経理軽視が行きつく先は・・・

お金を借りた覚えなんてないのに、決算書には何故か役員貸付金という文字。
しかも決算書を数年分並べて見ると・・・うん!?毎年増えている???
おまけに利息まで取られているではないか!
そんな社長さんはいらっしゃいませんか?
こうしたことは、経理処理を会計事務所に記帳代行という形で丸投げしていて、現金出納帳すらつけていないというような会社に起きがちです。会計事務所に記帳代行をお願いしている方は一度、決算書に役員貸付金(借入金)等の勘定科目が無いか確認してみてください。
もちろんご本人が認識している一時的な貸付金や借入金であれば問題ありません。
では何故、記帳を丸投げしている会社に、ご本人が認識していない役員貸付金(借入金)が多いのでしょうか。そして何が問題なのでしょうか。
会計事務所に記帳代行を依頼すると、会計事務所は、預った領収書を会計ソフトに入力していきます。その際、会計事務所は経費にできない金額を代表者への貸付金として処理します。そして、その確認・説明をきちんとしてくれていれば良いのですが、そうとも限りません。もちろんきちんと確認・説明のうえ処理している会計事務所もあるでしょう。しかし、記帳代行業務で、こうした会社の経費にならない領収書がしょっちゅう入ってくれば、貸付金として処理することが当たり前になり、特にいちいち確認・説明をしなくなりがちです。こうして数年もすれば役員貸付金は、どんどん増えていきます。
記帳代行を丸投げしている会社の決算書を拝見すると、ほぼ例外なく、そこには役員貸付金(借入金)があります。そしてその内容を確認しようと社長さんに質問すると、これまたほぼ例外なく、ほとんどの社長さんはこう言います。
「わかりません。全てお願いしていた税理士さんに任せていたもので・・・」
私が過去に見た、他の会計事務所から移ってきたお客様のケースではこんなことがありました。直近の決算書を見せていただくと役員借入金が、なんと2億3千万円!!
社長さんに尋ねると、「わかりません、そんなに貸せるほどの大金、持っているわけがありません・・・」とのこと。その会社は1年に1度、申告時期になると1年分の書類を税理士に送って、記帳・申告を丸投げしていました。結局、どうしてそのような処理になっているのか解明することはできませんでしたが、長年にわたって事実と異なる処理が繰り返し行われてきたことは間違いありません。
こうなると決算書でもなんでもありません。財務戦略なんて練れるはずもありません。
そして、こうした経理を軽視している会社の経営は、まず例外なく崩れていきます。
そりゃそうです。自社の1年の成果を示す“現実”をきちんと見ようとしていないのですから。
さて、ここで実は新たな問題が発生します。それは前述の会社のように代表者からの多額の借入金がある場合です。当たり前ですが、代表者本人側から見たら貸付金になります。つまり資産です。
では、この貸付金、代表者に万一のことがあった場合にはどうなるでしょうか。
そうです、この会社への貸付金、くどいようですが代表者個人にとっては資産ですので、遺族にとっては相続財産となってしまうのです。
本人も認識していないところで積み上がった代表者から会社への貸付金であればなお、多くの場合、会社は返済能力がありません。にも拘わらず、相続財産になってしまうという事は、遺族は返してもらえるあてのない資産を相続する為に、場合によっては相続税を支払うことになってしまうのです。
このような場合、代表者が債権放棄し、会社で債務免除益を計上する、借入金を資本金に振り替えるなど、何らかの対策を早めに打つ必要が出てきます。
記帳代行等、経理の丸投げは、いつかこうした弊害を生み出しかねません。
しかし、人材確保の問題等、様々な理由により、やむを得ず会計事務所に記帳を委託せざるを得ないこともあるでしょう。
そのような場合であっても、月初には前月分の資料を会計事務所に渡し、必ずその月中に前月の損益を報告してもらい、自社の財務状況がどうであるのか、しっかり把握するように努めて下さい。
・決算書に把握していない役員貸付金・借入金がある。
・会計処理についての確認・説明がない。
・資料を渡しても、財務状況等の説明・打ち合わせに来るのが1月以上あとになる。
・試算表を送ってくるだけで説明・打ち合わせ等がない。
記帳代行を委託している会計事務所ついて、2つ以上があてはまった場合は要注意です。
気付いた今が替え時かもしれません・・・