新しい雇用のかたちは、経営を変えるか?!

◎「限定正社員」
皆さんは、「限定正社員」という形態を聞いたことがありますか?
普通の「正社員」というのは、転勤や残業や職種の変更を受け入れる事を前提にしていますが、この「限定正社員」は、勤務地や職務・労働時間等を限定したかたちで雇用する社員をいいます。
また、いわゆる派遣社員やパートさん等の期間限定とは違って無期雇用となるので、待遇・賃金は有期雇用よりは良いが、正社員より低い、となるケースが一般的なようです。
すでに銀行や小売業などの大手企業での導入は始まっていて、勤務地限定無しは総合職の正社員で、勤務地限定有は一般職、というような雇用形態で導入されている企業もあるようです。
◎メリット・デメリットはあるか?
雇用される側からみれば、例えば転勤や時間外勤務が無い限定正社員の場合には、仕事と子育てや介護などとの両立がしやすいし、かつ、パートさんや契約社員よりは仕事の専門性や責任ある仕事が任されやすい、などのメリットが考えられます。
反対に雇用する側からみれば、対外的にはパートさんには頼めない仕事がお願いできたり、あるいは、パートさんから社員への登用の際の、見極めのための通過形態とすることも考えられるかもしれません。
また、雇用の維持の面からの違いも考えられます。
例えば、ある事業所で働くことにした限定社員を雇用したものの、後に経営環境が悪化して事業所閉鎖をしたとします。
そうすると、その限定正社員は、その限定された勤務地での勤務ができなくなります。すなわち、限定された勤務地での雇用継続が困難となるため解雇となる、ということが考えられます。これは職種の限定の場合においても同様です。
当然ですが、雇用する側からみれば解雇が出来る(しやすくなる)、ということになります。
◎あくまで合意での成立
当然ですが、あくまで労働者と会社との合意の上で成立する雇用の形態になります。上記では、勤務場所や時間・職種を限定する前提で話をしましたが、仕事に対する価値観やライフスタイルの多様化により、そのほかにも双方にメリットとなるような限定方法もあるかもしれません。すなわち限定条件の設定は自由、ということです。
しかし、労基法等によって労働者の不利益と判断されないような合意が必要なのは、いうまでもありません。
◎法制化の検討
2011年以降、厚生労働省を中心に非正規雇用から限定社員への移行策が検討されてきました。そして、政府の産業競争力会議や規制改革会議の答申を受けて、すでに厚労省では有識者懇談会を設けて議論が始まっています。非正規雇用者の雇用安定の方策として、この雇用形態を法制化しようと模索をしているのです。
経団連はこれに対し、限定された条件での雇用維持が困難となった場合の解雇についての明記を求めているようです。
反対に、日本労働組合総連合会などは法制化への反対も強いようで、その理由として、正社員ではなく限定正社員としての求人が増えたり、正社員から限定正社員への格下げが生じたり、正社員へは転勤・長時間労働を強いられるなどの可能性が高くなると指摘しています。
個人的には、法制化するよりは、企業ごとに独自の雇用形態、限定条項を設定し、企業内で制度化して定着させる方が建設的であると考えます。また、雇用の問題は企業経営にも大きな問題です。雇用の形態が多様化することで、上手に利用すれば、この企業経営にも大きな変化が期待できるのではないでしょうか。
皆さんの企業でも「限定正社員」、検討してみてはいかがでしょうか。