社会保険未加入企業の経営者様は必ず最後まで読んでください。

そろそろ本当に覚悟を決めなければならないでしょう。

2月24日の日経新聞に【厚生年金、加入逃れ阻止 79万社特定、強制も】という記事が掲載されていました。

記事では社会保険未加入の疑いがある企業が79万社にのぼっており、マイナンバー(法人番号)を活用し、2017年度末までに全ての未加入企業を特定すること、悪質な企業には立ち入り検査を実施して強制加入させる方針であることを伝えています。

また先だって1月19日の読売新聞では厚生労働大臣が、記者会見で社会保険料の支払いを逃れるため厚生年金に加入していない悪質な事業主について、刑事告発を検討する考えを表明した、という記事が掲載されていました。

既に昨年、日本年金機構から「厚生年金保険・健康保険の加入状況の確認について(お願い)」という書類が届いている未加入企業も多いようです。しかし、実際にそれをきっかけに社会保険に加入した、又は加入させられたという話は、まだそれほど聞こえてきていませんので、昨年までは厚生労働省もあくまで「探りを入れている段階」であったように感じます。

しかし、新聞報道にあるように、いよいよ厚生労働省も本当に本気モードに突入する寸前と言っていいでしょう。

社会保険への加入は経営を根本的に見直さなければいけないほどのインパクトを与える事項です。「近い将来、加入しなければいけないことは、もう分かっているが、少しでも加入時期を引き延ばしたい」。そう考えている経営者の方も多いと思います。

今回、私が未加入企業の経営者の方にお伝えしたいのは、「くれぐれも、加入指導を拒否し続けて強制加入させられたり、立ち入り検査を受けるようなところまで、加入時期を引き延ばし続けないで欲しい」ということです。なぜなら【強制加入はリスクが非常に大きい】からです。

「社会保険は過去2年に遡っての加入、保険料の請求をされることがある」というのを聞いたことはないでしょうか?

これは厚生年金法第92条および健康保険法第193条により、保険料の徴収の時効が2年と定められていることに起因しています。時効が2年であるということは言い方を変えると「2年間は遡って保険料を徴収することができる」ということです。

しかし、厚生労働省は自主的に加入した企業については、「原則として過去2年に遡ってまでの加入は求めない」というスタンスのようです。ちなみに、この“自主的に加入”というのは、未加入であることを指摘、指導されてから早期に観念して加入した企業を含んでいるようです。実際、加入指導後、早めに加入したケースで、遡って加入させられたという話しはあまり聞いたことがありません。

ここで、気を付けなければいけないのは悪質な企業と判断されるケース、立ち入り検査などの結果を踏まえて加入させられるケース、加入指導を拒否し続けた企業が職権により強制加入となったケースに関しては、法律どおり「最大2年、遡って保険料を徴収されることがある」ということです。

では、2年間遡って加入させられた場合の保険料を簡単に試算してみましょう。
通常、社会保険料は会社と従業員個人とで折半です。しかし、2年分の保険料を遡って従業員から徴収することは現実的に困難である場合が多いと思われますので、全額会社が負担すると仮定します。

現在、月給30万円の方の社会保険料は会社負担、個人負担を合わせると約8万3千円です。これが10名だとすると月額83万円。2年間でなんと、1,992万円・・・・・。
仮に従業員に遡って折半の負担を求めたとしても約1,000万円の負担・・・・・。

「冗談じゃない!そんなもん払えるか!!!」
今、これを読んでいるみなさんは、怒りさえ覚えているはずです。
こんなもの支払わされたら、会社規模によっては本当に潰されてしまいかねません。

しかし、月給30万円の従業員を10人抱えている企業が強制加入ということになれば、これだけのリスクがあるということは法律に基づく事実です。

ですから、強制加入させられるような事態だけは、なんとしても、なんとしても避けていただきたいのです。もし自社が2年間遡って加入させられた場合どのぐらいの保険料になるのか、簡単でかまいませんので試算してみてください。試算結果を見れば、どの時点をもって自主的に加入するかは、もはや重大な経営判断事項であり、想定して備えておく必要があることに気が付くはずです。

覚悟を決め、判断を下す時が迫っています。

 

マイナス金利

「マイナス金利、その影響は?」
と、よく聞かれるようになりました。

「住宅ローンの金利も下がるようだし、会社で借りるお金の金利も下がるのかな? いま借りておいた方がよい?」
そう思われるのも当然です。

結論からお伝えすると、企業向け融資の金利も下がる可能性があります。

そもそも、企業の場合は融資の金利に個体差が激しいため、もともと優遇されている企業は更に有利になるでしょうし、もともと厳しい企業はそれほど変わらないか、場合によってはさらに厳しくなる可能性もあると考えます。

ただ、どの企業においても、「借りませんか?」とのオファーは増えることでしょう。

中小企業の経営環境は、ますます不透明感が増してきました。予想以上に売上が伸びない、現状維持が精一杯、利益率が下がってきた・・・、このような不安をお持ちでしたら、迷わず借入を増やすことをお勧めします。

お金で頭を悩ませるようでは、本業に悪影響を及ぼしますので。

特に3月は企業向け融資も決算セールです。少しでもお金に不安がある企業は早めに交渉を始めてください。来年になると、史上まれにみるこの低金利環境はどうなるか分かりません・・・。

なお、リース契約もマイナス金利の影響を受ける可能性があるため、多額のリース契約をご検討の企業は要注意です。

また、マイナス金利の影響で、一時払い終身保険の販売停止が始まっています。

「一時払い終身保険が販売停止されます!今のうちに加入しておかないと損しますよ!」と保険代理店や金融機関から駆け込み営業を受けている方も多いと思われます。

一時払い終身保険は、相続対策等でよく使われる節税商品です。保険会社が破綻しない限りという前提が付きますが、非常にシンプルで安全性が高く、利回りも預金などに比べてかなり高いため、使い勝手がよいのです。

