消費税増税で値下げ?

「消費税がいつ増税されるか?」
という議論は、既に無意味な時期に突入しているのはご存じの通り。
今は2011年8月。
当初、政府は2015年までに10%への段階的引き上げを検討中でした。
その後右往左往しているで、どうなるかは分かりませんが・・・。
しかし、当初の議論の流れを前提にすると、来年は無理でも2013年には
増税されてもおかしくはありません。
過去、消費税3%の導入と5%への税率引き上げは4月に実施されています。
仮に、2013年4月に1回目の増税が行われるとすると、残り2年を切っている・・・。
今日から3回目の決算を迎えるときには、既に増税されているかもしれません!
従って、そろそろ“消費税の増税までに何の準備をしておくか?”という議論に
移らなければなりません。
これを怠ると、業績が“ガクン”と下がってしまう可能性もあります。
そこで、今回は消費税増税に合わせて“ガクン”と業績が下がってしまう
企業の1パターンをご紹介します。
それはどんな企業かと言うと、
「消費税を上げると物が売れなくなり、企業の利益が下がり、法人税も
下がる! だから、経済や税収の事を考えると、消費税の増税は悪影響
でしかない!!」
という議論に乗ってしまう企業です。
当然、消費税が上がると商品及びサービスの販売価格も上がります。
仮に5%から10%に上がると・・・
105円(税込み) → 110円(税込み)
税金とはいえ、消費者にとっては値上げと一緒ですから、購入意欲が減少して
しまうのは仕方がないことです。
しかし、この議論に乗ってしまう企業の消費税増税後の販売価格は以下の
ようになります。
105円(税込み) or 108円(税込み)
つまり、販売価格が上がる事によって売れなくなる事を恐れ、増税後も元の
販売価格を維持するか、その真ん中の販売価格を採用します。
消費税率10%での105円(税込み)の本体価格は95円、108円(税込み)の
本体価格は98円。
元々の本体価格は100円ですから、それぞれ5%、2%の値下げとなります。
これを年商1億円の企業の例で当てはめると以下の通り。

この例を見るといかがでしょう?
先程の議論、物が売れなくなったから経済や税収が悪化したと言いきれない
のではないでしょうか。
つまり、企業が元々の消費税抜きの販売価格を維持出来なかった事に原因が
あるという見方も出来ます。
仮に、105円(税込み)を維持した事により販売量が増え、値下げ前の売上高を
維持できたとしても、それは瞬間風速です。
販売量が元に戻れば企業体力が持つはずもなく、いずれ110円(税込み)に
しなければなりません。
そして、次に110円(税込み)に引き上げた段階では、それは消費税の増税
ではなく、“値上げ”です。
タイミングを逸して“値上げ”をすれば、販売量の減少に拍車がかかります。
それでも販売量を維持出来るのは、きちんとブランディング出来ている一部の
企業だけ。
消費税の増税は、これが最後ではありません。
皆さんは、素直に消費税を価格に転嫁するのと、しないのと、どちらを選択
しますか?
するのであれば、販売量減少に耐えられるように、値上げや原価率の低減を。
しないのであれば、抜本的に収益構造を変えておかなければなりません。
そして、これらは今から行っておかなければ間に合いません・・・。

