法人税率が変わる端境期だからこそ、当たり前すぎる節税対策を

もう、今さらすぎる話ではありますが、4月から法人税率が5%下がります。
(法案が通過すれば、との前提はつきますが)
新しい税率は、平成23年4月1日以後開始の事業年度から適用となりますので、この3月に決算をむかえる法人から、随時、旧税率での決算が終了していきます。
端境期となる、この決算における節税対策のポイントは、なんとも当たり前ですが、“所得を減らす(収入を先送り、費用を早期計上)”ということに尽きます。
ご存知の方も多いかと思いますが、世の中にある節税対策のほとんどは、納税の先送りにすぎません。
(例:生命保険を活用した節税・・・保険料を払うことで節税となるが、解約したときに解約返戻金が収入となり、その時に課税される。)
しかしながら、今回のタイミングにおける節税対策は、単純な納税の先送りとはなりません。なぜならば、“税率差5%分の旨味”を得ることができるからです。
それを踏まえ、今まで当たり前すぎてお伝えしてこなかったような節税対策を、いくつかご紹介しますので、実行できそうなものは“税率の高い”当期において実行してください。


■短期前払費用 例えば、法人が1年分の家賃を前払いしたとします。
費用とは、当期に対応するものだけが費用として認められるため、翌期以降の期間に対応する部分は、実際に払ったからといっても当期の費用とはなりません。
ただし税務上は『短期前払費用』として、“支払った日から1年以内にサービスを受けるもの”については、支払った事業年度での費用処理を認めています。
つまり、翌期1年分の費用を先取りすることで、節税が図れるのです。
この制度を活用する際の留意点は次の通りとなります。
継続的に、毎月均等なサービスを受けるものであること
(※賃貸契約や保険契約が適しており、月によってサービスにバラつきがある顧問契約等は認められません。)
当期末までに実際に支払っていること
契約に沿った払いであること
(※例えば、月払い契約の家賃を、1年分支払ったとしても適用されません。年払い契約に切り替える必要があります。)
今後、この処理を継続していくこと
■〆後給料の未払計上
前項でもあったように、費用とは、当期に対応するものだけが費用として認められます。
裏返せば、実際に支払っていなくても、当期に対応する費用は、未払計上をすることで当期の費用になる、ということです。
当然のことながら、一般的な経費については誰しもが未払費用に計上することで、当期に費用処理しているはずです。
しかし意外と漏れているのが、〆後給料の未払計上です。
例えば15日締め25日支給の給料であれば、“16日~31日分の給料を日割り計算”し、『〆後給料』として未払計上することが可能です。
半月分の給料となると、金額としても結構なものになり、節税効果も大いに期待できます。
この制度を活用する際の留意点は次の通りとなります。
役員は会社との委任契約のため、役員報酬については日割り計算による未払計上不可。
■決算賞与
賞与は基本的には支払った期の費用となりますが、一定の要件を満たすことで、未払いであっても当期の費用とすることができます。
ES(従業員満足)と節税が同時に図れるため、法人にとって大きな効果があります。
この制度を活用する際の留意点は次の通りとなります。
決算日までに賞与支給額を、従業員別に、かつ、すべての従業員に通知していること
(日付入りの通知書に、従業員からハンコをもらう等して、証明書類を備えることが望ましい)
当期の決算で未払計上していること
決算日後1月以内に、通知をした従業員全員に支払っていること


上記の節税対策は、冒頭でも述べましたが、当たり前すぎる節税対策です。
それでも、現場レベルでの感想として、新規にお付き合いをさせていただくお客様を見渡したときに、このような対策のすべてを当たり前のように実行されているお客様は少ない、という実感があるため、紹介させていただきました。
また、
“単純に経費の前倒しになるだけ、長い目でみれば納税額は変わらない”
ということでこれらの対策を実行されてこなかった方々も、前述した“税率差5%分の旨味”があるため、今回の決算対策における効果は、今までとは異なります。
3月の決算日を迎えるまで残りわずかですが、検討をお願いします。