづられる付言には「兄弟仲良く」と書かれています。

しかし、過去の経緯を含め、ご家族のご事情をお聞きすると残念なことに「争いが起きてしまうことが避けられない」内容の遺言状になってしまっていました。

悔やまれるのは、初めからこのご家族をよく理解した「適切な相談相手」が力になっていたなら、容易に争いを避けられる形を作れたであろうということです。

税理士は相続税の「専門家」です。お金の「専門家」である銀行員には優秀な人がたくさんいますので税理士よりも相続税に詳しい人もいることでしょう。

しかし、いずれの「専門家」も皆さんにとって「適切な相談相手」であるかは別のお話しだということを理解していなければなりません。

相続において最も難しく、そして大切なのは皆さんの「感情」。
誤解を恐れずに言い切ってしまえば、税金なんて二の次です。

どんなに仲の良いご家族でも、ご相続に際しては必ず一人ひとり別々の感情や想いを抱いています。それはご家族がたどってきた歴史によって積み重ねられた、とてもとても複雑なもの。専門家と呼ばれる人間が専門知識だけで簡単に量れるものではありません。

複雑な事情を抱えがちな中小企業経営者のご相続をお手伝いするにあっては特に、そうした歴史をきちんと把握したうえで皆さまの感情に寄り添うことができなければ、役割を全うすることはできません。法律うんぬんよりもまず「その会社、そのご家族の専門家」でなければならないのです。

ですから私たちは、セカンドオピニオンとしてスポットでのご相談をお受けすることはあっても、直接的なご相続のお手伝いは顧問先様以外お断りしています。

中小企業経営者には「適切な相談相手」となる「自社の専門家」の存在が必要です。
簡単には見つからないかもしれませんが、諦めずに探し求めてほしいのです。

ただし、ただの「専門家」を「自社の専門家」に育てあげるには皆さんの力も必要です。
普段から密にコミュニケーションを取り、自社のことをよく知ってもらう努力を忘れずに。

プロフェッショナルか否か

一時支援金の申請が始まりました。

1月に発令された緊急事態宣言の影響を受けた事業者に支給されるものですが、時短営業の協力金を受ける飲食店などは対象外となるため、要件を充たす企業はそれほど多くは無いと思われます。

ただ、不正防止の観点から登録確認機関(税理士、金融機関や商工会など)の事前確認を受けたうえで申請することになりました。そのため、登録確認機関としての資格を有する機関には国から“強め”の協力要請が出ています。

3月15日時点での登録状況は以下のとおりで、士業等には中小企業診断士や行政書士士などが含まれています。

全国の税理士事務所数は3万弱程度のため、登録状況に他の士業が含まれているとしても現時点で2割前後の登録数と考えられます。

登録機関が事前確認を行った場合、国から事務手数料として1,000円/件が支払われます。事務手数料を辞退した場合は申請者に対して自由に手数料を請求できますが、国が金額を決めている以上、申請額の1割というような請求は難しいところでしょう。

「この忙しい時期に、ボランティアなんかやっていられない!」

これが有資格機関の正直な感想であるはず。そして、自らのお客様に対して「うちは対応しないから、よそで確認してもらってくれ!」という税理士が意外に多いと耳にしました。

個人確定申告の詰めの時期であり(今年は4月15日まで延長されました)、続けざまに3月決算法人の確定申告というタイミングでもあるため、気持ちは分からなくもない…。

ただ、お付き合いがあるお客様に対して協力しない、あるいは協力する余裕すらないというのはすごい感覚だなと感じております。

また、事業再構築補助金についても「顧問税理士がやらないと言っている!」などのご相談を実際に受けております。

確かに給付金や支援金と異なり、ノウハウが必要とされ、膨大な手間が掛かる補助金申請については非対応も致し方がないとは考えます(誤解なきようにお伝えすると、補助金の申請にはそれなりの報酬が発生するのが一般的です)。

しかし、事業計画の作成まで必要となると顧問税理士が適任であることは間違いなく、それが無理であれば窓口を広げている他の支援機関に依頼が殺到するはず。しかし、大量にさばける支援機関はごく一部と考えられるため、順番待ちによる補助金難民企業が多数出ることが予想されます。

今後、不正防止、生き残りをかけた中小企業を深く支援するため、国が認める支援機関の関与が必須となるものが多くなってきますが、その認定支援機関の代表格である税理士がこのようなスタンスだと雲行きが怪しくなってきます。

