税制改正によって平成 28 年から、いわゆる「金融所得一体課税」が導入されます。
一体、なにが変わるのでしょうか。
現行では、同族会社などの非上場株式の譲渡損益と、特定口座などで売買している上場株式の譲渡損益とは、申告する時に相殺することが出来ます。
しかし、改正によりH 28年1月1日以後の譲渡から、この相殺が出来なくなります!
よく、事業承継による同族株式(非上場株式)の譲渡のときには、多額の譲渡益が発生するケースが多いのですが、この同時期に、例えば株価低迷による含み損失のあるような、いわゆる塩漬け状態の上場株式を保有していれば、これを売却して譲渡損失を実現させることで、先の同族株式の譲渡益と相殺させ、納税を軽減させる方法が採られていました。
例えば事業承継のため、非上場の同族株式を後継者へ移転するために譲渡した結果、譲渡益が5,000万円出たとします。
この状態で申告するとなると、譲渡益に20%の所得税が課税されますので1,000万円の納税が必要になります。
一方、リーマンショック前に購入したような上場株式等を所有しており、株価の順調な今でも総額5,000万円の含み損があり塩漬け状態だったとします。
そこで、この上場株式を売却して5,000万円の譲渡損失を実現させることで、両者の損益が相殺できるので、結果、損益を0円とすることで納税を回避することができるのです。
■その逆のパターンもあり得る?!
アベノミクスの恩恵か、このところ株価は順調のようです。
うまく運用して実際に利益を享受したり、あるいは、大きな含み益を持った状態で上場株式を保有されている方も多いのではないでしょうか。
そこで、非上場の同族株式を所有するオーナーさんなどには、この同族株式を低額で譲渡することで譲渡損失を発生させ、この上場株式の譲渡益と相殺をさせるという方法が考えられます。
しかし、そこには税務上の取り扱いにより、大きなトラブルとなる可能性が大きいので注意が必要です。
税法では、非上場株式の譲渡の際には、その譲渡の時の「適正な時価」により売買することを要請しているからです。
したがって、その「時価」よりも低い価格で売買されても税務上では認められず、時価との差額に対して原則的には課税されてしまうことになってしまいます。
また例えば事業承継により、譲渡によって株を後継者へ移転させる際には、会社で先代の多額の(とはいっても適正な)退職金を計上することで赤字決算を計上し、意図的に株式の時価を低減させることが可能となる場合があります。
そこで、その時点で自社の株式を譲渡することで、事業承継を行いながら退職金支給前より譲渡益を少なく、場合によっては、譲渡損を出すことが可能になります。
そして譲渡損を計上できる場合には、先の上場株式の譲渡益との相殺をすることで、本来納めるべき上場株式の税金を減少させることが可能となるのです。
しかし、このように非上場株式を譲渡する際の金額には税務上の「時価」という概念が付きまといますので、慎重に行うことが重要です。
非上場株式の譲渡の際には、譲渡益の場合も、譲渡損の場合もこの「時価」の算定が必要となります。
このような相殺が可能なのは、今年、H27年12月31日までの譲渡が対象となります。
該当する環境のある方は、是非ご検討されてみてはいかかでしょうか。
また、弊社では、「自社株評価サービス」も行っています。
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