マイナンバーで税理士いらず!?

御社の顧問税理士について考える良い機会かもしれません。
6月19日の日本経済新聞にこんな記事が掲載されていました。
『医療費控除 領収書不要に』
皆さんご存知、医療費が一定額を超えた場合に税負担を軽くする制度「医療費控除」。現在は1年分の領収書を保存、確定申告の際に提出しなければなりません。電子申告する場合においては提出せずに済みますが、この場合には領収書1件1件について、医療機関の名称や治療の内容を入力する必要がありました。これがなかなか地味に面倒で、申告を諦めている人も多いようです。
しかし、来年1月に導入されるマイナンバー制度によって集積する医療費のデータを使うことで大半の領収書は出さなくてよくなるとのことです。
具体的には2017年夏までに健康保険のデータがマイナンバーに紐付けされ、国民健康保険や健康保険組合から「医療費通知」がマイナンバーの個人用サイト「マイナポータル」に送られます。利用者はこのデータを税務署にインターネット経由で送ることで税務署に領収書を出さなくてよくなります。
このことは現在、皆さまが依頼している税理士業務が今後、どんどん“無くなる”若しくはわざわざ“税理士に依頼せずとも自社(自分)で簡単にできる”方向に進んでいくことを如実に表しています。
そう遠くない将来、おそらく医療費控除だけでなく確定申告そのものや、年末調整なども“無くなる”若しくは“税理士に依頼せずとも自社(自分)で簡単にできる”ようになるでしょう。
なぜならば、年末調整や確定申告に必要な情報の大半は、マイナンバーに紐付けが可能だからです。番号制が実施されている他国の中には、番号により紐づけた収入、控除の情報を記載した書類を行政が納税者に送り、納税者は間違いがなければサインして送り返すだけという形になっている国も既にあります。
実際、「税理士の仕事が無くなってしまうから、税理士会を挙げてマイナンバー制度に反対すべきだ!」と声をあげている税理士もいるくらいです。
おそらくこの流れは年末調整や個人の確定申告に留まらず、法人についても同様でしょう。クラウド型の会計ソフトは既に会計入力の自動化を実現しています。記帳入力に関しては「税理士事務所に頼まなくても」というよりも、既に「わざわざ人間がしなくても」というところまで来ています。
決算業務、法人税の申告書についても、例えば「期中に支払った事業税の金額を入力してください。」といった質問に答えて数値を入力していく形式を取れば、専門知識がない方でも、それなりに申告書の作成をすることができるソフトが今後できるはずです。
仮にそのようなソフトを利用し自社で申告書を作成して多少の間違いがあり、追徴課税を受けたとしても、税理士に払う記帳・申告書作成報酬が無くなれば、そのくらいのコストは吸収して、もしかするとさらに余ってしまうかもしれません。
さて、私が言いたいことは皆さんもうお分かりでしょう。
誤解を恐れずに言うなら“申告書を作ってもらうだけなら、税理士はもう必要ない”時代になりつつあるのです。
「申告書を作ってもらうだけで、節税のアドバイスも何もない」
「若い担当者が資料を取りにくるだけで、何年も税理士と会っていない」
税理士変更を検討されている方から、本当によく聞く言葉です。
税理士を選ぶポイントは、人それぞれ違うかもしれません。しかし、申告書の作成まで全て自社でできるようになったとしたら、皆さんは税理士に何を求めるでしょうか。
皆さんは些細なことでも何か困った時、迷った時、顧問税理士の顔が頭に浮かびますか?
そんな時、すぐに気軽にメールや電話で連絡が取れますか?
御社の顧問税理士は、それにすぐに対応してくれていますか?
これらは皆さんが税理士と付き合ううえで、求めるべき最低限のことではないでしょうか。逆にいえば、この程度の関係性を築けていない税理士に報酬を支払うメリットはあるのでしょうか。
税理士の仕事は元来、申告書の作成だけではありません。ITが発達して申告書の作成が自社でできるようになったとしても、生身の人間を相手にする経営においてITが全てを解決はしてくれません。しかし経験と知識が豊富な、本当の意味で頼れる税理士が御社の顧問であるならば、その存在は皆さんをきっと助けてくれるはずです。
申告書の作成だけなら税理士に頼まなくても自社でできてしまう時代は、もう目の前です。御社の顧問税理士について考える、良い機会かもしれません。