はじまりました!!リバースチャージ方式!!

皆さん、もうご存知ですよね?

以前にもお伝えしましたが、
消費税の「リバースチャージ方式」が、H27.10.1から始まりました!

え?
ご存知ない?

でも大丈夫!
なぜなら、ほとんどの会社さんでは関係がないからです。

関係がないって?
先ほど「関係がない」と申し上げましたが、この適用となる主な要件は次の通りです。

(1)消費税の課税売上割合が95%未満の会社
かつ、
(2)本則課税方式の事業年度

上記のいずれも満たす場合のみ、この「リバースチャージ方式 」の対象となります。

言い換えれば、
(1)課税売上割合が95%以上の場合
又は
(2)簡易課税方式の適用の事業年度

この場合には、この「リバースチャージ方式」方式の適用がない、ということになります。
そして、一般の中小企業では、(1)の課税売上割合が95%以上の場合がほとんどですので、さきほど「関係がない」と申し上げた訳です。

「リバースチャージ方式」とは?
では、改めて、ご説明を致します。
「リバースチャージ方式」・・・文字通り、「納税義務の逆転方式」です。

通常は、商品を売却した者、あるいはサービスを提供した者、すなわち収益代金を受け取った者が納税義務者でした。

これを、「一定の役務提供」に限り、この納税者を「役務等を受けた者」とするのがこの「リバースチャージ方式」となります。

なぜ?
なぜ、このような改正を行ったのでしょうか。

これまで「一定の役務提供」(=ネット経由で購入するデジタルコンテンツ取引等)は、海外事業者から購入する場合には消費税の課税対象外とされていました。

しかし、同サービスを国内事業者から購入する場合には課税仕入れとなっていたことなどから、購入した側の納税者としての公平性や、提供している事業者自体の競争面での公平性等の観点から、問題が指摘されていました。

そこで、「事業者向けの電気通信利用役務の提供」に限り、その「役務等を受けた者」に対して課税し、公平を期そうとしたわけです。

実際には・・・
では、実際に納付しなければならない負担額はどの程度なのでしょうか。

この場合の納付税額を計算する算式は原則このようになります。
(=課税売上割合100%の場合と同様です)
(1)売上等にかかる受取った消費税+上記の一定の役務提供にかかる消費税
(2)(仕入等にかかる支払った消費税+上記の一定の役務提供にかかる消費税)×100%
(3)(1)-(2)
・・・上記の算式では(1)と同額の一定の役務提供にかかる消費税を(2)で控除していますので、負担額は増えません。

では、課税売上割合80%の場合ではどうでしょうか。
(1)売上等にかかる受取った消費税+上記の一定の役務提供にかかる消費税
(2)(仕入等にかかる支払った消費税+上記の一定の役務提供にかかる消費税)×80%
(3)(1)-(2)
・・・上記の算式では、(1)から同額の一定の役務提供にかかる消費税の80%相当額を(2)で控除していますので、負担は同額の一定の役務提供にかかる消費税の20%相当額となります。

上記のように、納税額が出る場合でも、その全額が納税対象となる訳ではなく、課税売上割合に応じて納付が決まることとなります。

しかし、海外からのデジタル素材を多く購入している場合や、海外経由の広告等(グーグル・アドワーズ広告など)を高額で行っている場合などは、その税負担は大幅に増大することが考えられます。

まずは、自社が納税の要件に該当する事業者なのか、その判定から行ってみることをお勧めいたします。

 

意外と忘れられている退職金課税の改正?!

社長:先生、4年前に設立した子会社なんですが、息子もしっかりしてきたので、今期でこの子会社の社長を退任して、息子に承継しようと思います。

税理士:なるほど、いいですね!親会社の承継へ一歩前進ですね。

社長:そうですね。ところで退職金を取ろうと思いますが、退職金の税金は安く済みますよね?

税理士:いいえ。今回の退職で退職金を取っても、1/2課税にはなりませんので、高くつきますよ!

社長:ええっ?