さらに、80歳を越えていても契約でき、健康診断などは必要ないため、基本的に契約時期を選びません。

ただ、現役世代が一時払い終身保険に加入する必要性はありませんのでご注意を。

大抵、現在加入されている死亡保障目的の保険で、相続税の非課税限度額(法定相続人の数×500万円)はカバーできていますし、お金を寝かせてしまうだけです。

お勧めできるのは、ご自身、父母又は祖父母がご高齢で、生命保険に加入しておらず、寝かせてもよいお金があり、かつ、相続税が掛かる方です。

「利回りが良い運用商品! もうすぐ販売停止!」などの口車に惑わされないでくださいね。

しかし、「マイナス金利」という漠然とした不安感からも、消費者行動は促されるものだなと・・・。住宅業界や保険代理店等、追い風を受ける業界もありますので、自社に与える影響もご検討ください。

 

隠された大増税

「まったく同じ物でも、どの会社から買うかで御社が納める税金額が異なります。」
「まったく同じ仕事でも、どの会社に依頼するかで御社が納める税金額が異なります。」

これを読んでみなさんはどう思われたでしょう?

「そんなわけないでしょ。」

ほとんどの方はそう思われたはずです。

今のところ、まだあまり話題になっていませんが、昨年12月に公表された税制改正大綱には、この税制がしっかりと書かれています。言葉だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。

【インボイス方式】。

そうです、消費税に関する改正事項に関することなのです。実施されるまで、まだ少し時間がありますが、とても重要な内容になりますので、しっかりと理解しておきましょう。

インボイス方式の完全導入は平成33年4月以降とされており、その前には経過措置も設けられる予定ですが、今回は経過措置には触れません。あくまで平成33年4月以降の完全導入にスポットを当てます。

まず「インボイス」とは、消費税の適用税率や税額など、法律で定められている記載事項が記載された書類をいいます。消費税が10%に上がるタイミングで一部の品目に軽減税率(8%)が導入されることによって、税率が混在する消費税の額を明らかにするために、この「インボイス」なるものが必要となるわけです。これは軽減税率対象品目を取り扱っていない事業者も同じです。

そして「インボイス方式」とは消費税の計算において「課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式」をいいます。

消費税の納税額は、基本的に売上時に預かった消費税額から仕入時に支払った消費税額を差し引いて決定します。つまり、「インボイス方式」によれば、この差引く仕入時の消費税額は「インボイス」に記載された税額になります。

「うん?今の請求書と何が違うんだ?」

違いはこうです。

現行法では、たとえ請求書・領収証を発行する側(売る側)が消費税の納税義務がない免税事業者であっても、代金を支払う側(仕入れ側)は支払った消費税相当額を仕入控除として預かった消費税から差し引いて計算、納税することができます。つまり、仕入先が課税事業者であろうと免税事業者で、関係なくどちらでも同じ納税額になるのです。

しかし「インボイス方式」は違います。預かった消費税から差し引ける支払った消費税額は「適格請求書発行事業者」に登録された「課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみ」なのです。課税事業者から仕入を行えば現行法と結果は同じです。

(図)

しかし、インボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」に登録していない免税事業者は、そもそもインボイスを発行できません。もうわかりましたよね。そう、免税事業者から仕入れた場合には消費税相当額を支払っても消費税の納税額計算上、差し引くことができないのです。

(図)

結果、冒頭の

「まったく同じ物でも、どの会社から買うかで御社が納める税金額が異なります。」
「まったく同じ仕事でも、どの会社に依頼するかで御社が納める税金額が異なります。」

が起きてしまい、残るキャッシュに差が生じてしまうのです。

(図)

こうなると当然、仕入側としては「消費税の免税事業者とは基本的に取引をしない」ということになるでしょう。

また、消費税の免税事業者は、自社が取引から排除されることを避けるために、課税売上高が1000万円以下で消費税の納税義務がなくても「適格請求書発行事業者」の登録申請を行い「消費税の課税事業者」を選択せざるを得ないケースが多いでしょう。

課税事業者になれば、当たり前ですが消費税を納めなければなりません。
国は本来、課税事業者になる必要のない事業者までを、この改正により課税事業者になるべく誘導しているのです。しかも、あたかも自分で選択して課税事業者になったかのような体をとっているところが悪質と言わざるを得ません。現在の免税事業者にとっては、隠された大増税といっていいでしょう。

経営者の中には複数の会社を有し、消費税のメリットを出すために売上高を1000万円以下に抑えた免税事業者を所有しているといったケースも少なくありません。

国のやり方は頭にきますが、文句を言っても始まりません。税制の変化に合わせて、今から戦略を考えておく必要があることは言うまでもないでしょう。

 

経費精算、効率化元年

公共交通手段を多く使う仕事の場合、交通費の精算というのは頭を悩ます作業の一つです。

一昔前までは、都度、経理に現金精算してもらっていたと思いますが、近年は立替経費として月に一度の精算という中小企業が増えてきました。

この立替経費の精算に使われる時間は、従業員一人当たり月平均1時間と言われています。移動ルートを確認し、交通費を調べ、Excelに入力し、領収書があれば貼り付け、それを経理に提出。毎月、経費精算の時期が憂鬱…、という方も多いはず。

また、交通費のみならず、諸経費も立替というケースも多く、「これは何の費用ですか?」、「申請の勘定科目が違いますので、修正してください」というやり取りが経理との間になされることになり、さらに憂鬱…。

