意外と忘れられている退職金課税の改正?!

社長:先生、4年前に設立した子会社なんですが、息子もしっかりしてきたので、今期でこの子会社の社長を退任して、息子に承継しようと思います。

税理士:なるほど、いいですね!親会社の承継へ一歩前進ですね。

社長:そうですね。ところで退職金を取ろうと思いますが、退職金の税金は安く済みますよね?

税理士:いいえ。今回の退職で退職金を取っても、1/2課税にはなりませんので、高くつきますよ!

社長:ええっ?

先日、このようなご質問を当社の「セカンドオピニオン」にて受け付けました。

この退職金の改正は、平成24年度の税制改正によるもので、H25年1月1日から既に適用されています。

毎月支払われる給与などの改正ならともかく、一生においても通常は1度か2度程度、人によっては1度も貰うことがない退職金ですから、仕方ないかもしれません。

一般的な中小企業でも、役員に対して退職金を支給することは、そう滅多にはないことでしょう。

そこで、今回は改めてこの改正の中身を再確認してみます。

1/2課税なし!!
所得税において退職金課税の優遇面は、なんといってもいわゆる「1/2課税」が適用できることです。
要するに、2,000万円の退職金を貰っても課税されるのは、その1/2相当である1,000万円となるということです。
(実際には、勤続年数によって退職所得控除がされるので、さらに低くなります)

言い換えれば、2,000万円に対し課税された場合には、例えば30%の税率が適用される人でも、その1/2である15%の税率で済むということになります。
(実際には1/2にした後の金額に対し累進税率を適用しますので、厳密には1/2にはなりません。)

しかし、この改正により、勤続年数5年以下の役員等に対する退職金に対しては、この「1/2課税」の適用がされないこととなりました。

対象は役員のみ!!
前述の通り、この5年以下の縛りと1/2課税の不適用の対象となるのは、「役員等」となります。
言い換えれば「兼務役員さん」も、その役員部分に関してはこの適用の対象となります。

いわゆる、取締役総務部長、取締役経理部長、取締役工場長などの役職の方は、一般的には「兼務役員」となりますが、こういう方への退職金の支給に関して、役員部分と従業員部分の混合で退職金を支給する場合には注意が必要です。

中小企業でも、定年の数年前に使用人から兼務役員に昇格、あるいは本役員に昇格させ、3~4年程度で退職となる人事はたまに見受けられます。

この場合には、最低でも5年以上は役員として勤務させるか、退職金規定をうまく作成し(5年以上在籍した役員のみ支給対象とするなど)、従業員としての退職金のみ支給するなどの工夫が必要かと思われます。

最近は某企業では、女性役員の比率を引き上げるなど、女性の進出も多くなってきていますが、このような税制面を考慮した役員人事制度にすることが、会社の経営にも関わってくるものと考えます。

あなたの会社ではいかがですか?
上記に当てはまる可能性があれば、この機会に規程を見直されてみてはいかがでしょうか。