そもそも、1年前から始まった新型コロナ関連の支援策につき、各専門家の対応に疑問を感じている中小企業の経営者が多いのではないでしょうか。

雇用調整助成金の開始時期における社労士からの拒絶反応もなかなかのレベルでしたが、コロナ禍でも積極対応していた専門家は拡大志向であり報酬目当てでもあるようでした。

当然ですが、毎年合格者が増えているのですから各専門家の人数は増えています。しかし、プロフェッショナルの割合が急速に減少していると感じるのは私だけでしょうか?
私どもはコロナ禍で専門家の化けの皮が剥がれ始めたとすら考えております。

そういう当社も、顧問税理士のご依頼をいただいても元々お付き合いがない企業様からはお引き受けしていません。現在はセカンドオピニオン契約にて継続してご相談いただいているお客様からご依頼いただいた場合のみ検討させていただいている状態です。

いまさらですが、コロナ禍のずーっと前から経営環境が急速に変化していました。そのため、お客様一社一社に掛ける時間やエネルギーが確実に増加しており、より丁寧に、より深くお付き合いしていかなければ良い仕事はできないと考えております。

これはプロフェッショナルであれば共通認識であるはず。

コロナ禍で今も苦しんでいる中小企業の中には、プロフェッショナルとお付き合いしていなかったことが原因であることも多いように感じます。

今後はより混迷が深まる可能性がありますので、皆さまも安心してお付き合いできるプロフェッショナルは確保されておいてください。

いざというときに「うちはやりません」、「うちはやれません」では何のためのお付き合いなのかということになってしまいますので…。

なお、これはあらゆるビジネスに共通の課題だとも考えております。

リスクマネジメント

経営者は自社のさまざまな「もしも」を想定し、抱えるリスクに備えていかなければなりません。

事業リスク、災害リスク、法務リスク、財務リスク、社員の退職リスク、今回思い知らされたパンデミックリスク・・・。

経営者はイヤになるほど多くのリスクに囲まれていることを改めて痛感させられます。

それでもこうした会社が抱えるリスクについては保険などを通じて、ある程度の備えをしているものですが、意外とできていないのが経営者自らの身の回りに潜むリスクへの対応です。

さて、皆さんはご自身の財布の中身をどれだけ把握できているでしょうか。

もしも今日、財布を落としたら、全てのクレジットカードや銀行カードを漏れなく素速く止めることができるでしょうか。

もし明日、交通事故であなたがこの世を去ったなら、ご家族は預金口座や生命保険など、全てきちんと把握できているでしょうか。

もちろん、もしものことは、そうは起きません。
しかし、それが起きてしまえば、困るのは未来の自分であり、ご家族です。

財布の中身から始まり、預金口座、クレジットカード、株式、貸金庫、不動産、生命保険、地震保険、借入金、もしもの時に残されたご家族が相談すべき人の連絡先まで。

おそらく半日から1日もあればリストアップは可能なはず、それほど大した手間ではありません。これらの情報、連絡先をひとまとめにして、家族にも渡しておくのです。

たったこれだけのことで、財布の紛失から、もしもの時にご家族がやらなければいけないことの把握まで備えることが可能です。

定期的に情報を更新していくことで身の回りの棚卸作業にもなり、無駄なコストの削減にもつながったりします。自身の身の回りを改めて把握することで、思わぬ気付きがあるかもしれませんし、ご家族も安心するはずです。

把握はリスクマネジメントの第一歩。ぜひ実行してみてください。

 

中小企業が目指すべきDX

DXと耳にした時点で思考停止に陥り、「うちには関係ないや…」とお考えの経営者は数多いと思われます。

昨年末に発表された税制改正大綱に以下のような文言がありました。

ウィズコロナ・ポストコロナの新たな日常に対応した事業再構築を早急に進めていくためには、デジタル技術を活用した企業変革(DX)が重要であるが、これを企業ごとのレガシーシステムの温存・拡大につながらない形で進める必要がある。

コロナ禍において、日本自身がレガシーを代表するような構造にあることが露呈したのは皮肉ですが、重要なポイントはDXは手段であって目的ではないということです。

企業における目的は事業の再構築であって、DXを重要な手段として進めてくれという趣旨です。そして先月ご案内したとおり、国は事業再構築補助金という兵站の用意も進めています。

「うちには関係ないや…」とお考えの方は、DXという手段(武器です)を手に取ることすらしないのですから、負けても言い訳にできません。

なお、ご存じのように大企業であってもDXを上手く進められるとは限りません。むしろレガシーシステムと言われる厄介なものを抱え、八方ふさがりであるケースも非常に多いとのこと。

そういう意味では、大企業や中堅企業より、中小企業の方がDXを進めやすいはず。レガシーな人材はいてもレガシーなシステムなんて無いに等しく、「えーーーーい!」という割り切りの下に、せめて一年、のたうち回ることを覚悟すれば結構行けてしまいます。

では、DXは何から手を付けるのがよいのでしょうか?