草は濡れてしまっているけれど・・・

この国が溶けている・・というタイトルの本もあるようですが、
本当に、この国は溶けています。
ついに、昨年12月に発表された税制改正大綱にもとづく税制改正案は、
そのほとんどが通らないという前代未聞の事件が起きてしまいました。
国の基盤の中でも、最重要の税制が、法案が通されないまま放って
おかれているという事実は、異常です。
このことは、震災発生とは何ら関係はありません。
・・・というか、現在、日本で起きている多くのことは、震災前から、起きて
いたことや兆候が現れていたことです。
震災後の景色は、震災前の景色でもあるのです。
そして、震災前の景色の一つとして、税制改正案も通らなかったというのです。
例年通り、当社では、改正案が通る前提で、お客様へのアドバイスを行い、
準備を進めてきました。
幸い、改正案に基づいた準備は、すぐに実行されるものではありません
でしたから、事なきを得ていますが、こうしたことが続くようでは、安心した
対策も取れません。
この国は、本当に、異常事態になってしまっているのだと思います。
この国が、このまま溶けてしまうのかはわかりません。
ただ、さらに、経済の乗数効果が失われていくのは見えています。
当初出されていた改正案の法人税5%減税は、乗数効果が落ちてしまって
いる日本の経済にいくらかの好影響が期待されました。
ところが、震災復興が理由とは言え、法人税と所得税の増税が方向的に
避けることは不可能のようです。
すると、当初とは、逆に、日本経済の乗数効果は、さらに落ちることでしょう。
昔の日本経済は、良く干した草のように、マッチで小さく火を付けるだけで、
火はみるみる大きくなっていきました。
しかし、今の日本経済は、草がどんどん湿っていっています。
一生懸命火を付けても、火は広がらないわけです。
そして、溶けていく政治体制は、増税や不信といった湿り気を、日本経済に振り
まいて、その潜在力をどんどんダメなものにしています。
さて、こういう状況下で、私たちは何をすべきでしょうか?
残念ながら、前向きな答えはありません。
草が湿っているのですから、じっと待っているしかないのです。
もちろん、じっと待つ者が増えれば、さらに草は湿ります。
しかし、慌てて、湿った草に火を付けようとすれば、自分が損をするだけです
から、誰もが、他者を先頭に立てようとするでしょう。
気づいてみたら、経済環境は、ババ抜きの環境になってしまったのです。
もちろん、震災復興関連や住宅業界のように、現在、好調の業界もあります。
昔のように、一緒くたに全体を語ることができる時代ではありません。
しかし、あえて全体で見れば、昔は早い者勝ちの経済であり、今は、ババ抜きの
経済といえるでしょう。
ただし、ありがたいことに、このことがわかっていれば、草が湿った状況でも
ビジネスチャンスがちゃんとあるのも日本です。
人口1億人以上の国には、私たちが思う以上に、市場チャンスがあるのも
事実です。
全体としては、草は湿っていますが、その湿った草の固まりの片隅には、
まだまだよく燃える草があるのです。
国は、溶けてしまっていますが、溶けた環境の中からチャンスを探していくのは、
ある面で、仕事師としてやり甲斐のある環境ともいえると思います。

新聞記事の私のコメントを補足しておきます

日経新聞電子版に、私のコメントが掲載されました。
コメントはこちら
(日経新聞電子版の会員でない方は会員登録をしてからご覧ください)
武富士事件とは、武富士創業者が長男に多額の生前贈与により節税を
行ったことについて、国税と争っていた事件で、2月の最高裁の判決で、
国税側が敗訴し、長男に対する課税処分が取り消しになった事件のことです。
長男は課税処分後に延滞税を含めた約1600億円をいったん納付して
いたため、判決確定後に納付していた税金の還付を受けましたが、この時に、
税金と一緒に還付加算金(400億円)も受け取っています。
還付加算金とは、納め過ぎた税金の利子にあたるもので、現在は年利4.3%です。
この利率は、現在の低金利を考えると、大変高い金利のため、このような制度で
よいのかが問題視されています。
この記事に対して、日経新聞電子版では、私のコメントは次のように扱われて
います。


銀行の預金利子が1%にも満たない超低金利時代に、
4%を超える還付加算金の高利率は妥当といえるのだろうか。
専門家の間でも意見は様々だ。
エー・アンド・パートナーズ税理士法人(東京・千代田)代表の岡本吏郎税理士は
「納税者の税金滞納を防ぐため、延滞税の利率は一定程度高くあるべきだ。
それと同様に、還付加算金の利率が高ければ、今度は国に対するペナルティーに
なり、武富士の訴訟のような国税当局による行き過ぎた課税処分の抑止にも
つながる」との見方を示す。