「このような非生産的な作業はあり得ない!」

と文句を言ってみたところで、精算しないと自腹を切ることになるので、致し方ありません。
ところが、この非生産的な経費精算に、一筋の希望の光が見えてきました。

それは、スマートフォンやデジカメ等によるデジタル画像の保存です。

皆さまご存知のとおり、領収書などは原本保存が絶対原則であり、一部例外としてスキャナ等による画像保存が認められていました。しかし、画像保存は何かと要件が厳しく、現実的にはほとんど使われておりません。

この画像による保存要件につき、国がスマートフォン等によるデジタル画像の保存を認めました。具体的には、今年の9月30日以降に、国に利用の申請をすることにより可能となります。

もちろん、単にスマートフォンで画像を撮ったらOKという訳ではなく、タイムスタンプという日時の刻印をデータに施す必要があります。とはいえ、この制度が始まる現時点から、既に関連業者がタイムスタンプ機能の実装を検討しておりますので支障はないでしょう。

それでは、なぜデジタル画像の保存が認められるようになったら経費精算の効率化につながるのか?

要約すると下記のとおり。

  • クラウドの経費精算アプリケーション(以下、「経費アプリ」)が急速に増えてきている
  • 経費アプリでは、スマートフォンで撮影した領収書等の画像が自動的にアップロードされ、保存される
      → 原本はその場で破棄ができる
  • 経費アプリに、Suica等の交通系ICデータを連携させることができる
      → 交通費の確認、入力等の作業が自動化される
  • 経費アプリに、従業員が立替えた個人クレジットカードデータ等も連携させることができる
      → 交通費のみならず全ての経費がデータで連携できる

つまり、経費アプリの利用を前提にすると、Suicaやクレジットカード等は日付・金額・取引先が全てデータで取得でき、現金払いは領収書画像データをアップロードすることにより、OCRで金額や取引先を予測してくれる(まだ精度に問題がありますが)ことになります。

そして、原本は破棄できるため、紙での出力は必要なく、経費アプリ内で立替経費か個人利用分かの取捨選択をするたけで、申請データが経理担当まで届き、振り込まれるという流れが完成します。

もちろん、立替経費の申請から受け取りまでの間には「承認」というフローが存在し、それも経費アプリ内で行えます。この承認も場所と時間を選ばず行えます。

以前からクラウド会計についてはお伝えしてきました。クラウド会計自体は急速にシェアを伸ばしているものの、会計のみのクラウド化というのは少しハードルが高く、爆発的に増えているという状況ではありません。

特に、中小企業でも数十人規模くらいになってくると、会計だけクラウドにすれば良いという問題ではありません。そこで、以前からクラウド会計の起爆剤としては、全社的に影響のあるアプリケーションが必須という認識でおりました。

そのような最中、今回のデジタル画像での領収書等保存要件の緩和と、経費アプリの急速な台頭です。

経費アプリ自体は数年前からよく見かけるようになってきましたが、交通費の自動算出が主で、他の経費などは領収書の原本保存が義務付けられていたことから、中小企業レベルでは普及は遅れておりました。

ここまでお伝えする以上、経費アプリの提供会社がクラウド会計との連携を重視している、つまり仕訳として連携するというのは当然です。

経理の効率化を進める場合、経理業務を経理の下に集約するのではなく、全従業員にシェアすることが考えられます。例えば、全ての事務を経理にお願いすると経理が3人必要になる。しかし、全従業員に経費精算などの業務をシェアすることにより、経理が2人で済むことになる。これにより経理の人件費カットにつながる。

しかし、各従業員は、毎月経費精算に1時間掛かる…。

「一月、たった1時間でしょ?」

と思われる方も多いかもしれませんが、この1時間が意外とストレスなのです。従業員30人いれば、経費精算に月30時間費やされています。経理だって紙ベースの経費精算書が正しいかどうかの確認が必要になります(おかしなものがないか、金額が正しいか、内容が明確か等)。経理での確認と精算に5時間必要として、合計35時間。

これを経費アプリ導入により、月10時間以内に短縮出来たらどうでしょう?

現状、経費アプリを提供している会社の利用料を調べると、中小企業が利用するサービスでは、月額300円~500円が相場のようです。

仮に社員の時給が1,500円換算とすると、十分に元が取れるはず。

「立替経費は給与と一緒に振り込んでいるのだから、経費アプリが給与計算ソフトとも連携すれば楽になるなー」

というところまで想像できた方は、ご想像どおりです。

【経費精算⇔勤怠⇔給与⇔会計】までつながった場合の業務の効率化は、人数が増えれば増えるほど、破壊的レベルです。

ちなみに、当社は経費精算システムをスタッフが自社開発しました。クレジットカード等のCSVデータも読込みが可能なレベルで、会計ソフトへの連携も実装しています。勤怠データも給与計算ソフトと連携させています。当然、給与計算は会計と自動連携。

しかし、画像保存まで考えた場合、このまま自社システムで運営するより、外部の経費精算アプリケーションを利用した方が良いかなと考え始めています。つまり、当社も、今まで内製化などで効率化していたシステムを崩す時期が来たように思います。

軽く、掛かるコストが明確で、常に連携していて「視える化」されている方が、経営上の判断を行いやすいのは間違いありません。内製化の維持コストは規模のメリットを活かしてこそ意味がありますので。

「社員が30人増えたから、経理を一人増やすか…」

という判断よりも、

「一人雇うと、月2,000円のアプリケーション費用が発生するのか…」
(内訳は下記)

・ GoogleApps 月500円
・ 勤怠 月200円
・ 給与計算 月300円
・ 経費精算 月300円
・ マイナンバー 月200円
・ その他 月500円

という判断の方が、根拠が明確なのは間違いありません。

もちろん、Suica等を使わないエリアの企業は経費アプリが十分に機能しないでしょうし、どのような企業でも当てはまる訳ではありません。とはいえ、効率化できるところは効率化し、戦力を補うという意味では、色々試していく必要があるのではないでしょうか?

