草は濡れてしまっているけれど・・・

この国が溶けている・・というタイトルの本もあるようですが、
本当に、この国は溶けています。
ついに、昨年12月に発表された税制改正大綱にもとづく税制改正案は、
そのほとんどが通らないという前代未聞の事件が起きてしまいました。
国の基盤の中でも、最重要の税制が、法案が通されないまま放って
おかれているという事実は、異常です。
このことは、震災発生とは何ら関係はありません。
・・・というか、現在、日本で起きている多くのことは、震災前から、起きて
いたことや兆候が現れていたことです。
震災後の景色は、震災前の景色でもあるのです。
そして、震災前の景色の一つとして、税制改正案も通らなかったというのです。
例年通り、当社では、改正案が通る前提で、お客様へのアドバイスを行い、
準備を進めてきました。
幸い、改正案に基づいた準備は、すぐに実行されるものではありません
でしたから、事なきを得ていますが、こうしたことが続くようでは、安心した
対策も取れません。
この国は、本当に、異常事態になってしまっているのだと思います。
この国が、このまま溶けてしまうのかはわかりません。
ただ、さらに、経済の乗数効果が失われていくのは見えています。
当初出されていた改正案の法人税5%減税は、乗数効果が落ちてしまって
いる日本の経済にいくらかの好影響が期待されました。
ところが、震災復興が理由とは言え、法人税と所得税の増税が方向的に
避けることは不可能のようです。
すると、当初とは、逆に、日本経済の乗数効果は、さらに落ちることでしょう。
昔の日本経済は、良く干した草のように、マッチで小さく火を付けるだけで、
火はみるみる大きくなっていきました。
しかし、今の日本経済は、草がどんどん湿っていっています。
一生懸命火を付けても、火は広がらないわけです。
そして、溶けていく政治体制は、増税や不信といった湿り気を、日本経済に振り
まいて、その潜在力をどんどんダメなものにしています。
さて、こういう状況下で、私たちは何をすべきでしょうか?
残念ながら、前向きな答えはありません。
草が湿っているのですから、じっと待っているしかないのです。
もちろん、じっと待つ者が増えれば、さらに草は湿ります。
しかし、慌てて、湿った草に火を付けようとすれば、自分が損をするだけです
から、誰もが、他者を先頭に立てようとするでしょう。
気づいてみたら、経済環境は、ババ抜きの環境になってしまったのです。
もちろん、震災復興関連や住宅業界のように、現在、好調の業界もあります。
昔のように、一緒くたに全体を語ることができる時代ではありません。
しかし、あえて全体で見れば、昔は早い者勝ちの経済であり、今は、ババ抜きの
経済といえるでしょう。
ただし、ありがたいことに、このことがわかっていれば、草が湿った状況でも
ビジネスチャンスがちゃんとあるのも日本です。
人口1億人以上の国には、私たちが思う以上に、市場チャンスがあるのも
事実です。
全体としては、草は湿っていますが、その湿った草の固まりの片隅には、
まだまだよく燃える草があるのです。
国は、溶けてしまっていますが、溶けた環境の中からチャンスを探していくのは、
ある面で、仕事師としてやり甲斐のある環境ともいえると思います。