今年の贈与、今年のうちに!

相続税増税元年も早いもので残すところあとわずか。今年の贈与はお済みですか?

2015年、ご存知のように相続税の基礎控除は4割減額され、最高税率は50%から55%へ引き上げられました。基礎控除の減額により今まで相続税とは無縁と考えられていた人たちにとっても一気に身近な税金の1つになってしまいました。実際に今年に入って私どもに相続税のご相談をいただく機会が、かなり増えました。

ご相談の内容が、遠くない将来発生する相続“税”対策である場合、ほぼすべてのケースで検討のうえ実行していただくのが「生前贈与」です。

そう、みなさんがよくご存知の贈与税の基礎控除110万円を利用しての、贈与税を納めなくて済む贈与の活用です。もちろん予想される相続税の金額によっては基礎控除を超えての贈与も有効です。

さてさてこの「生前贈与」、地道ではありますが、言うまでもなく年数を長くかけて行うほどに、その効果は大きなものとなります。

しかし実際には、この生前贈与対策を有効活用している方は、その認知度の割に、そう多くありません。

なぜなら、ご相談にいらっしゃる多くのケースでは相続がある程度、間近に迫ってしまっているからです。実際に相続が迫っていることを察知して、慌てて相談にいらっしゃることが多いのです。

相続が迫ってからの生前贈与が有効でない理由の一つが「相続などにより財産を取得した人が、相続開始前3年以内に相続人から受けた贈与は相続財産に加算される」からです。

つまり、仮に110万円の基礎控除を使って贈与を受けたとしても、その後3年以内に相続が開始してしまえば、その贈与はなかったものとして相続財産に加えられて相続税の対象となってしまうのです。

しかし、ここで誤解していただきたくないのが、贈与後3年以内に相続が開始してしまったとしても“損はしない”ということです。

仮に基礎控除を超えて贈与を行い贈与税を納め、その後3年以内に相続が発生したことにより、その贈与が相続税の対象になったとしても、納めた贈与税は相続税から引いてもらえます。贈与税の負担が余計になるわけではなく、相続税を減らすことができなかった、つまり“得をしなかった”だけなのです。

人の生き死には誰にも分かりません。であれば、近々相続が開始してしまいそうな場合でも、生前贈与は積極的に活用すべきです。結果として贈与から3年を超せば、相続財産圧縮の成功です。繰り返しになりますが、たとえ3年以内に相続が開始してしまっても“損はしません”。とりあえず実行すべきなのです。

ちなみにこの「相続開始3年以内贈与の相続財産への加算」は、相続・遺贈などにより財産を取得していない者には適用されません。つまり、相続人でなく遺贈によっても財産を取得しなかった孫などへの贈与は、仮に相続開始3年以内に行われたとしても相続財産に加算されることはありません。

5人の孫に110万円贈与すれば、それだけで毎年550万円の相続財産を減らせます。

「相続か・・・、考えなきゃいけないのは分かってるけど、まだ大丈夫だろ・・・。」

今年も残すところあとわずか。生前贈与は年数を長くかけられるほどに、その効果は大きくなります。“まだ大丈夫”、そう思っている今から始めると効果が大きいのです。

今年の贈与はお済みですか?

 

“マイナンバーで脱税者を一網打尽”はホントか?<預金口座編>

引き続きマイナンバー制度の導入によって、税金にどのような影響があるのかをお話しいたします。

今回は『預金口座へのマイナンバー付番』とその影響についてお話しいたします。

『マイナンバー法』成立直後において、マイナンバーの利用範囲は『社会保障』、『税金』、『災害対策』の3つに限られていましたが、その後の改正によりあっという間に利用範囲が拡大されました。

それが、いわゆる『改正マイナンバー法』で、これにより施行日より3年以内の平成30年を目途に預貯金口座へのマイナンバーの付番が始まる予定となりました。

ただし、当初は預貯金口座へのマイナンバーの付番は義務ではなく、あくまで預金者の『任意』となっています。

その一方で、来年以後の銀行取引においては、投資信託や国債などの証券取引全般、外国送金などを行う際に、マイナンバーの提示が必要になります。

これらは金融機関等において支払調書の作成の可能性があるため事前に収集するものですが、折角収集したマイナンバーを預金者が拒否したからといって、(銀行が)預金口座に付番しないことなどあり得るのか、甚だ疑問が残ります。

また、平成33年からは預金口座や証券口座への導入も義務化されることを確定的に伝えているサイトなどもありますが、正確には『検討』を行っているという現状です。

預金口座にマイナンバーが紐付くと聞いて、誰もが真っ先に思い浮かぶのは『相続財産』のことではないでしょうか?