もちろん社内の業務を俯瞰することから始まりますが、DXが何たるかも分かっていない段階から核心となる業務のシステムに手を付けてしまっては失敗が目に見えています。

入口があって出口がある。

出口であるバックオフィスのシステムはフロントシステムに比べてシンプルな構造であり、やることはどの企業も共通です。従って、中小企業においてはバックオフィスのDXを進めたうえで、フロントシステムにつなげて行くというのが王道ではないでしょうか。

もともとバックオフィスに割ける人員は少ないがゆえにシステムもそれに合わせた構造になっています。とくに会計、給与、販売管理が充実しており、クラウドで連携するのは当然のレベルです。

もちろんフロントシステムや経費精算もつなげられますし、とうとう請求書や領収書などの電子保存も簡単な方法で認められました(システムさえ整えれば、来年からはレシートの写真をスマホで撮ったらポイって捨てられます)。税金もインターネットバンキングにすらアクセスせずに電子納税できてしまいます。

最後の決め手が電子インボイスの推進。2023年10月から始まるインボイス制度(すべての企業に義務化される消費税の制度)に振り回されないようにするには、電子インボイスを発行できるようにするとともに、電子インボイスを受け入れられるようにしなければなりません(取引先と請求書をデジタルでやり取りし、そのデータをそのまま会計ソフトなどに取り込んで自動で登録するなどのイメージ)。

つまりパソコン一つでバックオフィスがクラウドに連携してペーパーレスで完結する環境が整いつつあり、大企業より中小企業の方が迅速に移行できるはずです。しかし、それはDXという手段を手に取るかどうかに掛かっているとも言えます。

事業再構築補助金の申請要件を充たさなくても、IT導入補助金など他にも国が兵站を用意しているのですが、DXに意識的でなければ知ることもない補助金でしょう。

コロナがあろうがなかろうが、人口減少時代においては少ない人数と少ない時間でより多くの粗利益を稼いでいかなければなりません。そういう意味でもDXは必須です。

もし皆さまの会社においてDXが進まないのであれば、誰が止めているのか?
経営者か、スタッフか、付き合いのある業者か、あるいは事業構造そのものなのか…そこもポイントです。

また、「DXだー!」と意気込んでも、各部署・各担当がシステムを勝手に入れてしまう、連携が取れないシステムをばらばらに入れてしまう等も十分起こり得ます。

DXを進めても負荷が移転しているだけで、会社全体として負荷が下がっていないということでは意味がありません。トランスフォーメーションを起こすには「つながる」ことが必要です。

なお、社内の人間が社内のありとあらゆる業務を全部把握しているのであれば、その方を中心にDXを進めれば良いと思いますが、そうでないのであれば外部からも支援していただくべきです。つながりは俯瞰できないと分かりません。

繰り返しますがDXは目的ではありません。あくまで手段であり、デジタルである必要がないものは超アナログでよいのです。

デジタルであろうがアナログであろうが、社内の業務のつながりを強化し効率化する。社内のリソースを最大限生かすためにDXを取り入れていく。そして事業の継続性のために粗利益を稼ぎまくる。

中小企業が目指すDXは、そもそも難しく考える必要はないのです。

DXをやらないと決めたのであれば、アナログで稼ぎまくる手段を考えてください。何も問題はありません。

さあ、皆さまはどちらでしょうか?

高いけど、いい

中小企業の経営戦略イコール「価格設定」。
そう言い切っていいほど重要な価格戦略には、何度も言ってきたことですが大きく分けて2つの意味があります。

当然ながら収益の確保。もう1つは顧客のスクリーニングです。

当社では昨年、新型コロナの影響で社内の懇親会等を一切行うことができなかったため、年内最後の営業日に事務所でランチをいただくことにしました。

そこで当社の女性スタッフが選んだのは麻布十番の中華屋さんからのラーメンの出前。
メニューの一部をご紹介します。

【メニューの一部】 (全て税抜価格)

タンタンメン 
1,900円
五目海鮮入り醤油味ソバ
2,900円
かに玉入り醤油味ソバ
4,000円
五目チャーハン
2,800円
焼餃子(5個) 
2,100円
天津丼
4,000円