そして、私のこのコメントの後に、現在の制度では金利が高すぎだとする青山学院
大学大学院の佐藤正勝教授(租税法)のコメントが掲載されています。
私のコメントは、この記事の内容で間違いありませんが、
私が、コメントで最も言いたかったことは、こういうことではありませんので、この
メールマガジンで補足をしておこうと思います。
今も説明したように、税金は、少なく払うとペナルティーがあります。その代表的な
ものが、罰則的金利に当たる延滞税です。
そして、国が、私たちから税金を取りすぎた場合も、同様の罰則があり、それが
還付加算金です。
これらの金利には、罰則的意味合いがあるため、市場金利よりも高くなっており、
いわゆる公定歩合にあたる金利に4%を加えたものとなっています。
そして、納税者側にも国側にも、こうした懲罰的金利を用意することで、脱税や
無理な取り立てを抑制するようになっているわけですが、実は、納税者側と国側が
平等なわけではありません。
私たち納税者側が払う延滞税などは、いわゆる経費にすることが
できないのです。
しかし、国から取得した還付加算金には、税金がかかります。
したがって、今回の武富士事件でも、国から取得した400億円の半分は税金で
納めることになります。
また、納税者側がかかる延滞税は、二ヶ月を超えると14.6%という懲罰的な
金利になります。
つまり、納税者と国は、平等な制度の元にあるわけではないのです。
今回の日経新聞の記事は、趣旨が違うところにありますから、この私の指摘が記事
になることはありませんでしたが、最も重要なことは、この削除された部分にこそ
あると思っています。

法人税の減税見直しで起こること

税制改正で決まった法人税減税がなくなりそうです。
しかし、今回の政府の決定は、
各種特例を廃止して、税率下げを図りました。
税率下げはなくなりましたが、廃止した特例の復活はありません。
さらに、役員報酬に対する所得税の増税も、そのままです。
震災復興という国家目標がありますから、
致し方ないところもあります。
今は、国民全員が耐えるという時期なのでしょう。
しかし、意外に思うかもしれませんが、この決定を喜んでいる業種もあります。
・保険代理店
・銀行
この2つの業種は大喜びです。
まずは、保険代理店。
もし、法人税減税が決まっていたら、
保険代理店が売っていた保険商品を使った節税ができなくなるところでした。
保険商品に限りませんが、業者が推奨する節税策とは、
節税商品の手数料を払っても、支払う税金よりも少ないことで成り立っています。
そこで、保険代理店の中には、
節税の設計書で、所得が800万円以下の中小企業を相手に約40%の税率を適用して
節税になることを売り込むところも少なくありませんでした(それ以外にも、騙しは隠されています)。
ところが、その税率そのものが下がってしまう。これで、手数料を払ってまで節税保険商品を買う意味がなくなります。
一部の商品を除くと、保険商品による節税策はシャットアウトされるところでした(意図的ではありませんが・・)。
また、現在、行っている節税保険の対策も必要になり、
解約も増えるところでしたが、それが回避されることになりました。
もう一つは喜んでいるのは銀行。
今回の税率下げで、
銀行がたくさん積んでいる繰延税金資産の取り崩しの必要が生じるはずでした。
元々、繰延税金資産は、銀行の救済のために前倒しで導入された経緯がありました。
それが、法人税率の下げで、繰延税金資産の取り崩しの必要になるということで、
業界では大騒ぎになっていました。
なぜならば、
繰延税金資産とは、税務会計と企業会計の差によって、前払いされている税金を
前払い資産として計上するものですから、
その前払い税金とされるものが、税率の下げ分だけ資産から取り崩さなくてはならなくなるからです。
そして、これにより最終赤字に陥るとされた銀行もあったのです。
こうした話は、単なる数字の遊びみたいな所があります。
繰延税金資産を崩そうが崩さなかろうが、経営の実質は変わりません。
しかし、その表面の見た目が変わると言うことで問題になっていました。
この2つの業界は、
今回の税率下げ中止で、かなりほっとしていることと思います。
増税色一色の中で、
こんな景色もあるのです。