先日、このようなご質問を当社の「セカンドオピニオン」にて受け付けました。

この退職金の改正は、平成24年度の税制改正によるもので、H25年1月1日から既に適用されています。

毎月支払われる給与などの改正ならともかく、一生においても通常は1度か2度程度、人によっては1度も貰うことがない退職金ですから、仕方ないかもしれません。

一般的な中小企業でも、役員に対して退職金を支給することは、そう滅多にはないことでしょう。

そこで、今回は改めてこの改正の中身を再確認してみます。

1/2課税なし!!
所得税において退職金課税の優遇面は、なんといってもいわゆる「1/2課税」が適用できることです。
要するに、2,000万円の退職金を貰っても課税されるのは、その1/2相当である1,000万円となるということです。
(実際には、勤続年数によって退職所得控除がされるので、さらに低くなります)

言い換えれば、2,000万円に対し課税された場合には、例えば30%の税率が適用される人でも、その1/2である15%の税率で済むということになります。
(実際には1/2にした後の金額に対し累進税率を適用しますので、厳密には1/2にはなりません。)

しかし、この改正により、勤続年数5年以下の役員等に対する退職金に対しては、この「1/2課税」の適用がされないこととなりました。

対象は役員のみ!!
前述の通り、この5年以下の縛りと1/2課税の不適用の対象となるのは、「役員等」となります。
言い換えれば「兼務役員さん」も、その役員部分に関してはこの適用の対象となります。

いわゆる、取締役総務部長、取締役経理部長、取締役工場長などの役職の方は、一般的には「兼務役員」となりますが、こういう方への退職金の支給に関して、役員部分と従業員部分の混合で退職金を支給する場合には注意が必要です。

中小企業でも、定年の数年前に使用人から兼務役員に昇格、あるいは本役員に昇格させ、3~4年程度で退職となる人事はたまに見受けられます。

この場合には、最低でも5年以上は役員として勤務させるか、退職金規定をうまく作成し(5年以上在籍した役員のみ支給対象とするなど)、従業員としての退職金のみ支給するなどの工夫が必要かと思われます。

最近は某企業では、女性役員の比率を引き上げるなど、女性の進出も多くなってきていますが、このような税制面を考慮した役員人事制度にすることが、会社の経営にも関わってくるものと考えます。

あなたの会社ではいかがですか?
上記に当てはまる可能性があれば、この機会に規程を見直されてみてはいかがでしょうか。

 

【要注意!】マイナンバーに踊らされるな!!

皆さまご存じのとおり、来月から各個人の住所にマイナンバーが届きます。
昨年から「マイナンバーどうする??」と大騒ぎしていたところ、とうとう本番がやってきます。

しかも、皆さまのお手元に届く前から、消費税の食料品などの軽減分の還付にマイナンバーを使うなどの話が飛び出したりと、今後は困ったら“何でもマイナンバー!”という流れが構築されつつあります。

今までマイナンバーにほとんど興味がなかったであろう従業員の方々も、「消費税の還付に必要」という話を聞けば、「うちの会社は大丈夫なのか?」と気になり始めるはず…。

実際、マイナンバーは、皆さまが報道で見聞きしている以上の用途が検討されており、マイナンバーがないと何もできないという世界が遠からず到来することが想定されています。

私どもは職業柄、様々な媒体から情報を得ていますが、「マイナンバーの利用拡大が進むと、税理士事務所の仕事がなくなるよね…」と話題になります。

しかし、実際そのとおりで、マイナンバーと学習機能を備えたクラウドベースのシステムの発展により、私どもが今まで行ってきた仕事がなくなっていくのは間違いありません。

それほどマイナンバーは重要な制度であり、それ故に取扱いには注意が必要ということになります。

まず、企業にとってマイナンバーが重要な意味を持つのは、従業員の「扶養控除等申告書」や「源泉徴収票」に記載が必要なため、少なくとも従業員全員分のマイナンバーを預かる必要があるからです。

実際に預かると言っても、罰則があるとか、セキュリティを厳重にしろとか、事務所のレイアウトを変更しろとか、皆さまを不安にさせるような情報ばかりが強調され、「実際どうなの?うちは中小企業だよ…」という声が聞こえてきます。

マイナンバーをビジネスチャンスと鼻息が荒くなっている事業者以外の専門家にしてみれば、「実際はこれだけ対応すればいいので、そんな大げさな話ではない…」となりますが、これを大声で言ったところで、「罰則がー!!」などの声にかき消され、自らのお客様に対してだけお伝えするということになります。

また、冒頭でも触れたように、今後は従業員もマイナンバーについて気にされる時期です。中小企業と言えども、マイナンバーについて最低限の対策をしておかなければ、さらに採用が困難になってくる可能性もあります。

「中小企業はマイナンバーのセキュリティがずさんそうで入社したくない…」と。

さて、ここからは宣伝になります。

当法人では、「中小企業は、これだけ知って、このような対応をすれば、セキュリティ面も含めて十分」ということをお伝えするためのDVDを制作いたしました。

もちろん、そのためにはマイナンバーの最低限の知識も必要ですので、その知識もサラリとご紹介しつつ、セキュリティ面も考えると中小企業にとってはこれが一番簡単というレベルの内容となります。

まだマイナンバーの対応が決まっていないという方のみならず、既に対応を始めているが、ここまでする必要があるのかと疑問をお持ちの方は、是非ご覧ください!

