何故、社長にボーナスを支給しないのか?!

みなさんの会社では社長にボーナスを払っていますか?
決算が間近になって利益が出ていると、節税の方法をあれこれ考えてしまいます。
その際よく話にあがるのが『決算賞与』です。
決算賞与とは、文字通り決算時に支給するボーナスのことです。
税金で持っていかれるくらいならと、従業員に臨時のボーナスを支給するのです。
節税の方法として、決算賞与がいまだに使われていることに驚きを感じますが、今回はそれが本題ではありませんので割愛します。
決算賞与の話をしているときによく耳にする言葉があります。
それは、「私(社長)はボーナスもらっちゃダメなんでしょ?」という社長の期待とも懇願ともとれるセリフです。
税理士がこの質問を受けた場合の一般的な答えはこうです。
「社長のボーナスは費用にならないのでダメです。」
しかし、この回答は間違っています。
正しい回答はこうです。
「社長のボーナスは費用にはなりませんが、それでもよろしければ支給していただくことは何ら問題ありません。」
結局、費用にはならないんでしょ?という言葉が聞こえてきそうですが、費用にならないということと、支給をしてはいけないということをゴチャゴチャに考えてはいけません。
これだけの話であればただの“揚げ足とり”になってしまします。
私は更にこう付け加えます。
「今年は費用にはできませんが、来年からは費用にできる方法がありますよ!」
その方法とは、『事前確定届出給与の届出』という方法です。
事前確定届出給与とは聞きなれない言葉ですが、一言でいうならこれが社長に対するボーナスです。
厳密にいうと、ボーナスが支給の段階で金額を決定するのに対し、この事前確定届出給与は、予め支給額を決めておく必要があります。
予め支給が確定した給与を税務署に届け出ておくことによって、その届出の通りに支給された給与を費用とすることができるようになります。
ここで一つの疑問が生じます。
今期の業績もわからない前からボーナスなんか決められないというものです。
この疑問はその通りです。
しかし、こうは考えられないでしょうか?
利益はどれだけでるか分からないけど、頑張って利益を出す努力をするから200万円のボーナスを支給しよう。
努力の結果、1000万円の利益がでた。
200万円のボーナスじゃとても足りないけど、それでも届出をしておいたお陰で200万のボーナスをもらえて、費用にもできた!
いかがでしょう?
この制度を利益調整のための制度と後ろ向きに考えてはいけません。
事前に自らが支給を受ける給与を決め、その給与を支給できるように経営努力するための前向きな制度なのです。
ただし、たいへん便利な制度ですが、一点だけ注意点があります。
それは、届け出の通りに支給しないと1円たりとも費用にはできないという点です。
つまり、『100』か『0』かという制度ということです。
最近になって、この点についてある注目すべき裁決が出ました。
ちなみに、『裁決』とは税務署が行った処分に対し、納税者が異議申し立てを行った結果のことです。
今回争われた内容を要約すると次のとおりです。
・夏季と冬季の年二回の事前確定給与を支給する旨、届出を出しました。
・夏季は届出通りに支給をし、費用に計上しました。
・冬季は届出額の半額で支給したため、費用には計上しませんでした。
・税務署は、届出通りに支給した夏季の給与についても事前確定届出給与に該当しないと して、追加納税の処分を行いました。
この処分を不満とした納税者は異議申し立てを行いました。
その結果、『棄却裁決』されました。
一言でいうと、門前払い、完敗です。
つまり、こういうことです。
・事前確定届出給与は届出通りに支給されることによって費用となる。
・同一の事業年度について2度の支給を届け出たのであれば、その両方が届出通りに支給されて、はじめてその両方が費用となる。
この事前確定届出給与制度は利益操作のために使われることを前提とした制度ではありません。
あくまでも月々払いの定期同額給与以外に、事前に(支給が)確定した給与がある場合には、その内容と届け出ることによって、その支給額を当然に費用として計上するために設けられた制度です。
制度の趣旨を理解し、適切な運用を心掛けてください。