法人税率が変わる端境期だからこそ、当たり前すぎる節税対策を

もう、今さらすぎる話ではありますが、4月から法人税率が5%下がります。
(法案が通過すれば、との前提はつきますが)
新しい税率は、平成23年4月1日以後開始の事業年度から適用となりますので、この3月に決算をむかえる法人から、随時、旧税率での決算が終了していきます。
端境期となる、この決算における節税対策のポイントは、なんとも当たり前ですが、“所得を減らす(収入を先送り、費用を早期計上)”ということに尽きます。
ご存知の方も多いかと思いますが、世の中にある節税対策のほとんどは、納税の先送りにすぎません。
(例:生命保険を活用した節税・・・保険料を払うことで節税となるが、解約したときに解約返戻金が収入となり、その時に課税される。)
しかしながら、今回のタイミングにおける節税対策は、単純な納税の先送りとはなりません。なぜならば、“税率差5%分の旨味”を得ることができるからです。
それを踏まえ、今まで当たり前すぎてお伝えしてこなかったような節税対策を、いくつかご紹介しますので、実行できそうなものは“税率の高い”当期において実行してください。


■短期前払費用 例えば、法人が1年分の家賃を前払いしたとします。
費用とは、当期に対応するものだけが費用として認められるため、翌期以降の期間に対応する部分は、実際に払ったからといっても当期の費用とはなりません。
ただし税務上は『短期前払費用』として、“支払った日から1年以内にサービスを受けるもの”については、支払った事業年度での費用処理を認めています。
つまり、翌期1年分の費用を先取りすることで、節税が図れるのです。
この制度を活用する際の留意点は次の通りとなります。
継続的に、毎月均等なサービスを受けるものであること
(※賃貸契約や保険契約が適しており、月によってサービスにバラつきがある顧問契約等は認められません。)
当期末までに実際に支払っていること
契約に沿った払いであること
(※例えば、月払い契約の家賃を、1年分支払ったとしても適用されません。年払い契約に切り替える必要があります。)
今後、この処理を継続していくこと
■〆後給料の未払計上
前項でもあったように、費用とは、当期に対応するものだけが費用として認められます。
裏返せば、実際に支払っていなくても、当期に対応する費用は、未払計上をすることで当期の費用になる、ということです。
当然のことながら、一般的な経費については誰しもが未払費用に計上することで、当期に費用処理しているはずです。
しかし意外と漏れているのが、〆後給料の未払計上です。
例えば15日締め25日支給の給料であれば、“16日~31日分の給料を日割り計算”し、『〆後給料』として未払計上することが可能です。
半月分の給料となると、金額としても結構なものになり、節税効果も大いに期待できます。
この制度を活用する際の留意点は次の通りとなります。
役員は会社との委任契約のため、役員報酬については日割り計算による未払計上不可。
■決算賞与
賞与は基本的には支払った期の費用となりますが、一定の要件を満たすことで、未払いであっても当期の費用とすることができます。
ES(従業員満足)と節税が同時に図れるため、法人にとって大きな効果があります。
この制度を活用する際の留意点は次の通りとなります。
決算日までに賞与支給額を、従業員別に、かつ、すべての従業員に通知していること
(日付入りの通知書に、従業員からハンコをもらう等して、証明書類を備えることが望ましい)
当期の決算で未払計上していること
決算日後1月以内に、通知をした従業員全員に支払っていること


上記の節税対策は、冒頭でも述べましたが、当たり前すぎる節税対策です。
それでも、現場レベルでの感想として、新規にお付き合いをさせていただくお客様を見渡したときに、このような対策のすべてを当たり前のように実行されているお客様は少ない、という実感があるため、紹介させていただきました。
また、
“単純に経費の前倒しになるだけ、長い目でみれば納税額は変わらない”
ということでこれらの対策を実行されてこなかった方々も、前述した“税率差5%分の旨味”があるため、今回の決算対策における効果は、今までとは異なります。
3月の決算日を迎えるまで残りわずかですが、検討をお願いします。

税金の世界でも『年金問題』!?