今年は1回もみんなで食事に行っていないから、少しくらい高くてもいいよと言ったものの、この店でいいかと聞かれてホームページを見て驚きました。

一番安い麺類と餃子で税抜4,000円(笑)。ちなみにラーメンも餃子もごく普通サイズ、店の立地を考慮しても、なかなか勇気ある価格設定です。

価格に驚きながら、店の評判を調べてみるとさらに驚きます。

見る限り、個人のブログやグルメサイトなど口コミのほとんど全てが「高いけど、とても美味しい」「値段に見合う美味しさ」「至極」というようなものばかりで、「高過ぎる」といった批判的な声は見当たらないのです。

この店のラーメンが万人受けする美味しさということもあり得ますが、好みがありますので、一定数の批判的な意見は必ずあるものです。

では、なぜこの店にはそうした声が見られないのでしょうか。

おそらく、このラーメンとは思えない高価格が理由です。

ラーメンにこれだけの金額を出せるのは、価格が高いことにいちいちネットで文句など言わない層のはず。美味しくない、価格に見合わないと思えば、次はもう行かないだけ。
逆に美味しいと思えば、高くても繰り返し利用する層のはずです。

この価格設定でなければ、こうした層の顧客と出会えることはありません。
中途半端ではだめなのです。

この店の価格設定が、顧客のスクリーニングを意図してなされたものかは分かりませんが、結果として一部の優良顧客層だけを惹きつけることに成功していることは間違いないでしょう。

一方で、高価格であるとういことは、常に顧客から厳しい目で見られることになります。

この店はラーメン、チャーハン、餃子にこれだけの価格を付けることに相当なプレッシャーを感じながら、日々、質の高い仕事を続けてきたのではないでしょうか。

新型コロナで前提条件が大きく変わってしまった今、規模で勝負ができない私たち中小企業は、経営を一から考え直さなければいけません。

「高いけど、いい」

お客様に、そう言っていただける経営を、この店は実践しているのです。

補助金を使いこなせる企業

もらえるものはもらえばいい。

コロナ禍での補助金受給は、ある意味義務でもあります。
しかし、国からの補助金を受け取らないと潰れてしまうようであれば、それは民間企業の経営ではありません。

補助金はあくまで補填。
補助金が無くても継続企業として成り立つ状態であり続ける必要があります。
(そのための内部留保であり、借入に困らない業績を続けることが重要)

そして、次は継続企業としてあり続けるために、コロナ関連の補助金として最大級のものが登場します。

事業再構築補助金

持続化給付金や家賃支援給付金、雇用調整助成金など要件を充たせば確実に受給できるものに対して、「当選」or「落選」という審査をくぐり抜ける必要があるものです。

既にご存じの方も多いとは思いますが、簡単にまとめると以下のとおりです。

*コロナ以前に比べて売上減少が10%以上の中小企業が…

*税理士等の認定支援機関と一緒に事業計画を作成し…

*補助事業終了後3~5年で「付加価値額」または「一人当たり付加価値額」が
 年率平均3%以上増加することを目標として事業を遂行することにより…

*6,000万円を限度に、総事業費の2/3を補助する

コロナによる環境変化に対応して、新分野の進出や業態転換、事業・業種の転換、これらを通じた規模の拡大などを目指す取組みを対象に、「建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費、研修費、広告宣伝費など」幅広い経費を認めている点が大きな特徴です。

繰り返しますが、コロナ関連の補助金です。簡単に当選するわけではありませんが、これまでの補助金に比べたら当選の確立が格段に高いと考えられます。

現時点で詳細は発表されていないため上記リンクの情報以上のものはありませんが、事業の再構築を検討されている企業はぜひご検討ください。

「じゃ、うちも補助金もらおう!」

と、誰しも手を挙げたいところでしょうが、誰しもができるものではないとも考えております。

なぜなら、常日頃から事業計画を真剣に検討していなかったり、そもそも事業計画なんて作ったこともない企業にとってはハードルが高すぎます。

また、補助金を受取りたいがために慌てて検討した事業計画が本当に中長期的にプラスになるかは大きな疑問があります。そもそも補助率は2/3です。残りの1/3は自己負担であり、事業の継続にはランニングコストが発生し続けます。中途半端な計画で補助金を受けることはとても危険です。

