手取りの取扱いを変えてみる

例えば、源泉所得税を会社で負担してくれる給与の受取り方があるとしたらどうします?
繰り返しお伝えしているとおり、25年度から給与所得控除額の上限が設けられました。
もちろん、年収1,500万円以下の方は関係のない改正ですが、会社役員等で年収1,500万円を超える方は・・・諦めてくださいということです。
さらに、今月から所得税額に対して復興特別所得税額2.1%が課され、所得税の最高税率が40%から45%へ引き上げられることが進んでいます。
さらに、さらに、社会保険料の増加・・・。
「どれだけ給与から天引きされるんだ!」
と、毎年減少していく手取り額を見て、溜め息をつかれる方も多いはず。
おや? 天引き?
そういえば、天引きされない給与の受取り方がありました。
念のため、皆さまにお伝えしておきます。
現金だけが、給与ではない。
これはご存じの方も多いかと。
いわゆる現物給与と呼ばれる「ブツ」で受け取る給与が分かりやすい例です。
商品券や高額製品を会社から受取ったときも、給与とみなされ所得税が掛かります。
年末年始の忘年会やイベントで受取られた方も多いのではないでしょうか。
例えば、1万円の商品券を受取った場合、これについても会社は源泉所得税を天引きする必要があり、税率10%として1,000円を本人から徴収します。
この1万円と1,000円を通常受取っている給与と合算し、年末調整等で最終的に精算することになります。
こういうケースでのお問い合わせはよくありますが、このことをご説明しても納得できない方が多いようです。
もちろん、私だって当事者でしたら嫌です!
しかし、「法律上」はそうなっているため、判断が難しいところ・・・。
ただし、源泉徴収しないでもよい処理の仕方があります。
これが「グロスアップ」と言うものです。
例えば、ピッタリ1万円の商品券をあげたいのに、同時に1,000円の源泉所得税を徴収しては意味がない。
このような場合、税率10%と仮定して、1万円を90%で割り返します(=11,111円)。
そして、この11,111円を給与とみなし、源泉所得税1,111円、差引支給額1万円(=商品券)とすることが可能です。
この1,111円は源泉所得税として納税する必要があるため、会社の支出額は1万円から11,111円に増えてしまいますが、受取る側からすればうれしい処理です。
しかも、年末調整等で1,111円の一部が還付されるかもしれない。
福利厚生と考えるのであれば、これも選択肢の一つです。
「従業員ばっかりずるい! 役員にもないのか! 役員は定期同額給与というものがあるから無理なんだろ!?」
確かに、社員と役員では取り扱いが違います。
ただし、中小企業の役員の場合は、もっと「大きな額」のグロスアップが可能です・・・。
いわゆる節税法人と言われる企業において流行した手法に、生命保険の契約方法の利用があります。
これは、会社で契約して会社が受取る生命保険契約ではなく、会社で契約して、“役員が受け取る”保険のことです。
これについては、当社の笹川が『保険で節税をしてはいけない!』というセミナーでも養老保険のパターンをご紹介したので詳細な説明は省きますが、
例えば、保険契約者を会社、保険金受取人を役員とする生命保険契約を締結したとします。
通常、会社が契約する場合には、『保険料』という費用となりますが、保険金受取人を会社ではなく役員個人に指定すると、『給与』とみなされます。
つまり、給与とみなされる以上、1万円の商品券と同様に所得税の徴収が必要です。
通常、受取人を個人とする保険契約は、給与から社会保険料や源泉所得税を差引いた手取り額から保険料を支払います。
しかし、この契約パターンの場合、保険料を会社から生命保険会社に直接支払われるため、役員個人のお金は減少しません。
しかも、この場合もグロスアップが使えます。
例えば、毎月50万円の保険料を保険会社に支払う場合、これを仮に20%を源泉徴収するとして、80%で割り返すと625,000円になります。
この625,000円を給与とみなした上で、500,000円を保険会社に直接支払い、125,000円を源泉所得税として納税する。
年収として計算した場合の税率設定の問題はありますが、役員個人としては保険料も源泉所得税も負担せず、保険金の受取人となることができます(ただし、個人住民税は自己負担です)。
役員を受取人とする生命保険契約はときどき見受けられますが、源泉所得税の問題があるために実質的に自己負担を強いられるところ、ここでグロスアップを利用して源泉所得税まで回避しているケースは中々ありません。
もちろん、この源泉所得税分も損金として認識されるため、法人税の減少要因となります。
ここで疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんので説明しておきますが、この保険料は役員に支払われる訳ではなく、保険会社に直接支払われるものです。
そのため、実際には定期同額給与が適用される「役員報酬」とは別に、「経済的利益」として定期同額給与の判定を受けます。
つまり、役員報酬の改定は、原則として株主総会等で一定の時期に行わなければならないのに対し、生命保険契約等の「経済的利益」は、いつ契約してもよいのです。しかも年払いでも問題ありません。
以上、今回は、給与とみなされるものとグロスアップの組み合わせで、手取りの取扱いを変えてみました。
これを節税とみなすか否かは皆さまのご判断にお任せしますが、課税方法の組み合わせでも色々な選択肢が生まれるという点を知っておいていただければ幸いです。