『中小企業のための最も簡単なマイナンバー対応』DVD

 

消費税の還付案に見る、今後の税金の流れ

今月、以前より検討されていた消費税の軽減税率につき、軽減分を後日還付するという案が打ち出されたことは皆さまも報道で見聞きされていると思います。
まだ財務省案なので、最終的にどうなるのかは分かりません。政治が絡めば、制度の良し悪しにかかわらず、二転三転するもの…。
しかし、「またもマイナンバーが前提か!」と、まだ誰も手にしていないマイナンバーであるにもかかわらず、次々とデータが格納されていく模様。
消費税の還付案についてですが、一般消費者の立場では実際に支払うときに、支払う額が少ない方が良いに決まっています。だから、還付はダメ。ただし、消費税を受け取る事業者の立場を考えれば、その事務の煩雑さに辟易するのは容易に想像がつくと思います。還付なら今までと特に変わりはありません。還付OK。
還付をしないのであれば導入せざるを得ないと言われているインボイス方式なんて、事務負担の増大で売上が減ってもおかしくないし、費用は間違いなく増えるし、大変な目に合うのは間違いありません。
では、軽減分がどの程度のインパクトを与えるかと言うと、
仮に年間の食費が100万円(月8.3万円)だとして、軽減税率2%分と考えると金額にして2万円の消費税。年間の還付額が1人4,000円を限度とする案だと、5人家族でやっと元が取れます。
「この2万円が大きい!」と考える方は多いのでしょう。
ただ、このような計算が成り立ち、かつ還付の限度額まで設けるのであれば、バラマキと言われようが、消費税の軽減税率なんて導入せず、マイナンバーで収集した所得情報を基に、所得制限を掛けた上で、所得税を1人4,000円還付した方が効率的です(もちろん、これは理屈でのお話しをしていますので、乱暴な議論であるのは承知しています…念のため)。
最近、コンビニなどでもクレジットカードを使う方が増えていますが、レジに並んでいる前の人が支払にクレジットカードを使い、さらにTカードを取り出してTポイントを受け取り、さらにマイナンバーのカードを取り出して還付を受ける…なんてことを想像した場合、「レジで、カード三枚を処理してもらっている人の後ろに並びたくない!」。そう思うのは私だけではないはずです。
そして、「“痛税感”という言葉ってあるんだな…」と思いつつ、一回10,000円(税抜)の食品の買い物で、10,800円が11,000円になって、「痛税感あるー!」と自分が思うかと想像すると、おそらく思わない…。
さらに、クレジットカード派の私が、もう一枚マイナンバーカードを取り出すか…、絶対に取り出さない!(コンビニではクレジットカードは使わずモバイルSuica、Tカードは持っていません…こちらも念のため)
そこまで考えると、軽減税率が導入されなくても私の痛税感は鈍そうですし、マイナンバーカードをいちいち「ピッ!」とやってもらうのも面倒です。
とにかく、お金を還付してくれるのはありがたいのですが、「ピッ!」は止めて欲しい。間違いなく還付限度額の4,000円に相当する年間20万円の食費は支出しているのだから、単純に4,000円を振り込んで欲しい!と思ってしまいます。
そうであるならば、その名目は無理やり消費税の還付とする必要はないと思うのですが、これが通用しないのが政治なので、何とも難しい限りです。
ただし、この“税金を徴収して、マイナンバーを使って税金を還付する”という流れは、消費税のみならず、今後の税金のスタイルになっていくのは間違いありません。
例えば、年末調整については、毎月所得税を会社から徴収され、年末に会社から還付を受けています。しかし、遠くない将来、毎月所得税は会社から徴収されても、最後に還付を受けるのは国からとなる可能性は十分にあります。
マイナンバーが数十年も前から検討されていたように、年末調整という制度をなくすという話しもかなり昔から存在します。
マイナンバーを経由して全ての収入・納税・家族データが集まれば、それを確認して追加修正し、最後にまとめて還付を申請するということが可能になるからです。それを行っている国は既に存在します。
確かに効率は良いですし、無駄なコストも労力もカットすることができそうです。
「生産性の向上!」というのは安倍首相に言われるまでもなく、中小企業が取り組むべき絶対的課題でありますし、日本政府が率先して取り組まなければならないはず。
そう考えれば、還付案は悪くありません。ただし、「ピッ!」は明らかに生産性の減少につながりそう…。
軽減税率自体は導入されるのでしょうが、これがどのような形で決着するのか…。一般消費者としてのみならず、事業者側としても注目していかなければなりません。
P.S.
もしかすると、消費税の還付案は、ポイントマニアの方にとっては意外とうれしいのかもしれませんし、「うちは大家族だから、その軽減分のデータが必要ないなら、俺のマイナンバーカード使わせて!」なんてことが繰り広げられるかもしれません。
飲み会の会計の際など、意外と盛り上がりそうですね 笑

