最近、良く耳にする「贈与税の非課税の制度」ですが、ご存知の通り、今年のH27年4月より「結婚・子育て資金の一括贈与」の制度がスタートしました。
なんだか意味のない制度ができたものだ・・・と感じているところですが、つい最近(といっても2年前ですが・・)も、同じような贈与税の非課税制度である「教育資金の一括贈与」の制度が創設され、こちらも皆さん良くご存知だと思われます。
ところで、なんだか・・・似たような制度ですが、皆さんはこの2つの制度の違いをご存知でしょうか。
今回はこの違いを確認しながら、新制度の「使いよう」について考えてみたいと思います。
まずはこの制度の概要を簡単に比較してみましょう。
簡単にまとめると以下のようになります。
このように、制度の適用が出来る子供や孫などの年齢や、拠出できる金額、非課税となる用途等が違っていることが分かります。
また特に大きな違いは、表の最下部の「契約終了前に贈与した方が死亡した場合」の課税関係です。
まず、「教育資金一括贈与」の場合では、課税関係がありません。
すなわち、この制度で贈与した金額は、完全に将来の相続とは切り離しが可能になります。
こういう意味では、この制度を利用しておくことには「相続税の節税」という意味では大きな効果が期待できます。
一方、「結婚・子育て資金の一括贈与」の場合では、贈与を受けた子供や孫等に対してその残額に対して相続税が課税されてしまいます。
この点では、一括で贈与したことの効果は「相続税の節税」という観点では見いだすことが出来ない、ということが考えられます。
なぜなら、これらの用途のための贈与は、もともと贈与税の非課税だからです。
この2つの制度における用途、すなわち「教育資金関係の贈与」も、「結婚・子育て資金の贈与」も、扶養義務者相互間(父母や祖父母と子供や孫などの間)においては、その必要となった都度、通常必要な金額の範囲での贈与をする上では、この制度を利用しなくても、非課税となっているのです。
ここでは、この「必要となった都度」というのがポイントとなりますが、一括で贈与することのメリットが無いとしたら、その必要な都度、必要な資金を贈与してあげれば無税で済んでしまうことになるのです。
改めて、なんだか意味のない制度ができたものだ・・・と感じてしまいますが、ここで考えられるメリットを絞り出してみました。
(1)その都度、資金の贈与をお願いする手間と、都度、贈与する手間が省ける
(2)贈与をする祖父母等が元気なうちに資金移動ができる
(3)祖父母等から贈与があった場合には、「これだけの資金が既に準備されている」という意味で贈与を受けた両親へのメンタル的な余裕が生まれる可能性がある
(4)通常、確実に孫へ相続財産を残すためには、遺言書などでその旨を明記しておく必要があり、またこの場合には相続税額が2割増しになるが、この制度を利用した場合で契約期間中に贈与をした者が死亡した場合には、確実にその一括資金の残高は孫へ残されることとなり、また、孫には相続税が課税されるが、相続税額が2割増しにはならない
かなり無理やり感がありますが、このようなことが考えられます。
特に、(4) については、成就するための前提条件は厳しいものがありますが、例えば、「年齢50歳未満の孫にお金を残してあげたい、余命いくばくもない祖父母等がいる場合」などの場合には、その用途の利用予定がなくとも「結婚・子育て資金の一括贈与」の制度を利用して、孫へ相続した場合の相続税額の2割加算を回避しながら、かつ、確実に孫へ相続させる、というような、レアケースでの利用価値はあるのではないかと考えます。
とはいえ、やはり、なんだか意味のない制度・・・と感じないではいられません・・
このように、使いづらい制度ではありますが、両制度の違いをしっかりと確認して、ピンポイントでうまく利用してもらえればと考えています。