 

重大な見落としをしてしまいました・・・

私は重大な見落としをしてしまいました・・・。

それは昨年末に発表となった『税制改正大綱』についてです。

・・もう手遅れです。

『自動販売機を使った消費税還付スキーム』に端を発した国税と納税者のイタチごっこは、平成22年の税制改正において、その封じ込みが行われたかのように思われていました。

しかし、その封じ込みはまだ完全ではなく抜け穴があったのです。

そして今回、その抜け穴の『完全封じ込み』を行うための改正が盛り込まれていたのです。

何故『見落とした』と言う表現をするかと言うと、年内であればまだ消費税を還付できる可能性が残っていたからです。

改正では、『平成27年12月31日までに締結した契約に基づき平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には、(封じ込み措置を)適用しない。』とされていました。

『平成28年度税制改正大綱』が発表されたのが12月16日夕方のことです。

しかし、それよりも前の12月7日に税理士の業界紙に情報がスクープされていたのです。

そのとき、すぐにこの改正案に気づくことができていれば、大晦日までの間に契約することができた方もいらっしゃったことでしょう。

このことをお伝えできなかったのは、専門家として大失態です。

そこで、今回は私の個人的な鬱憤を晴らすために、今からできる『最後の悪あがき』を考えましたのでご紹介させていただきます。

そのためには、どのような封じ込みがされたのかをご紹介しなければなりません。

退屈な話になりますが、少しお付き合いください。

まず、平成22年度改正で行われた規制についてです。

免税事業者が『消費税課税事業者選択届出書』を提出し、『2年間』の選択強制適用期間中に賃貸不動産を取得した場合には、その後の3年間は免税事業者に戻ることも簡易課税を選択することも禁止されました。

その結果、取得から3年後に調整対象固定資産に係る調整計算が行われ、取得年に還付を受けた消費税は3年後に返納することとなったのです。

ここでのポイントは、本来消費税を納める必要のない免税事業者が『消費税課税事業者選択届出書』を提出し、『2年間の強制適用期間中に賃貸不動産を取得』した場合というところです。

 

(図1)

 

裏を返せば、次の2つのケースの場合には規制の対象外となっていました。

これが今まで存在していた抜け穴です。

  1. もともと課税事業者だった場合
  2. 『消費税課税事業者選択届出書』を提出し、2年間の強制適用期間適用後に賃貸不動産を取得した場合

1. のケースでは2年前の基準期間が1,000万円超で、その後は課税売上高が1,000万円以下となり免税事業者となったという状態であるため、意図してできることではありません。

2. のケースが抜け穴による還付スキームとなります。

『消費税課税事業者選択届出書』を提出してから2年間は賃貸不動産を取得できないのですから、届出書を提出するときから含めると3年前から下準備をする必要があります。

しかも、個人で還付を受ける場合には一回しかできないことになりますので、消費税還付法人を設立して行うようにするのが一般的な方法でした。

 

(図2)

 

ここまでが、平成22年度改正を踏まえての還付スキームでした。

ところが、今回の改正によって、一般課税を適用している課税事業者が平成28年4月1日以後に高額資産を取得した場合には、取得年を含めて3年間は一般課税が強制され、かつ、免税事業者にもなることができなくなりました。

今回の改正では、課税事業者選択届出書の提出の有無に関係なく取得後3年間の規制がついたことがポイントです。

高額資産とは、棚卸資産および調整対象固定資産(建物および付属設備、構築物、機械装置等)で、購入に係る支払い額が税抜きで1,000万円以上のものをいいます。
自ら建設をした資産については、建設等に要した費用の額で判断されます。

 

【悪あがき1】 課税売上を作る

そもそもの問題は、建築取得した年の課税売上割合がその後著しく減少することにあります。

3年後の調整計算の目安となる『通算課税売上割合』を著しく減少させなければいいのです。

そのために、最低でも不動産賃貸収入と同額の課税売上高を作りましょう。

課税売上を作ると言っても消費税の還付を受けるために作る売上なので、仕入れをして在庫に残るようなものでは意味がありません。

そこで、ゴルフ会員権や金のような流通性の高いものの売買を事業として行ってはいかがでしょうか?

ただし、売買手数料がかかることと元本割りのリスクがありますので注意が必要です。

 

(図3)

 

【悪あがき2】 3月31日までに取得する

改正の適用時期は、『平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合について適用する。』となっています。

つまり、3月31日までに引き渡しが完了した場合には対象となりません。

しかし、今から契約しても大型物件が3月末までに引き渡しになるのはほぼ不可能だと思います。

それでは、すでに完成している中古物件ならどうでしょうか?

「支払い=即引き渡し」ですから十分に間に合います。

ただし、『消費税課税事業者選択届出書』を提出し、2年間の強制適用期間を経過している法人を持っていることが必要です。

みなさん「そんな都合のいい会社など、持っているわけがないだろう!」と思われたことと思います。

ご安心ください、そこは『蛇の道は蛇』。

消費税還付を専門としている税理士や大手建設会社に声をかければ、課税事業者を選択し、2年超の仕込みが終わった法人がM&A市場に売りに出ている物件を紹介してくれます。

法人設立費用に30万。

その後寝かせてあった間の維持コストを考えると、譲渡価格はおおよそ100万円といったところでしょう。

もちろん、譲受け後の本店所在地や社名、決算期はいつでも好きなように変更可能です。

不動産投資をお考えで悔しい思いをされていらっしゃった方は、検討してみてはいかがでしょうか?