 

役員報酬改定時期に自社を長期で考える

配偶者控除の見直し、ベビーシッター代の所得控除の検討などなど、給与をめぐる所得税関連の改正や議論が多くされています。平成25年分以後に上限が定められた給与所得控除については来年、再来年と漸次引下げられることが決まっています。

個人への課税が強化されている一方で法人税率が下げられていることは、もうよろしいでしょう。そのことは解っているものの、役員報酬の改定時期のたびに、「今、税率って何%でしたっけ?」と顧問税理士に聞いている方もたくさんいらっしゃるはずです。では現在、法人と個人の税率はどの程度になっているのでしょうか。比較しながら改めて確認していただきたいと思います。
まず市県民税・事業税を含めた法人税の実効税率を確認しましょう。

(図:平成27年4月1日以後に開始する事業年度)

仮に法人の所得が800万円であった場合、上記の実効税率にしたがって計算した法人税額は1,783,600円です。所得に対する法人税の比率は【22.295%】です。法人の所得が2,000万円であれば、法人税額は5,903,200円、所得に対する法人税の比率は【29.516%】です。5,000万円の所得では【32.4%】程となります。

では、続いて個人の税金を見ていきましょう。税金には当然、社会保険料も含めて考えます。ご存知のように社会保険料は企業と本人で折半します。従業員の場合は自らが負担する社会保険料だけを考えれば良いでしょう。しかし、経営者が自らの役員報酬を考える時、従業員と同じように企業が負担する社会保険料を分けて考えて良いのでしょうか。

中小企業の経営者にとっては【企業が負担する】=【経営者本人が負担する】ことと同じではないでしょうか。実際、多くの経営者はそうした感覚を持っていらっしゃいます。であれば当然、企業が負担する社会保険料も役員報酬にかかる税金の1つと捉えて考えるべきなのです。

(図:役員報酬月額に対する各種税金)

この表は役員報酬の月額に対する税金を集計したものです。各種税金合計(1)と税負担割合(1)は通常どおり、会社負担分の社会保険料は考慮していません。しかし、各種税金合計(2)と税負担割合(2)については先に述べたとおり、会社負担の社会保険料も役員報酬にかかる税金の1つと考えて税負担割合を算出しています。

どうでしょうか?一瞬目を疑った方もいるはずです。月額20万円の役員報酬ですら、その税負担率は33%を超えています。いかに社会保険料の負担が重いかが分かります。

この結果を見ると現在の税制下で、ある程度、税負担の最適化を求めた場合、役員報酬は“そこそこ”にして会社に内部留保していくのがベターではないかという至極まっとうな考えにたどり着きます。しかし、今回考えていただきたいのは、内部留保のさらにその先です。

ここでお伝えしたいことは、現在の税構造においては、来期1年間の売上云々などではなく、「長期的な視点で企業経営を捉え、その一つとして役員報酬を決めていく必要がある」ということです。つまり、長期的な視点で自社の経営スキームを組みつつ、税制の変化や自社の変化に合わせて毎年そのメンテナンスを行い、それに合わせて役員報酬を改定していくことになります。

例えば事業内容的に自分の代で解散するであろう会社の場合であれば、税負担を覚悟のうえで会社に余計なお金は残さず、早い段階から個人に財産を移転していくのも一つです。しかし、既に退職(解散)時期がそう遠くない段階であれば無理に今、高い税金を払って役員報酬で取らずとも、今から法人税法上認められる退職金の額を予測し、計画的に会社に内部留保を行い、所得税・住民税の優遇税制の恩恵を受けられ、社会保険料もかからない退職金で取ってしまうというのも非常に有効です。

長年の経営により個人の財産もしっかり蓄え終わっているようであれば、役員報酬を抑えて、会社の内部留保をより厚いものとしていき、次世代へ引き継ぐ準備をするという戦略もあるでしょう。

しかし、実際にこうした長期的な視点で物ごとに備えて役員報酬を決めている中小企業は多くありません。来年1年や目の前の数年のことだけ考えて決めているケースが圧倒的に多いのです。

個人課税の強化が現在進行形で行われ、法人税の引下げも進む現在、私たち中小企業は、経営者個人と企業の「現在のステージ」と「今後進むべきステージ」をしっかりと捉え、長期的な戦略を練っていかなければなりません。税務戦略も長期で行うべき時代なのです。
次の役員報酬改定時期には、是非じっくりと考えてみてください。

 

今こそ自己株式を『消却』しよう!

