経費精算、効率化元年

公共交通手段を多く使う仕事の場合、交通費の精算というのは頭を悩ます作業の一つです。

一昔前までは、都度、経理に現金精算してもらっていたと思いますが、近年は立替経費として月に一度の精算という中小企業が増えてきました。

この立替経費の精算に使われる時間は、従業員一人当たり月平均1時間と言われています。移動ルートを確認し、交通費を調べ、Excelに入力し、領収書があれば貼り付け、それを経理に提出。毎月、経費精算の時期が憂鬱…、という方も多いはず。

また、交通費のみならず、諸経費も立替というケースも多く、「これは何の費用ですか?」、「申請の勘定科目が違いますので、修正してください」というやり取りが経理との間になされることになり、さらに憂鬱…。

「このような非生産的な作業はあり得ない!」

と文句を言ってみたところで、精算しないと自腹を切ることになるので、致し方ありません。
ところが、この非生産的な経費精算に、一筋の希望の光が見えてきました。

それは、スマートフォンやデジカメ等によるデジタル画像の保存です。

皆さまご存知のとおり、領収書などは原本保存が絶対原則であり、一部例外としてスキャナ等による画像保存が認められていました。しかし、画像保存は何かと要件が厳しく、現実的にはほとんど使われておりません。

この画像による保存要件につき、国がスマートフォン等によるデジタル画像の保存を認めました。具体的には、今年の9月30日以降に、国に利用の申請をすることにより可能となります。

もちろん、単にスマートフォンで画像を撮ったらOKという訳ではなく、タイムスタンプという日時の刻印をデータに施す必要があります。とはいえ、この制度が始まる現時点から、既に関連業者がタイムスタンプ機能の実装を検討しておりますので支障はないでしょう。

それでは、なぜデジタル画像の保存が認められるようになったら経費精算の効率化につながるのか?

要約すると下記のとおり。

  • クラウドの経費精算アプリケーション(以下、「経費アプリ」)が急速に増えてきている
  • 経費アプリでは、スマートフォンで撮影した領収書等の画像が自動的にアップロードされ、保存される
      → 原本はその場で破棄ができる
  • 経費アプリに、Suica等の交通系ICデータを連携させることができる
      → 交通費の確認、入力等の作業が自動化される
  • 経費アプリに、従業員が立替えた個人クレジットカードデータ等も連携させることができる
      → 交通費のみならず全ての経費がデータで連携できる

つまり、経費アプリの利用を前提にすると、Suicaやクレジットカード等は日付・金額・取引先が全てデータで取得でき、現金払いは領収書画像データをアップロードすることにより、OCRで金額や取引先を予測してくれる(まだ精度に問題がありますが)ことになります。

そして、原本は破棄できるため、紙での出力は必要なく、経費アプリ内で立替経費か個人利用分かの取捨選択をするたけで、申請データが経理担当まで届き、振り込まれるという流れが完成します。

もちろん、立替経費の申請から受け取りまでの間には「承認」というフローが存在し、それも経費アプリ内で行えます。この承認も場所と時間を選ばず行えます。

以前からクラウド会計についてはお伝えしてきました。クラウド会計自体は急速にシェアを伸ばしているものの、会計のみのクラウド化というのは少しハードルが高く、爆発的に増えているという状況ではありません。

特に、中小企業でも数十人規模くらいになってくると、会計だけクラウドにすれば良いという問題ではありません。そこで、以前からクラウド会計の起爆剤としては、全社的に影響のあるアプリケーションが必須という認識でおりました。

そのような最中、今回のデジタル画像での領収書等保存要件の緩和と、経費アプリの急速な台頭です。

経費アプリ自体は数年前からよく見かけるようになってきましたが、交通費の自動算出が主で、他の経費などは領収書の原本保存が義務付けられていたことから、中小企業レベルでは普及は遅れておりました。

ここまでお伝えする以上、経費アプリの提供会社がクラウド会計との連携を重視している、つまり仕訳として連携するというのは当然です。

経理の効率化を進める場合、経理業務を経理の下に集約するのではなく、全従業員にシェアすることが考えられます。例えば、全ての事務を経理にお願いすると経理が3人必要になる。しかし、全従業員に経費精算などの業務をシェアすることにより、経理が2人で済むことになる。これにより経理の人件費カットにつながる。

しかし、各従業員は、毎月経費精算に1時間掛かる…。

「一月、たった1時間でしょ?」

と思われる方も多いかもしれませんが、この1時間が意外とストレスなのです。従業員30人いれば、経費精算に月30時間費やされています。経理だって紙ベースの経費精算書が正しいかどうかの確認が必要になります(おかしなものがないか、金額が正しいか、内容が明確か等)。経理での確認と精算に5時間必要として、合計35時間。

これを経費アプリ導入により、月10時間以内に短縮出来たらどうでしょう?

現状、経費アプリを提供している会社の利用料を調べると、中小企業が利用するサービスでは、月額300円~500円が相場のようです。

仮に社員の時給が1,500円換算とすると、十分に元が取れるはず。

「立替経費は給与と一緒に振り込んでいるのだから、経費アプリが給与計算ソフトとも連携すれば楽になるなー」

というところまで想像できた方は、ご想像どおりです。

【経費精算⇔勤怠⇔給与⇔会計】までつながった場合の業務の効率化は、人数が増えれば増えるほど、破壊的レベルです。

ちなみに、当社は経費精算システムをスタッフが自社開発しました。クレジットカード等のCSVデータも読込みが可能なレベルで、会計ソフトへの連携も実装しています。勤怠データも給与計算ソフトと連携させています。当然、給与計算は会計と自動連携。

しかし、画像保存まで考えた場合、このまま自社システムで運営するより、外部の経費精算アプリケーションを利用した方が良いかなと考え始めています。つまり、当社も、今まで内製化などで効率化していたシステムを崩す時期が来たように思います。

軽く、掛かるコストが明確で、常に連携していて「視える化」されている方が、経営上の判断を行いやすいのは間違いありません。内製化の維持コストは規模のメリットを活かしてこそ意味がありますので。

「社員が30人増えたから、経理を一人増やすか…」

という判断よりも、

「一人雇うと、月2,000円のアプリケーション費用が発生するのか…」
(内訳は下記)

・ GoogleApps 月500円
・ 勤怠 月200円
・ 給与計算 月300円
・ 経費精算 月300円
・ マイナンバー 月200円
・ その他 月500円

という判断の方が、根拠が明確なのは間違いありません。

もちろん、Suica等を使わないエリアの企業は経費アプリが十分に機能しないでしょうし、どのような企業でも当てはまる訳ではありません。とはいえ、効率化できるところは効率化し、戦力を補うという意味では、色々試していく必要があるのではないでしょうか?