また、賃貸物件をお持ちの方は、上記のニーズによってお手持ちの物件が多少高く売れるチャンスかもしれません。

最後の最後まで諦めないという方のご参考になれば幸いです。

 

節税 VS 返済

経済の先行きは怪しいけれど、目の前に納税が迫っていれば、節税したくなるのが経営者…。

聞けば、やはり保険契約は盛況の模様…。
時代が変わっても、税制が変わっても、「節税といえば生命保険!」というのは変わらないようです。

そして、契約数が急増するであろう3月決算が近付いてまいりました。

納税した方が財務状態が良くなると分かっていても止められない、止まらない。
では、この節税という魔力から解き放たれる方法を教えてくれ!

と言われれば、「一つあります」とお答えします。

返済はいかがでしょうか?

例えば保険で節税しようという場合、資金の流出が伴います。
だから納税も少なくなる。

納税は少なくなるけれど、お金も少なくなる。
逆を言えば、お金があるから節税したくなる。
このような関係性は否定できません。

節税するためのお金がなければ、結局は節税を諦めざるを得ない…と考えるのは私だけではないはずです。

それでは、節税以外でお金を使ってしまえばいい。
例えばそれは、繰り上げ返済です。

「住宅ローンを繰り上げ返済すると、総返済額が減少する」

これは皆さまもよくお耳にされることと思います。

節税に使おうとしているお金の裏付けは何?と考えると、意外と借入金でまかなっている中小企業が多いのが実際のところ…。

例えば、現預金1億円、借入金1億円の企業があったとします。
単純なお話しをすれば、その企業が持っている現預金の裏付けは借入金です。

もちろん、「借入は設備投資に充てているので、現預金は内部留保で貯めたお金だ!」と言い切ることはできますが、設備投資は過去の話、現預金と借入金は現在の話という側面を捉えれば、やはり現在の現預金の裏付けは借入金と結論付けてもおかしくはありません。

つまり、理屈を抜きにすれば、借入金で節税している企業が多く、節税のために利息を支払っていることにつながります。

そうであるならば、節税のためにお金を支払うのではなく、返済のためにお金を支払った方がお得ではありませんか?

「まあ、そうだよな…」

いま、ここで冷静に考えれば、納得される方も多いでしょう。
しかし、納税が迫れば冷静ではいられなくなります。

では、さらに冷静になるために、シミュレーションしてみましょう。

皆さまの会社の利益が、1,000万円と予測されたとします。

社長

「利益は800万円までが税率上有利と聞くし、少し節税できないかな?」

そこで、保険会社や税理士が提案します。

提案

「保険料500万円のこちらの保険に加入されると、半分損金に算入されますので、利益が250万円減少し、税引前利益が750万円になります。
ご契約いかがですか?」

社長

「そうか…。保険料500万円というのは少し大きいけど、先日、銀行が運転資金用に5,000万円を借りないか?と提案してきたばかりだ。借りてもすぐに必要という訳ではないから、この借入れを保険料に使えば、自己資金は必要ないな。毎年、1,000万円くらいの利益は出ると思うから、ここで節税しておくのもいいかな」

提案

「10年後には、解約返戻率が95%となります。解約返戻金が4,750万円でして、その期間の節税額が750万円(損金250万円×10年×実効税率30%)となるので、差し引き500万円お得です!」

社長

「よし、契約だ!」

上記の会話は、意外と多いパターンではないかと考えます。

もちろん、当メールマガジンの読者の皆さまは、節税額750万円というのが単なる先送りで、解約したときにまとめて課税されるということはお気付きのはず。すなわち、単純に考えれば差し引きゼロ。

実質的には、250万円(総額5,000万円の保険料から解約返戻金4,750万円を差し引いた金額)が掛捨ての保険料となっています(純粋な保険機能はありますので、無駄金ということではありません)。

ただし…、この仕組みが分かっている方でも、色々な理由を付けて、契約してしまう事が多いのです。これが節税という名の魔力。

それでは、この総額5,000万円の保険料を返済資金に回していたらどうでしょうか?

話を単純化するために、5,000万円を借りて、10年間で返済すると仮定します。
金利は信用保証料込みで1.5%。

この場合の10年間の利息総額は約380万円です。

解約しても戻ってこない保険料250万円と、借入による利息380万円。
10年間で合計630万円。

つまり、節税という名の魔力につかまると、10年間で630万円のコストが掛かっている場合もあり得るということです(実際、多くの企業がこのような状態に陥っています)。

もちろん、新たに借金して節税なんかしないという方がほとんどかと思われます。しかし、支払う予定の保険料と同額以上の借入金が既にあれば同じこと。

節税する代わりに、今ある借入金を優先的に返済していく、つまり、当初の借入の返済ペースではなく、繰り上げて返済するというお考えをお持ちの経営者は、おそらく少ないはず。

住宅ローンではよく知られる繰り上げ返済ですが、中小企業の経営において、繰り上げ返済はあまり行われていません。

繰り上げ返済というものは、不確実性が高い運用よりも、確実にコストカットが可能です。

一昔前までは税務署憎し、税金憎しという方が多かったのは事実ですが、最近は銀行憎し、返済憎しという方が多いような気がします。

ということで、税金を減らすことよりも、借入金と利息を減らすことを考えてみませんか?

納税すると内部留保がたまります。利息を減らすと、さらに内部留保がたまります。
借入金が減ると、自己資本比率が高まります。

節税よりも、繰り上げ返済の方がROAが高まります!

この構造に気付くと、少しは節税の魔力から解き放たれるのではないでしょうか?