相続税の申告において、不動産や株式等に比べると預貯金は申告漏れの多い財産です。

正直に申し上げると、申告が漏れるというよりは財産隠しが行われ易い財産です。

税務署から相続税の調査と言われたときに私が真っ先に調査官に探りを入れるのも「預貯金の漏れがありましたか?」です。

今でも「亡くなる前に口座を解約しておいたほうがいいでしょうか?」とよく聞かれるのですが、その度に、私は「何のためにですか?」と聞き返しているくらい。(汗)

預金口座へのマイナンバー付番の理由として明確に『税務調査』が挙げられており、相続税の税務調査では絶大な効果を発揮するものと思われます。

相続税の調査では、税務署が事前に被相続人や相続人の預金口座を調査します。

その際に調査する口座は、所得税の確定申告などで把握しているもの、住まいや勤務先近くの金融機関、地元の金融機関が中心となります。

調査にあたっては各金融機関毎に照会をかけなければならず、また、金融機関にとってもあまり嬉しいお客様ではないためその対応もなおざりになりがちで、その結果、一行一行の調査にかかる時間は相当なものだと聞きます。

そのため、県外の金融機関にまで照会をかけることは現実的には不可能で、その結果、県外の金融機関の口座は把握され難いのが現状です。

ところが、すべての口座にマイナンバーが付番された場合、金融機関への照会はマイナンバー一つで行えるようになるため、今までは把握できなかった口座についても容易に補足されるようになるというのが世間の一般的な論調です。

果たして、本当にそのようなことになるのでしょうか?

全ての金融機関の口座をマイナンバーで一元管理する?どこが?どんな権力で?

この点に関して内閣官房マイナンバーHPに次のようなFAQがあります。

Q5-2. 国が個人情報を一元管理するというのは本当ですか。

A. マイナンバー制度導入により、情報を「一元管理」するようなことは一切ありません。情報の管理に当たっては、今まで各機関で管理していた個人情報は引き続きその機関が管理し、必要な情報を必要な時だけやりとりする「分散管理」という仕組みを採用しています。

特定の共通データベースを作ることもありませんので、そういったところからまとめて情報が漏れることもありません。

国がどこまでを『一元管理』と認識しているのかは図り知れませんが、金融機関すべての口座情報を、特定の機関が情報として持つというのは現実的でないと私は思います。

それよりも、マイナンバー付番の最大の『副産物』は別にあるように思います。

それは、マイナンバー付番が義務化されたときに現われる『浮遊口座』です。

本当に悪質な脱税行為は自分名義や自社名義の口座では行いません。

そこで出てくるのが偽名口座や借名口座です。

金融機関ではこれらの口座所有者のマイナンバーを勝手に入手することはできないため、マイナンバーが付番されない口座が宙に浮いてしまうのです。

それが『浮遊口座』です。

国税調査官の質問検査権の範囲において、不特定多数の浮遊口座のみを金融機関に照会することは現時点では不可能ですが、何らかのきっかけでマイナンバーの無い口座を把握することがあれば、脱税だけではなく犯罪を発見するきっかけになるでしょう。

今まさに、その準備がすすんでいることは間違いありません。

 

ストレスチェック

12月から従業員の「ストレスチェック」制度が始まりました。

従業員50人未満の企業は努力義務ですので、中小企業では実施されないケースが多いかと思われます。

「従業員のストレス度が高いと業績も伸び悩む」と言われることもあるので、チェック自体は有用かもしれませんが、その結果が会社にフィードバックされる制度ではないので、管理は難しいところ。

そうであれば、当社でも提供している「CUBIC」の現有社員用などでチェックした方が、従業員のストレス傾向は把握しやすいかもしれません。

しかし、従業員のストレスチェックまで義務化とは、えらい時代になりました…。
対象となる中小企業は淡々とこなすしかありません。

と前振りしましたが、今回話題にしたいのは従業員のストレスチェックではなく、企業のストレスチェックです。

今年も大企業の不祥事が相次ぎました。
東芝、東洋ゴム、マンション問題の関係会社…etc.