第430号『本当はタダより”安い”ものはない!』において、地方税法の改正によってすべての会社に平等にかかっている法人住民税の『均等割』について引き下げとなる可能性が出てきたことをお伝えいたしました。

しかし、今回は逆に均等割が引き上げとなる場合があることについてお伝えいたします。
引き上げの対象となるのは、過去において『自己株式』の取得によって均等割の引き下げを受けている法人です。

改正の内容は以下のとおりです。

法人住民税の均等割りの税率区分の判定の基準となる『資本金等の額』が『資本金と資本準備金の合計額』を下回る場合の均等割りの税率区分の判定の基準は、「資本金と資本準備金の合計額」とする。

 

(図)

⇒上記に該当する場合には、法人住民税均等割の税率区分の基準を『資本金の額+資本準備金の額』とします。

なお、ここでいう『資本金の額+資本準備金の額』は貸借対照表に計上されている金額です。

 

(貸借対照表)

 

 

自己株式を取得しても貸借対照表上の資本金の額と資本準備金の額は減少しないため、典型的に今回のケースに該当することとなります。

また、ここで注意をしなければならないのは、過去に自己株式を取得している法人も対象になるということです。

そこで、過去に自己株式を取得し均等割りの引き下げを受けている法人については何らかの対応を迫られることとなりました。

具体的には、次の二つの手順を踏むことになります。

 

(手順)

この二つの手続きを踏むことによって貸借対照表の資本金の額を減少させることができます。

自己株式の取得をし、そのまま保有している法人はたくさんあります。

何故、すぐに消却をせずに今日まで保有していたのか?という疑問が生じます。

その最大の理由は『消却をする必要がなかった』からです。

実は、減資と株式消却については会社法に従った厳格な手続きと法務局への登記が必要となります。

つまり、そこまでしなくても均等割りを引き下げることができていたので当初の目的は達成されていたのです。

繰り返しになりますが、このまま取得した自己株式を放置していると均等割りのランクが引き上げられる結果となります。

今こそ金庫の中で眠ったままの自己株式を消却すべき時なのです。

 

みんな結局、「ふるさと納税」が大好き?!

「今年からは、ふるさと納税の適用額が増えて、さらに確定申告も不要になるんですよね?」

いまだに良く聞くご質問のひとつです。
なんだかんだ言っても、みなさんふるさと納税の魅力にハマってしまっているようです。

みなさんも、ふるさと納税に改正が入り「どうやらこれまで以上にお得になったようだ」というのはお耳にされているのではないでしょうか。

ところで、本当にお得になっているのでしょうか。
今回はこの改正の概要について、改めてお知らせしたいと思います。

■ワンストップ特例!?
「ふるさと納税」これ自体のご説明はもう不要かと思います。

そう、ご存知のとおり、お住まいの市町村等以外の自治体に寄附をすることで、原則として寄附金相当額の所得税・住民税の税額控除を受けることが出来、かつ寄附をした市町村によっては、お礼品が贈られてくるという、なんともお得な制度です。

これまでは、寄附金をした場合には、サラリーマンであっても確定申告をしなければこの控除は受けることが出来ませんでした。
しかし今年の改正により、H27年4月以降の寄附に関しては、一定の条件により確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」が創設されました。

なお、この場合には「5団体の自治体(5か所)」までの寄附が、確定申告不要の対象となっています。

■控除額が2倍に?
「どうやら、控除できるのが2倍になるらしい・・・」

このように記憶されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には少し違います。

控除額が2倍になるのではなく、控除額の限度額が住民税額の約1割から約2割へ増加されるというものです。

所得の状況や所得控除の状況などは、その年によってその金額は変動するかと思いますが、その変動後の課税所得をベースとした住民税額に応じることとなるので、単純に2倍になる訳ではありませんから注意が必要です。
しかし、確実に控除となる金額は増えることになります。

■「ワンストップ」の落とし穴!?
上記を見ると、手続きが簡単になり、さらに控除も増えたようで、なんだかお得で身近になった気もしますが、果たしてそうなのでしょうか。