 

書面添付のキキメ

【3.3423%】。

100件に対して、3件ちょっと。
平成26事務年度の東京国税局管内での法人税の申告書提出数に対して、実地の税務調査が行われた割合です。

【0.0426%】。

10,000件に対して、僅か4件ちょっと。
こちらは同じく平成26事務年度の東京国税局管内での法人税の申告書提出数のうち、【書面添付】を実施した企業に対して、実地の税務調査が行われた割合です。

これは税理士会と東京国税局との定例協議会において東京国税局が発表した数字です。
税理士が書面添付をして提出した申告書に税務調査があったのは、申告書全体の0.0426%という極めて低い数字に改めて驚きました。

このメルマガでも何度かご紹介させていただいていますが【書面添付制度】とは、税理士による申告書の、言わば「品質保証書」です。「この項目について、この資料を、この程度確認していますので、この申告書に間違いはありませんよ。」という内容の書類を申告書に添付し、太鼓判を押して税務署に提出するものです。

何度かお伝えしているように、この「書面添付制度」には大きなメリットがあります。
書面添付を実施している会社への税務調査は、事前に顧問税理士に対して「意見聴取」を行ってからでなければできません。
ちなみに東京国税局の平成26年事務年度における意見聴取件数は約1,500件で、書面添付した申告書の3.2%ほどです。

そして、この事前の意見聴取で税務署が納得すれば実地の税務調査は行われません。もちろん意見聴取をしてもなお、実地調査を行わせて欲しいということもありますが、書面添付を実施することにより、実地での税務調査が省略される可能性が生じます。

東京国税局の平成26年事務年度において意見聴取の結果、実地調査が省略となった件数は意見聴取1,500件のうち1089件、調査省略割合は74.6%です。書面添付の結果、意見徴収の対象となったとしても、実地調査が省略される可能性が高いことがわかります。

しかし、納税者にメリットがあると同時に税理士にはリスクも生じます。書面添付をし、確認したはずの範囲に虚偽記載があれば税理士は懲戒処分の対象となります。
つまり税理士は、自身の資格を懸けて書面添付を行っているのです。
その為、書面添付をしたがらない税理士が多いのが実情です。それはそうです、自身の資格が懸かっているのですから、そう簡単にはできません。

書面添付を積極的に行わない税理士がほとんであることは、東京国税局において平成26年事務年度の法人税の書面添付割合6%いう数字が物語っています。

とはいえ税務調査に入られる確率がこれだけ下がるのであれば、顧問税理士に書面添付してもらいたいと考えるのが普通でしょう。

私は「書面添付」を行う大前提として、納税者が自社で記帳を行っていることや、月次決算をきちんと行っていること等、会計帳簿に信頼性があることが必須であると考えています。
そのうえで、当たり前ですが法律に沿った税務処理を施します。
少なくとも弊社では、これらがきちんと出来ていないお客様への書面添付はさせていただいておりません。

また、私は帳簿だけでなく、私たちと経営者様との間にきちんとした信頼関係が築けていることも、書面添付をさせていただくうえで、とても重要だと考えています。

このように、他にもいくつかある弊社の基準を満たしている顧問先様の申告書に関しては、私たちは基本的に書面添付をさせていただいています。なぜならば、やはりお客様が享受できるメリットが大きいと考えているからです。

税務調査は3年に1回来るのが当たり前。来たら、いくばくかの追徴課税が発生するのが当たり前だと誤解している経営者が少なくありません。きちんとした申告をしていれば税務調査は減らせます。税務調査を減らす第一歩は、もしかしたら“税理士選び”なのかもしれません。

 

信用保証制度の改正がやって来る…

「ゾンビ企業は市場から撤退しろ!」

このようなことが検討されていることをご存知でしょうか?

それは、信用保証制度の改正です。

中小企業にはお馴染の信用保証制度は、金融機関から融資を受ける際、国が返済を保証する制度です。現在は原則として80%が国によって保証されています(2007年までは100%保証されていました)。

仮に中小企業が返済できなくなった場合、金融機関は20%だけ泣けばよく、残りの80%は国が肩代わりしてくれます。これにより、金融機関は融資を実行しやすくなり、結果として中小企業は融資を受けやすくなっております。

ところが、この制度につき保証率を50%~80%に引き下げることが検討されています。現時点では2017年度以降とのこと。

意図は、中小企業に一律同じ保証率を適用するのではなく、創業間もない企業には高い保証率を、創業から一定期間を経過した企業には低い保証率という様に、メリハリをつけることのようです。

信用保証を受ける際、中小企業は信用保証料を支払い、信用保証協会はこの信用保証料を原資に返済できなくなった中小企業に代わって金融機関に弁済します。しかし、現状では信用保証料ではまかないきれないくらいの弁済額があるのです。

このまま現状を放置すれば、国の財政負担が膨らむということになります。

そのため、国は保証率を引き下げるとともに、金融機関の負担リスクを引き上げ、より厳密な審査により融資するよう金融機関に求めます。また、同時に保証制度の対象事業の絞り込みにも着手するようです。

この信用保証制度の改正によりどのようなことが起こるかは、皆さまもご想像ができるはず…。

金融機関からプロパーのみで融資を受けられる中小企業というのは財務状態が良い会社であり、信用保証制度に頼らざるを得ない中小企業の方がずっと多いのは間違いありません。

結果として、プロパーのみで融資を受けられない中小企業は融資枠が少なくなりますし、融資を受けられても借入の際の利率が引き上げられていくことになります。

金融機関の負担も増えれば、中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)により返済を猶予し続けてもらっている企業も、大目に見てもらえなくなります。おそらく、2016年度中には再建の目途を付けなければなりません。