税理士は各地域の税理士会に所属しており、2、3ヶ月毎に所轄税務署と
『事務連絡会』というものを開いています。
これは、その連絡会の中での税務署とのやり取りです。
税理士 「この場合、本当に確定申告しなくていいんですね?」
税務署 「しょうがないですね。申告をしろという規定がありませんから・・・」
税務署 「それで結構です・・・。」
また、この国は行き当たりばったりの制度を作ってしまいました。
それは『年金取得者の申告不要制度』というものです。
大ざっぱに言うと、年金400万円以下の人は確定申告をしなくてもいいという
制度です。
このようなできたばかりの制度には多くの欠陥があるものです。
もう少し詳しくお話いたします。
年金をもらっている人の中で、一定の金額以上の年金をもらっている人に
ついては『扶養親族等申告書』というものを提出しています。
もちろん出している人にしかわからない話ですが、一言でいうと沢山の年金を
もらっている人のところに届く書類です。
この書類に扶養となる家族をたくさん書いて出すことによって、本来は年金から
控除される税金が少なくなったり、ゼロになったりします。
事例でお話しましょう。
例えば、お爺さん、お婆さん、お父さん、お母さん、子供2人という
家族がいたとします。
ここでは、お父さんは会社を経営しているオーナー社長だと思ってください。
そして、お爺さんは前経営者で、退職して沢山の年金をもらっています。
この場合、お婆さん、お母さん、子供2人は誰の扶養につけるでしょうか?
通常であれば、一番収入の多い、お父さんの扶養にするでしょう。
オーナー社長とお爺さんはそれぞれ確定申告を行い、税金を納めています。
ところが、今回の年金申告不要制度を乱用すると次のようなことが
できてしまうというのです。
1.年金機構の『扶養親族等申告書』にお婆ちゃん、お母さん、子供2人を
記載して提出
2.社長が確定申告を行う。その際、お婆ちゃん、お母さん、子供2人を
扶養親族として申告をする。
つまり、扶養親族の変更です。
これで、お婆ちゃん、お母さん、子供はお爺さんと社長の二人の扶養親族と
なることになります。
従来であれば、扶養に変更があり納税が発生する場合には確定申告が
必要になりました。
しかし、今回の申告不要制度については、年金が400万円以下であり、
かつ他の所得が20万円未満である場合には確定申告が不要となっています。
ただし、今までの話はすべて国税だけの話です。
住民税についてはこの申告不要制度がありません。
つまり、所得税の確定申告は行う必要はありませんが、住民税の確定申告は
必要なのです。
先ほどの扶養変更についても住民税の申告では扶養を変えたことをちゃんと
申告しなければいけません。
これによって扶養が重複していることが明らかとなり税務署より何らかの
お尋ねが届くことになる筈です。
この手の税法の抜け穴を使ったテクニカルな節税ノウハウが出回る可能性が
ありますが、これは明らかな脱税行為であり、制度上の瑕疵を悪用するものです。
このような瑕疵は必ず立法手段によって対処されます。
目先の怪しい話に飛びつくことのないように十分ご注意ください。

当社にとっては無縁の話だ!と思っていませんか?