当然ながら、これらの企業は業績が急転直下、赤字転落となるのがお決まりのパターン。そして、これらのニュースを見聞きする度、「うちは大丈夫だろうか?」と不安がよぎる方も多いはず。

大企業が不祥事を起こせば、経営陣が辞任。新しい体制の下で、信用と業績回復を目指すということになります。トカゲの尻尾切りみたいな…。

しかし、経営者がオーナーである中小企業では、不祥事から社長が辞任することはほぼあり得ません。唯一あり得るとしたら子への社長交代などですが、あくまで身内ですから、経営体制の刷新というレベルではありません。同族で責任を持って経営を続けるしかありません。

中小企業の場合、問題は業績に与える影響…。

そこで、皆さまにお考えいただきたいのが、自社のストレス耐性です。

つまり、自社にて考えられる不祥事が発覚した場合、業績に与える影響は「何が、どの程度か?」ということです。

一番分かりやすいのは売上の激減。ここでよく言われるのが「売上が0円になっても、従業員の給料を何か月分払えるお金を持っているか?」という基準です。売上減少の幅が読めない以上、0円と仮定するのが最も安全な考え方であり、影響を受ける期間が読めない以上、どの程度の期間の給料を払えるのかを把握しておくのは重要です。

例え売上が0円でも、従業員の給料1年分くらいのお金を持っていれば、ひとまず安心というところ。それが内部留保によるお金であれば好ましいのですが、その裏付けが借入金であったとしても、実際にお金があるのであれば、何とかしのぐことができます。

つまり、不祥事が起こった際、お金を持っているかどうかというのはとても重要なこと。そして、不祥事が起こった後に、資金の工面をしようと考えるのはとても甘い考えです。

借入れを嫌い、ギリギリでも自己資金で経営をされている企業を見受けますが、このような企業は、自社のストレス耐性をよく考えておく必要があります。金融機関が不祥事に気付き、企業の先行きに危険性を感じれば、融資に応じてくれない可能性もあります。

もちろん、借入金は少ない方が好ましいに決まっています。しかし、それよりもお金が多い方が絶対的に良いに決まっています。

借入金が少ないけれどお金も少ないという会社は、会社に大きなストレスが掛かった場合、売上も激減するし、融資も受けられないし、給料を支払うお金もないという危機的な状況に陥る可能性があるということです。

資金繰りで重要なのは、お金を可能な限り多く持っておくという一点に尽きます。借入金の額の問題ではありません。

もちろん、不祥事の種類、影響の程度によって、どの程度のお金が必要になるかは変わってきますが、考えられる事は全て想定しておくのが好ましいです。想定さえしておけば、事前に対策も可能ですから。

なお、お客様への返金ということが生じ得る場合は、有効な損害保険などに加入しているかということも検討しておく必要がありますのでご注意を。

そして、お金だけではなく、従業員の相次ぐ退社ということも頭に入れておかなければなりません。「不祥事により先行き危うい会社にいられるか!」と、労働力不足に陥る可能性は十分あります。

従業員が何割減少しても大丈夫か…。あまり考えたくないことですが、考えておいた方がいざというときに慌てないで済みます。

これが経営者自身による不祥事ではなく、また日頃から会社や従業員の事を第一に考えている経営者であれば、従業員が一丸となって支えてくれるという展開も考えられますが、自信を持って「うちの従業員はそうだ!」と言い切れる経営者は少ないのではないでしょうか…。

以上、従業員のストレスチェックとなると、辞めるリスクや他の従業員に悪影響を及ぼすリスク、そして生産性が著しく落ちるリスクを計る必要がありますが、会社のストレスチェックとなると、会社の継続性を計る必要があり、そのためにはいざというときのお金を“既に”確保できているかどうかという点が重要となります。

当社も例にもれず、「不祥事か!?」と冷や汗をかいたことは何度かあります…。実際には不祥事までに発展したことはありませんが、そのときにいつも頭に浮かぶのは、「預金残高いくらだっけ?」。そして「まあ、大丈夫か…」と腹をくくるという感じです。

従業員だけではなく、経営者にとっては定期的な会社のストレスチェックというのも重要となりますので、毎年1年の最後くらいには考えておく必要があるかもしれませんね。