実は「ワンストップ」といっても、もうひと手間の手続きが必要なのです。

寄附をした自治体へは「寄附金控除にかかる申告特例申請書」を提出しなくてはなりません。それも通常はその「申請書の取り寄せ」から始めなくてはなりません。

先ほど「ワンストップ」、すなわち確定申告不要とするには「5団体の自治体」への寄附まで、ということを申し上げました。

すなわち、仮に5団体の自治体へ寄附をした場合には、計5回、申請書を取り寄せて提出する必要があるのです。

さらに、同じ自治体へ2回に分けて寄附をした場合には、その寄附の都度、上記の申請が必要になってきます。

これ、果して「ワンストップ」といえるのでしょうか・・・。

■さらに・・・
医療費が多額にかかり、「医療費控除」を受けていらっしゃる方も多いかと思います。
家族が多く、また高齢の親族がいらっしゃるような方は特にそうかもしれません。

仮に、この「医療費控除」を多額に受けられる場合には注意が必要です。
医療費控除を受けたばっかりに、上記の「寄附金控除」が受け切れない、あるいは受けることが出来ない、なんてことも考えられるのです。
「寄附金控除」は「医療費控除」の適用後の所得税等から受けるという、適用の順番が法令により決まっているからです。

すなわち、「ワンストップ」の恩恵を受けようと申請書を提出したものの、確定申告時に医療費控除を受けたために寄附金控除を受けることができず、結果、その「ワンストップ」のための申請書の提出が無駄になった、ということも考えられるのです。

(そもそも、こうなると寄附金自体も無駄では?というお話しになりますが、今は、手続きとしての「申請書の提出の手間」という論点で見て頂ければと思います!)

さらにさらに、こんなことも考えられます。年の途中で寄附金をして申請書を提出したが、その後引越しをした場合です。
この場合には、引越し後に、寄附をして申請書を提出した自治体に対し、新たに「引越しをした旨の届出書」を提出しないと寄附金控除の適用はされません。

なんとも面倒な話ではないでしょうか。

■結論
上記を考えてみると・・・
確定申告の必要のないサラリーマンであり、かつ、引っ越しもしない方で、1団体のみの自治体へ1回だけ寄附をして、さらに医療費控除を受けない方は、「ワンストップ特例」の適用を受けるべく、1回だけ申請書を提出することで、その適用が受けられます。

当たり前ですが、この場合は1度きりの申請書の提出で済み、ある意味「ワンストップ」といえると考えます。

それ以外の方はどうでしょうか・・・。
例えば2団体以上の自治体へ寄附をする場合や、同一の自治体へ2回以上寄附をする場合、また、医療費控除を受ける予定の方などは、年明けに1回で済む「確定申告」をする方が、実は手間が少なく無駄がないのではないかと考えています。

いつも通り会社で年末調整をしてもらい、その結果の源泉徴収票と寄附金関係の書類、あるいは医療費の領収書を持って確定申告すれば、手続きは1度で済んでしまうのです。
手続き自体もそう難しいものではありませんし、税務署でも親切に教えてくれます。

これから寄附をしようと考えている方、あるいは寄附はしたけれども、まだ「特例申請書」の提出はしていない方などは、ご自分の状況に応じて、1度の手間で済む年明けの確定申告を考えてみてはいかがでしょうか。

 

副作用

「相続税対策にお孫さんを養子にしませんか?」

専門家から、こんな提案を受けたことのある方、たくさんいらっしゃるはずです。
手続きは簡単、実親との親子間関係もそのまま、もともと名字が同じなら養子縁組によって孫の名前が変わることもありません。それで相続税の対策になるならと、実親も前向きに検討するケースが多いようです。しかし、未成年の孫を養子にする場合には、少し注意が必要です。

ご存知のように未成年者には「親権者」がいます。通常は実父母が親権を持っています。離婚裁判などで親権を争う話などを聞く機会がありますので、比較的よく知られた法律用語です。

もうピンと来ましたでしょうか?
そう、「未成年者である養子の親権は誰にあるのか」です。

実は未成年者を養子にした場合、その親権は実親から養親に移ってしまいます。
つまり法律上、実父母には実の子に対する「親権」が無くなってしまうのです。

相続税法上、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までを養子とすることで法定相続人の数に含めることができます。そして相続人が増えることにより相続税法上、次のような効果が生まれます。

  • 相続税の基礎控除(非課税枠)が増える。※1人当たり600万円
  • 生命保険金の非課税枠が増える。※1人当たり500万円
  • 退職金の非課税枠が増える。※1人当たり500万円