“減価償却”・・・、皆さんを悩ませている会計・税務の制度の一つです。
会社が固定資産を購入した場合、その支出は購入した年度の一時の経費とはならず、減価償却という制度を通じて、数年にわたって経費化されていきます。
キャッシュアウトしているにもかかわらず、経費化されるのは一部であるため、税金を減らす効果は少なく、また、利益とキャッシュの乖離を生む大きな原因となっています。
経営者であれば誰しもが、固定資産の早期経費化を望んでいます(経費算入額が増える=節税効果につながる)。
そんな減価償却の世界には、“特別償却”という制度があります。
特別償却とは、対象となる固定資産を購入した際に、通常の減価償却費に上乗せして30%の追加償却を認める制度です。
とても便利な制度なのですが、巷では、このような誤解があるようです。
『特別償却の対象となる資産は、大変高価なものや特殊なもの。当社には、まったくもって無縁の話だ。』
特別償却の対象となる固定資産は、160万円以上の機械や、120万円以上の備品。3.5トン以上の車や、船舶など、確かに特殊なものが多いです。
しかし、このような対象資産もあります。
「“電子計算機(パソコン)”及び“インターネットに接続されたデジタル複合機”で、それぞれの取得価額の合計が120万円以上のもの」
1台あたりではなく、合計額が120万円以上であるため、何台もまとめて購入した場合には、適用となるケースが出てきます。
ここでいう“それぞれの合計額”とは、パソコンはパソコンの合計で、複合機は複合機の合計で判断する、という意味であるため注意が必要です。
(パソコンと複合機の合計額では適用不可)
また、特別償却制度は、30万円未満の資産を一時に経費化する“少額減価償却資産”の制度とのダブル適用はできないため、通常のパソコンであれば30万未満であることにより、一時に経費化しているため、特別償却を考える必要はないでしょう。
やはり漏れやすいのは、複合機を何台も購入した場合の特別償却の適用です。
また、リースで取得した場合にも、特別償却の適用こそありませんが、“税額控除”の適用はあります。(取得価額の7%が、法人税額から控除される)
リースの場合、複数のいろいろな資産(複合機、サーバー、パソコン、プリンター等)をまとめて一括リース契約しているパターンをよく見かけますが、それでは、対象となる資産にかかる金額だけを抽出するのは困難であるため、税額控除の適用はできません。
リースの際には、対象資産を認識し、それについては、別契約することをお勧めします。(個別金額が分かれば、その必要はありません。)
特別償却や税額控除の規定は、とても複雑で、また、条文も多岐に渡っているため適用の判断はなかなか難しいものです。
しかしながら(だからこそ、と言うべきか)、適用の有無によって節税効果が大きく変わるものです。
実際、当社が新しく税務顧問契約を結ばせて頂くお客さまを見渡すと、適用漏れのケースを散見いたします。
何か大きな買い物をする際には、必ず事前に顧問税理士へ相談されてください。
また、確実に事を進めたい、第3者の意見も聞いてみたい、と言った場合には、是非とも当社の税理士セカンドオピニオンサービスをご活用ください。

雇用調整助成金について

震災等の影響で売上が減少しているが、固定費は通常通りに発生してしまう・・・。
固定費の大部分を占めるのは人件費・・・。
しかし、従業員の生活を考えれば、急にリストラするわけにもいかない・・・。
すでに“何度も”聞いたことがあるかとは思いますが、『雇用調整助成金』という助成金制度があります。
今回も、その“何度も”に該当し、すでに自社について検討をした結果、当てはまらないと結論づけられた方であれば、読み飛ばしていただいてもかまいません。
しかし、冒頭のようなお悩みをお持ちの方で、『雇用調整助成金』について聞いたことはあるが詳しくは知らない、または、初めて聞いた、という方々にとって、わずかながらでも手助けになれば幸いです。