つまりは、借入について精算を迫られ、再建できない限り…

「ゾンビ企業は市場から撤退しろ!」

ということにつながります。

深い意味では、ゾンビ企業への国の支援を少なくし、成長企業に手厚く支援するという意図も隠されていることでしょう。それは近年の税制改正の流れでも明確です。

国がゾンビ企業を市場から撤退させたいのは間違いありません。限りある税金、労働力をどこに使うべきか?答えは明白です。そして、実際に撤退に追い込むことも簡単です。

しかし、現実問題として、市場からの撤退に追い込みきれない最後の砦となっているのが「雇用」です。ゾンビ企業も従業員を雇用しているからです。

もし、ゾンビ企業の従業員が他の健全な企業に円滑に雇用されるのであれば、国はゾンビ企業を簡単に潰しにかかります。

そういう意味では、国が大企業に賃上げを求め、人材難でもある大企業グループが雇用を積極的に増やしている現状を考えると、人材の流動化の環境が整いつつあるようにも思われます。

もちろん、いくら何でも簡単に中小企業を潰せないだろうという意見も根強いですが、外堀が徐々に埋まっている以上、このような流れを無視するわけには行きません。

2016年…。金融機関対策を含め、資金をかき集めるために重要な1年になるのは間違いありません。現状で資金繰りが大変な中小企業のみならず、安定している中小企業も中長期的な視点の下に資金計画をご検討ください。

金融機関との付き合い方も、少し深くせざるを得ないかもしれませんね。

 

“マイナンバーで脱税者を一網打尽”はホントか?<活用編>

三回にわたってマイナンバーによって変わる税金の話をさせていただきましたが、今回が最終回です。

前回までは、いろいろと細かな話をさせていただきました。
自分で言うのも何ですが、専門家が重箱の隅をつついて、面白おかしく話をしたに過ぎません。

私も仕事柄マイナンバーの講演依頼をいただきますが、「何も変わりませんよ」と言ってしまったら依頼者のご迷惑になりますので、話はしますがその程度のものです。

新しい制度がはじまるのですから、今までと何も変わらないということはありません。
ですが、日の当たる場所で普通に仕事をしている中小企業に対して、私は「何も変わることはありません!」と言わせていただきます。

こういった機会を後ろ向きにばかりとらえていても、何もプラスになることはありません。

そこで最終回として、マイナンバーの活用法をご紹介させていただきます。

マイナンバー(個人番号)制度が大きく取り上げられたために陰に隠れてしまいましたが、すべての株式会社などの法人や団体に対しても、新たに企業版マイナンバーとでも呼ぶべき『法人番号』が決められました。

この法人番号の特徴は、

  1. 利用範囲に制限がない
  2. 専用サイトで全面公開される

というものです。

つまり、はじめから民間で利用してもらうことを前提に用意されたものだということです。

具体的な利用方法をひとつご紹介いたします。

それは『法人番号公表サイトを利用した新規設立法人の把握』です。

現状、民間企業では、新規営業先の開拓や会員勧誘先の把握に当たり、インターネットや登記所の商業登記、信用調査会社などの様々な情報源から『有料』で情報を入手しており、人件費や手数料などの手間・コストがかかっています。

今後は、株式会社など新たに設立されると、法務省から国税庁に登記情報が連絡され、それによって法人番号を指定し情報が公開されることから、新たに法人番号を指定された法人は、新規設立会社として把握することが可能になります。

ただし、マイナンバー開始時に既に存在している法人の法人番号については、平成27年10月に一斉に通知・公表されていますので、新規設立会社の把握に法人番号が活用できるのは、平成27年11月以降に新たに設立された法人からとなります。

それでは具体的は方法をご紹介いたします。

まず、専用サイトで公表されている情報は『基本3情報』と呼ばれる次の3項目です。

▼[国税庁]法人番号公表サイト
http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

  1. 法人番号
  2. 商号又は名称
  3. 本店又は主たる事務所の所在地

ファックスやメールアドレスまでは記載されていませんが会社名と住所が分かれば、DMの発送が可能です。

検索条件の設定で『変更年月日』を平成27年11月以降の日付で絞り込むことで新規設立会社だけの抽出を行うことが可能となります。

(図 公表サイト詳細検索)

ただし、変更項目の中には新設だけでなく、住所や商号の変更・合併等も含まれてきますので、さらに絞り込んだ抽出を行うために『基本3情報ダウンロード』を利用します。

データはCSV形式等でのダウンロードが可能となっており、サイト上では絞り切れない情報を抽出することができます。

ダウンロードできるデータには『全件データ(各都道府県別)』と『差分データ(全国)』の二種類があります。

差分データは文字通り日々更新された全国のデータを一覧にしたものです。

(図 差分データ)

一ヶ月分の差分データをもとに毎月月末に都道府県別の全件データファイルを作成し、毎月1日の午前0時までに公開されることとなっています。

データの形式は、『CSV形式・Shift-JIS』、『CSV形式・Unicode』、『XML形式・Unicode』の三種類がありますが、エクセルで簡単に編集できる『CSV形式・Shift-JIS』を使ってください。

ダウンロードしたファイルを開くと無造作にデータが羅列されているため、どこに何が書いてあるのかがさっぱりわからない状態となっています。

そこでまず最上部に行を一行挿入し、それぞれ該当する列に次のとおり項目名を入力してください。

(図 リソース定義)

項目の入力が終了したら次にエクセルの『フィルタ』を設定します。

 

(図 フィルタ設定)

フィルタの準備ができましたら項目の絞り込みを行っていきます。

先ほど項目名の設定でご覧いただいた図をもう一度ご覧ください。

黄色くなっている項目が絞り込みを行う項目です。

  1. 処理区分は『1』のみチェックを入れてください
  2. 訂正区分は『0』のみチェックを入れてください
  3. 変更年月日は平成27年11月以降で抽出したい該当月にチェックを入れてください
  4. 法人種別は『301』が株式会社、『305』が合同会社となっています