スケジュール的には令和2年度3次補正予算案が成立しだい、2月前後に公募が開始され、3月前後に申請の受付けを開始という流れが想定されています。予算は1兆円以上が予定されているので、今後数年に渡って行われる可能性が高く慌てる必要はありません。

ただし、公募回数が増えるごとに審査が厳しくなるのは常ですし、補助金の受付に合わせて事業を再構築しようとすればスピード感がなくなります。

したがいまして、事業再構築を計画中であり、さらにそのタイミングに補助金の申請がピタリと合う企業にとっては宝くじのようなお話です。

そして、今後はこのような補助金が主流になっていきます。国も口には出さないものの、持続・継続できない企業、計画できない企業は退場して欲しい…という裏返しです。

いまある大企業も過去に国・公的団体のさまざまな支援を受けてきたはずです。補助金に頼る経営はダメですが、補助金の波に乗れる企業には理由があります。

それはもちろん常日頃から中長期を見据えた計画を立てることです。

 

発想

昨年は新型コロナによる緊急事態宣言を契機に、デジタル化・クラウド化推進の波が一気に訪れました。

年末に公表された税制改正大綱でもDX投資促進税制を始めとし、電子帳簿保存法の大幅要件緩和など、デジタル化への政府の意気込みが伝わってくる内容となっていました。

一方で、世の中のそんな流れにあらがうようなサイゼリヤの「アナログ化」への取り組みが12月25日の日本経済新聞で紹介されていました。

多くの外食産業が人手不足に加えて人と人との接触を避けるために、タッチパネルなどの最新機器を導入して料理の注文を受けるなか、サイゼリヤは携帯端末の使用をやめ、紙の注文票にお客様が手書きして注文する方式に変えたのです。

メニューには料理に対応する「DG01」といった4文字の英数字が割り当てられており、店員がコールベルで呼ばれたときにはお客様によって記入済みの注文票を受け取るだけ。接客時間は従来に比べ半分程度にまで減らせたそうです。当然、携帯端末にかかる費用も削減できます。

ここで注目したいのは、あえてアナログに戻すことによる効率化の実現と、注文票を「お客様に書いてもらう」という発想です。

皆さまの事業の中で、本来であれば、お客様から対価をいただいて提供すべきサービスについて無償で提供してしまっていることはないでしょうか。それは、言い換えれば対価をいただかないのであれば、お客様自身に行ってもらうべきことかもしれません。

年の初めに改めて自社が提供するサービスと対価について考えていただきたいのです。

もちろん、店員が注文を取る作業に対して対価をいただくことはできませんが、サイゼリヤのように低価格でお客様を満足させる商品の提供を実現するためには、お客様にも協力していただくという発想があってもいいはずです。

サイゼリヤがこの手書き式を導入したのは、特徴である末尾が「9円」のメニュー、ミラノ風ドリアを299円から300円、ガーリックトーストを189円から200円などに「値上げ」をしたタイミングと同時です。

にもかかわらず「値上げをしておいて、客に注文を書かせるのか」といった声は聞こえてきません。私も利用しましたが、注文を自分で書くことに特に何の違和感も覚えませんでした。

未だ終息が見えてこない新型コロナ騒動の開始から間もなく1年になろうとしています。

はっきりとしているのは、ここまで前提条件が変わってしまった今、過去の慣習や常識は何の意味も持たないこと、今やデジタルが当たり前のことも再度疑ってかかる必要があるということです。

そして、戦略の要である値上げを実行する次のタイミングに向けて、今から周到に準備を進めておかなければいけません。

今年もまた1年が始まります。
ともに見たくない現実に目を向けていきましょう。

本年もどうぞよろしくお願い致します。

中小企業の再編促進、加速

まるでノアの方舟の様相です。

業種ごとにかなりの強弱がありますが…今年の倒産企業数は昨年を下回って推移しているようで、国の延命措置が功を奏しています。
これに対して廃業企業は過去最高になる可能性があるとのこと。

ここで改めて倒産と廃業の違いを簡単にお伝えします。

「残った債務の支払いができるかどうか」

債務(借入金や買掛金など)の支払いができなくなれば倒産、債務の支払を完了したうえで事業を停止できれば廃業です。

理由はともあれ、廃業は事業継続を断念したということなので、規模が小さい企業が大半です。それなりの規模の企業で債務超過でないのであればM&Aという選択肢を取り得るからです。

もしM&Aが難しいのであれば廃業は賢明な判断です。商売は信用ですから、倒産で周りを巻き込んでは再起も難しくなる…。撤退が早ければ再起も早められます。

問題なのは、いまの日本は再起を限りなく遅らせる、つまり廃業ではなく、大きな倒産を助長する延命措置が行われている点です。借金漬けにして延命させたら、廃業の可能性も潰れてしまいます(廃業なら自己破産も不要です)。

そして、この延命措置をいつから縮小するか…という話題が出る矢先の第三波。
来年早々にもさらなる延命措置が発動される可能性すらあります。

しかし、国の本音はどうでしょうか?