孫養子の相続税は20%割り増しになるというデメリットもありますが、通常は上記のメリットの方が大きく作用しますので、手続きも簡単な「孫養子」は一般的な相続対策として幅広く知られ、利用されています。

しかし、しかしです。前述のように、養子となった未成年の孫の親権は養親に移ってしまいます。
さて、実の親の心情として、実の子の親権を持たないというのは、どうなのでしょうか・・・
私は3人の娘(未成年)の親です。あくまで私の個人的な意見ですが、仮に私の親が資産家で、娘を私の両親の養子とすることで、相続税を減らせたとしても我が子の親権が自分にないという状況には大きな違和感を得ます。親権が私になくても、何かなければ特に問題は起きないかもしれません。しかし、それでもやはり私の子の親権は私が持っていたいです。

もちろん、相続税対策としてはとても有効ですし、考え方は人それぞれです。こうしたことを、ご理解のうえで未成年の子を両親の養子にするのであれば問題ありません。
しかし問題なのは、この養子と親権の話、意外と知らない方が多いのです。

専門家に勧められ、我が子を両親の養子にすることに同意したが、後から自分には親権がないことを知ってショックを受ける・・・こんなことは避けなければいけません。

もちろん何も起きないまま、子(孫)が成人すれば親権の話は関係なくなります。
しかし、逆に養子となった子(孫)が未成年の間に養親(祖父母)が亡くなってしまった場合でも、その親権は実父母には戻りません。この場合には家庭裁判所で後見人を選任しなければならないのです。

繰り返しになりますが、孫を養子にすることは相続税対策として有効であることは事実です。しかし、養子縁組のような法律行為を行おうとする場合、どのような法律効果をもたらすのかをよく理解したうえで実行していただきたいのです。

もちろんお金は大切です。しかし、それ以上に大切なこともあります。こうしたことは、一人ひとりの価値観によるところが大きい問題ですので、正解は人それぞれです。
相続税に限らず、節税効果を期待する行為の裏側には副作用のようなデメリットが発生することが少なくありません。メリットもデメリットも過不足なく分かり易く説明してくれる、頼れる専門家を味方につけ、みなさんにとって最適と考えられる選択をしていきましょう。

 

本当はタダより"安い"ものはない!

赤字の会社にとっては、1円でも税金が安いに越したことはありません。

先に行われた税制改正によって、すべての会社に平等にかかっている地方税の『均等割』についてランクが引き下げになる可能性が出てきました。

対象となるのは、資本金が1千万円を超える会社です。

『均等割』とは、資本金と従業員数の2つを基準にしてすべての会社に対して一律にかけられている税金です。

そのため資本金が1千万円を超える会社については資本金を減少させることによって『均等割』を減らすことが可能となります。

このように会社設立後に資本金を減少させることを『減資』といいます。

減資をする場面はいくつかありますが、その一つが節税を目的としたものです。

経営再建中のシャープが、減資をして税法上の『中小企業』になることで、中小企業に認められた税制優遇を受けようとしたことはまだ記憶に新しいと思います。

減資の方法には、金銭の支払いを伴う減資と金銭の支払いを伴わない減資の二つの方法があります。

これを『有償減資』と『無償減資』といいます。
(注)会社法上、有償減資は存在しませんが、あえてこのように説明させていただきます。

どちらも資本金を減少させる手続きなのですが、『均等割』のランクを決める基準となる『資本金』は決算書上の資本金ではなく、法人税法上の『資本金等の額』であり、この資本金等の額は『有償減資』でしか減少させることができませんでした。

さらに、この『有償減資』を行うことができるのは内部留保のある黒字会社だけで、債務超過の赤字法人は『有償減資』をしたくても会社法違反となるため、指をくわえて我慢することしかできないという現実がありました。

しかし、今回の改正によって『欠損てん補』のために資本金を減少させる『無償減資』を行った場合には、地方税法上では資本金等の額を減少したものとすることとなりました。

この取り扱いは、これから行う『無償減資』のみならず、平成13年4月1日以後に行われた『無償減資』も対象になりますので確認が必要となります。

また、注意すべき点が一点あります。

それは、資本金の『無償減資』から1年以内に欠損てん補に充てた金額に限ると規定されていることです。
通常は『無償減資』と同時に行われるため、気にするほどのことではありませんが、覚えておく必要はあります。

