これもフリーか

以前、ご紹介したことがある『クラウド会計ソフトfreee』。
この運営会社が、先月『会社設立freee』というサービスを開始しました。
その名のとおり、会社設立支援のためのサービスですが、ここを利用するだけで会社設立に必要な手続き全般が完了できます。利用料はfree。
会社設立というと、自身で手続きを行うか、司法書士か税理士に依頼するというのが一般的です。自身で行うには手間が掛かるし、司法書士や税理士に依頼すると費用が掛かる。また、設立後の諸手続きも時間とお金が掛かります。
また、税理士が会社設立を低額又は無償で請け負うこともありますが、引き続き顧問契約という流れが待っているので、事前割引のようなものです。
しかし、この会社設立freeeは、自身で手続きを行っても、最も費用と時間がカットできるサービスと言えるかもしれません。そのままクラウド会計ソフトfreeeを利用するのであれば、税理士に仕事を依頼する前に事前準備は完了し、ついでにfreeeを扱える税理士まで探せるという段取りの良さ…、よくできています。
当社グループは、組織再編の関係で今年の一月に会社を一つ設立しました。仕事柄、設立事務には慣れているので、必要情報を司法書士に連絡して書類の作成と登記を依頼。当社スタッフに印鑑の準備、銀行口座の開設、税務署等への提出書類の作成などを指示して速やかに設立しました。
面倒だなと思ったものの、迷うこともなく指示も一方通行で済むので、ほぼ最少ステップで設立していると思われます。
しかし、この会社設立freeeを実際に使用してみると、「こっちで設立した方が早いし、楽だな…。あと半年早くリリースされていれば!」と、素直に感じました。税理士が、お客様の代わりに会社設立freeeを使って設立手続きすることも多くなりそうです。
もちろん、こだわりのある定款を作りたいなどの要望があれば別ですが、定款などは後からいくらでも変えられます。費用を掛けず、シンプルに設立するということであれば、理想的なサービスと言えます。
司法書士にも聞いてみましたが、司法書士泣かせのソフトだと申しておりました。
ちなみに、freeeは給与計算やマイナンバーのサービスも提供しています。
会計は税理士泣かせ、給与やマイナンバーは社会保険労務士泣かせ、設立は司法書士泣かせ…。次は弁護士でも泣かせてくれるのでしょうか 笑
freeeは士業を泣かせる気はないのでしょうが、税理士や司法書士などの専門家は複雑でテクニックを要したものを好む傾向があり、実際問題としては必要がないことを行うことが多い。
“悪貨が良貨を駆逐する”ということわざがありますが、freeeの場合は逆かもしれませんね。士業のサービスの過剰さ、複雑さを駆逐していただきたいです。
もちろん、ソフトに全面的に委ねることはあり得ませんが、会社設立freeeのようなサービスが、税理士や司法書士などの本来の専門家からではなく、ソフトの開発会社から提供されるところがポイントです。そもそも、ソフトとサービスの垣根がなくなっています。
税理士内で、得意業務を分業していくことがありますが、今後はfreeeのようなソフトと分業していくことになります。あるいは、税理士などの士業がソフトやクラウドサービスの下請けと化すのか…。
当社は既存サービスのうち、いくつかを止めることを決定しました。freeeのようなサービスと勝負する気にもなりませんので、非収益事業と化す前に撤退します。こだわりは全くありません。
そんな最中、アマゾンがリフォームの定額販売に参入しました。今回は、積水ハウス、大和ハウス、ダスキンの大手が出店していますが、これもある意味、アマゾンの下請け化と捉えられます。水回りリフォームなどを得意としているリフォーム会社はどのように対抗するのでしょうか…。
業務を複雑にしてきた専門家が、シンプルさとスピードで勝負するサービスに、どこまで抵抗できるのか。税理士などの士業にとどまらず、このような波があらゆる業種に迫っている、あるいは既に飲み込まれていることを自覚していく必要があります。
降参して軍門に下るか、徹底抗戦するのか、ブルーオーシャンを切り開くのか、いずれにしても考え時ですね。
P.S.
最後にお断りをしておくと、私はfreeeの回し者ではありません。お金を支払って利用している一ユーザーですし、他のクラウド会計ソフトも複数利用しています。念のため…。