以上の作業によって新規設立会社の絞り込みを行うことが可能となります。

私が実際に作業をしたデータを検証したところ、かなりの精度で新規設立会社が抽出されていることを確認することができました。

しかし、データの中には法務局に設立登記のない法人など、一斉に法人番号をふることができなかったと思われるものが、法人で後から法人番号が付番されたものが、散見していました。

そのようなデータは今後少なくなっていくものと思われます。

マイナンバー制度『法人番号』は、まだはじまったばかりの制度で、ほとんどの企業がこの法人番号をどのように活用していのか見当もついていない状況です。

今回ご紹介した以外にも、法人番号公表サイトでは法人番号の活用法が紹介されています。

この新制度をうまく活用し、ビジネスチャンスにつなげてください。

 

内部留保を促す日本の税制

昨年末、平成28年の税制改正大綱が発表されましたが、

「特に何もありません!」

と言いたくなるほど、お伝えすることがありません。

大きな目玉が法人実効税率「20%台」の実現だったということもあり、そして、消費税の軽減税率の議論が長引いたため、他の部分は細部の改正に止まりました。細部なので無関係の方が多すぎて、お伝えは控えさせていただきます。

法人の税制については税率を下げていく方向にあるため、特例的な制度は順次縮小又は廃止を行い、比較的シンプルなものになっていくことでしょう。また、赤字企業については税金が上がる方向にありますが、通常の中小企業については現時点では関係がないため、特に気にしていただく必要はないかと考えます。

ただ、法人実効税率の引き下げについては、利益が出ている企業にとってのみ恩恵があるため、国としても支援するのは「納税している企業だよ」ということを明確にしております。

法人の内部留保は、原則として納税によって積み上げられるため、利益に対する納税後の内部留保の割合が増えるということは、中小企業においても更に勝ち組・負け組(懐かしい表現ですが…)が明確になるでしょう。

個人については、支援するのは「低所得者」、富裕層は「もっと税金を払いなさい、その代わり、ふるさと納税で得させてあげるから(?)」という流れなので、法人と個人では真逆の税制が敷かれています。

税制ではありませんが、ひと頃の金融モラトリアム法(中小企業金融円滑化法)により、資金繰りに苦しんでいる中小企業を重視していた頃とは時代は変わったものです。とはいっても、平成21年とまだまだ最近の事なのですが…。

そして、国としては「その増えた内部留保を人件費や設備投資に使いなさい」ということを強く要望しています。そうでなければ法人実効税率を下げる意味がないと。

それでは、大企業は安倍政権に対するお礼とばかりに、人件費や設備投資に内部留保を振り向けるのでしょうか?

結論としては、そう簡単に行くものではないでしょう。報道を見聞きする限り、海外のM&Aや研究開発に資金が回っているのはご存じのとおり。当然、人件費は多少引き上げるでしょうが、パフォーマンス以上のレベルが実現するとは思えません。

これに対し、中小企業はどうでしょう。確かに、当社のお客様を見ていても、より多くの利益を出されるようになってきています。しかし、稼いだお金を人件費や設備投資に使えるかというと、決してそのような状況ではありません。

なぜならば、中小企業は“人がいない”、“人が採れない”、“既存社員の給与を意味なく上げることはない”、“人がいなければ設備投資もできない”、“採用のことばかり考えていると既存社員が辞めていく”と、人の問題については、無い無いづくし…。

お金は貯まり始めているのに、使いたくても使えないというのが、現状の中小企業の悩みではないでしょうか。こういう意味では、大企業とは問題が異なりますが、今は良いけど将来が心配ということになります。

大企業に正社員を増やせ、待遇を良くしろと国が言えば言うほど、中小企業に人材は回ってきません。従業員にしたって大企業、又はそのグループ会社で働けるのであれば、あえて中小企業で働く必要はないはず。

そうなってくると、中小企業も大企業を見習えとばかりにM&Aという選択肢も視野に入れる必要があるかもしれません。M&Aという表現をするので仰々しくなりますが、現実的には会社や事業を買うというよりも、人材を確保するという方が正しい表現かもしれません。

もちろん、M&Aにより会社を買ったからと言って、既存の問題が解決する訳でもなく、新しい会社が新たな問題を持ち込む可能性もあります。

ただし幻想と言えども、皆さまには右腕となり得る幹部、又は幹部候補が欲しいというニーズが強くあるはず。

皆さまの会社にも、少なくとも一人はそのような方がいるように、どの会社にもそのような方がいらっしゃいます。M&Aによって人材を確保することは、幹部候補も手に入れるということにもつながる可能性があります。

今は中小企業にとっても空前のM&Aブームであり、中堅企業や中小企業が、中小企業を買い漁っています。しかも、中小企業のM&Aによる買収価格は売却企業の現状を反映しているため、変なプレミアムは含まれておりません。概ね適正という価格です。そういう意味では、将来的な価値を見込んだアメリカのベンチャー企業の買収のような夢のある話とは異なります。

現在の税制では個人での内部留保が難しい以上、法人での内部留保に頼らざるを得ず、必要以上に法人で内部留保を行うと、自社株評価額の高騰につながります。そうであるならば、ムダに内部留保するくらいなら、M&Aによる投資もアリということです。

皆さま、内部留保の重要性を口にされますが、内部留保は税制的に爆弾にもなり得ますので、内部留保の使い道ということもそろそろ考える時期です。貯めるのは得意でも、運用するのが苦手という方も多いので。

そして、「買っている企業は買っている…」、これだけは皆さまも頭に入れておいてください。
内部留保が爆弾にならないうちに…。