これによって、今までは『均等割』を下げたくても減資をすることができなかった会社においても、お金を払い出さずにタダで節税を行うことができるようになりました。

ただし、タダとは言っても手続きに費用がかかります。

では、減資を実行した場合の費用対効果を確認しておきましょう。

『無償減資』は、会社法の手続きに従って処理する必要があるため、官報への『公告』債権者への『催告』といった耳慣れない手続きが必要になります。

概算でかかる費用は以下の通りです。

≪減資にかかる概算費用≫

概ね20万円といったところです。

 

これにより、引下げとなる均等割額は以下の通りです。

(東京都の均等割額)

 

1年あたり『11万』の節税になりますので、2年で手続費用の元がとれる計算です。
そして3年目以降はプラスになります。

なお、この改正は平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用となり、期末時点での資本金で判断されます。減資が期末までに完了していれば適用されますが、減資の効力発生までに1ヶ月以上の期間が必要となります。余裕をもってご準備ください。

タダで税金が安くできるこの機会をお見逃しなく。

 

税務調査、始まっていますね…

ご存じのとおり、国税の人事異動は毎年7月10日になりますので、税務調査はこの人事異動後に活動を開始し、実際の調査は8月に入ってからというのが流れです。現在進行形の企業様もおありのことでしょう。

しかし、税務調査も少し流れが変わってきたようで、人事異動前に調査の事前通知が始まっています。実際、当社のお客様でも6月下旬に税務調査の事前通知がありました。早いなと思います。

事前通知が早まったということは、結果として税務調査の件数が増えるということにつながります。近年は税務調査の件数が減少傾向ですから、少しでも調査件数を増やすということなのでしょう。

こうなると、やはり税務調査が省略となる場合もある書面添付制度は有効ですから、ぜひご活用いただくのがよいと思います。もちろん、顧問税理士様に…。

ちなみに、上記の当社への事前通知も、書面添付を提出しているお客様に対してでした。

「あのー、33条の2の添付書面出していますけど、それでも調査の日程調整しますか?」

「…少々お待ちください。(ガサゴソ)、♪~…、…、…。もしもし、一度なかったことにしてください。調査自体行わない可能性がありますので…。」

もちろん、今回のケースはレアな笑い話ですが、書面添付制度にはこのような効果があります。

とはいっても、税務調査はやはり嫌なものです。何と言っても時間が奪われます。書面添付制度を利用しても、永遠に来ないということではないので、来てしまったら仕方ありません。税務調査に来てしまったら、早く終わってもらうしかありません。

では、どうすれば早く終わるのか?

一番は、顧問税理士に普段からしっかり仕事をしていただくこと。これに尽きます。次は、自社でも正確な処理を心掛けること。

ベタですが、問題がなければ税務調査も早く終わるのは当然です。税理士にも限界がありますし、ミスもします。帳簿の正確性を確保するには、自社と税理士の共同作業が必要です。

では、税理士に頼りきりにせず、自社でも正確性を心掛けるには、どのようにすればよいのか?

これはやはり税務調査のチェックポイントを抑える必要があり、チェックポイントを知ることが重要です。ちなみに、国税庁は下記のようなチェックリストをホームページに掲載しています。

   ・「大規模法人に関する要注意項目確認表」(PDF)

   *上記の関連ページはこちら

大規模法人とありますが、中小企業でも変わりません。慣れないと少し難しいかもしれませんが、よく出来ています。決算月まで会計処理が終わった後、改めてこのチェックリストでご確認いただき、漏れや修正すべき点、顧問税理士に伝えておくべき点をご確認いただくのがよろしいかと考えます。それだけでも随分違うと思います。

このチェックリストは税務署への提出対象ではありませんが、税務調査に来た時などに、帳簿書類の一番上に堂々と置いておくのも面白いかもしれませんね(笑)

「うちは、国税庁が出しているチェックリストでしっかり処理しているよ!」って。

もちろん、どの企業も「これは微妙かな…」と思う点はあるでしょう。しかし、それは既に皆さまも十分把握しており、かつ、覚悟をしている部分もおありのはず。

ネックとなるのは、想定外のリスクです。このようなものはチェックリストなどで炙り出しておくのが一番です。

税務調査対策にウルトラCはありません。調査官と上手く交渉して…という話しもありますが、それはあくまで問題が発生しているケースに対してです。

問題が発生しないようにするには、問題点を事前に抑えておく。本当にこれだけなのです。

調査官も税金を取りたいばかりではなく、調査が早く終わるものなら終わらせて、次の法人の調査に取り掛かりたいのです。

ぜひ、協力して早く終わらせてあげようではありませんか!
もちろん、修正なしで。

P.S.
少し税務調査から外れる内容もありますが、法人会などもチェックシートを公表していますので、ご参考にしてください。

   *【法人会:自主点検チェックシート】