延命措置を続けてはいるものの「中小企業は事業を続けられるのかどうか、はっきりして!」が本音かと思われます。ゾンビ企業には早く撤退してもらないとお金が掛かって仕方がないからです。

今年の税制改正大綱も目玉がなく発表されましたが、その中でも中小企業に再編してほしいという思いが強くにじみ出ました。

それはM&Aの「買い手」企業への優遇措置です。「M&Aを税制上も支援するから積極的に買ってね!」という微妙な言い回し。それもそのはず、国が目指す企業の再編とは雇用の確保であり、買い手が積極的になってくれないと実現しません。

さらには中小企業の生命線である資金繰りを助けるはずの地方銀行等も経営状態が危うくなってきました。遂に、銀行の再編にもお金を出し始めます!

中小企業の事業承継に関しては税制で支援しようとしてきましたが、らちが明かないのは明らかなため、そのうちM&Aをしてくれたらお金を出すという流れになってもおかしくはありません。

もちろん、倒産、廃業、M&Aと簡単に判断ができるものではありません。倒産も廃業もM&Aもせずに再起の可能性だって十分にあるでしょう。しかし、延命措置が講じられているからといって、コロナの波に乗り続けては再起の波に乗ることができません。

現状のまま再起するのであれば、それはノアの方舟と一緒です。方舟のサイズを決め、そこに乗り切るもの以外は諦める。

それが嫌であれば、最初から頑丈で大きな方舟を作るべきだった。その方舟を作れなかった時点で、それがその企業の限界だったということです。

今からたくさんの人・物を積むことに掛ける時間はありません。それよりも、いち早く新しい波に漕ぎ出すべきです。

コロナの波は今後も波状攻撃のように続くでしょう。中小企業にとっては感染者数だけの問題ではありません。

しかし、コロナの波に隠れて、新しい小さな波がいくつも発生しています。コロナの波に踊らされては、本来乗るべき波に乗れなくなってしまいます。

皆さまも2021年が始まる前に足元の小さな波を探されてみてください。

最後に…2020年、中小企業の経営者の皆さま、本当にお疲れさまでごさいました。
それでも皆さまが日本の雇用を支えているのは間違いありません。

なくなる?!贈与税

毎年恒例の税制改正。

コロナ禍にあって今年は税負担が増えるような大きな改正はないだろうと誰もが考える中、気になる情報が入ってきました。

今月中旬に発表予定の令和3年度税制改正大綱にむけて先月13日に行われた、政府税制調査会の会議資料に相続税・贈与税の見直しを検討する部分が含まれていることが分かったのです。

そこでは、皆さまよくご存じの年間110万円の基礎控除を利用する「暦年贈与」を繰り返す「連年贈与」を長年にわたって行うことによる税負担の減少効果が、相続のみで財産を承継する場合との比較で説明されていました。

生前贈与によって税負担を減少させることを問題視していることが明らかで、これは相続税対策の王道である「贈与税の基礎控除を利用した連年贈与」が今後、できなくなる可能性があることを意味しています。

かなり大きな改正となるでしょうから、そう簡単にメスを入れられるとは思えませんが、もし実行されれば、資産家はもちろんのこと事業承継の際に必ず自社株問題が付きまとう中小企業経営者にとっても大きなことです。

それでも今、私たちができること、すべきことに変わりはありません。

遠くない将来、連年贈与ができなくなるかもしれないことを念頭に置きながら、今できる贈与を確実に行っていくことです。

基礎控除を活用した生前贈与は地道な方法ではありますが、税制調査会が問題視するくらいですから年数を長くかけて行うほどに、その効果は実に大きなものとなります。

しかし、その地味さ故か面倒なのか、長年にわたる生前贈与対策を本当に有効活用している例は、実際はそう多くないように感じます。

コロナ禍で経済が落ち込み法人増税が難しくなる間、税制のターゲットは「持っている個人」に向かう可能性が高くなります。

今年も残すところあとわずか。

繰り返しになりますが、生前贈与は年数を長くかけるほどに効果は大きくなります。

今年の贈与はもうお済みですか?