(概要)
『雇用調整助成金』とは、経済上の理由により業績が悪化し、やむなく “休業等”を行った事業者が、従業員の生活を守るため休業手当を支給した際に、その休業手当の80%を国が助成する制度です。
“休業等”とは、会社全体が休むことを言っているのではなく(もちろん、会社全体で休む場合も対象になりますが・・・)、従業員毎の休業を指します。
つまり、各人別の休みの予定表を組み、その休みに対して休業手当を支給すれば、その支給額の80%が助成される、という制度です。
(具体的な活用事例)
以下は、厚生労働省のHPからの抜粋です。
■交通手段の途絶により、従業員が出勤できない、原材料の入手や製品の搬出ができない、来客がない等のため事業活動が縮小した場合。
■事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早期の修復が不可能であり生産量が減少した場合。
■避難指示など法令上の制限が解除された後においても、風評被害により観光客が減少したり、農産物の売上が減少した場合。
■計画停電の実施を受けて、事業活動が縮小した場合。
(主な支給要件)
上のセクションに活用事例を挙げましたが、事業の不調がどこまで経済上の理由や震災の影響によるものなのかは計り知れない部分があります。
そこで、次のような客観的な支給要件が定められています。
■最近3ヶ月の生産量、売上高等が、その直前の3カ月又は前年同期と比べ5%以上減少していること
■休業等を実施する場合、都道府県労働局又はハローワークに事前にその休業計画を届け出ること
(出典、参考:厚生労働省HP)


この制度は今回の震災を機に創設されたものではありません(1981年に制定されています。)
しかし、今回の震災を受けて、支給要件の緩和が行われたり、厚生労働省のHP上で新たにQ&Aが掲載されたため、お伝えさせていただきました。
少しでも気になられた方はただちに、都道府県労働局又はハローワークにお尋ねください。 お願いします。

なぜ、あの社長は税務調査を歓迎するのか?

社長 「先生、今、税務署の方が来られまして・・・」
税務署の調査です。
私 「分かりました、私が行くまで中には入れないでくださいね。」
社長 「あっ、いいんです先生、もう調査はじめていただきました。」
私 「エェーそうなんですか!」
私 「今すぐ行きますから待っていてください(汗)」
普通の社長であれば税務調査は少なからず嫌がるものです。
ところが、この社長は快く税務調査を受け入れてしまいました。
実は、そこにはある理由がありました。
以前、税務調査を受けたときに、従業員による多額の不正が発見されたと
いうのです。
実は、税務調査では、税金の申告漏れだけではなく
社内不正や経理の不備が発見されることが少なくありません。
所轄の税務署より調査の連絡があったことを知った従業員が
横領の告白をしてきたというケースもあるくらいです。
また、その逆に、以前の税務調査で不正を指摘されなかったため
その後、不正金額が増加したというケースもあります。
一般の調査官による税務調査は、決められた期間で一定の
件数をこなす必要があり、見落とされることも珍しくありません。
ところが、調査官の中には査察部出身の者もおり、彼らは一般の調査官と
目の付けどころが違います。
帳簿書類の日付や筆跡、印鑑の種類まで確認し、書類の偽造までも見破ります。
その結果、申告漏れの税金よりも、発見される不正金額のほうが大きい場合
があるのです。
これは本当に珍しいことではありません。
多くの税理士が経験していることです。
税務調査が行われるまで、従業員の不正が続いてしまうのでは
困りますし、できれば、税務調査を受けずに不正を防止できるに
こしたことはありません。
まず、ある職務が一人の従業員に集中している仕事は要注意です。
・発注業務を一人の従業員が行っている。
・経理業務を一人の従業員が行っている。
・集金業務を一人の従業員が行っている。
・業者との折衝が 一人の従業員が行っている。
・請求書の発行を一人の従業員が行っている。
これらは全て不正の温床となります。
次に、不正を防止するために、次のことを徹底しましょう。
・予算制度の採用
・貯蔵品の受払簿を作成
・定額資金前渡制の採用
・現金回収は避ける
・領収証にはナンバリングをする
(書き損じは破棄させない)
・売掛金残高は確認状を送付
・定期的な棚卸(立会人を付ける)
・リベートの有無を確認する。
また、ある社長はこんなことも行っています。
その社長は、どんなに量が多くても全ての請求書に目を通し、
自ら決裁をします。
そして、その決裁は、必ず社員が揃っている前で、大きな声で全員に
聞こえるように質問をしながら行うのです。
これは実に上手いやり方です。
社長 「おーい、この外注なんでこんなに高いんだー?」
社員A「先月の○○が一緒になっているからです。」
社員B「それは先月に請求になっているはずです・・・」
社長 「おい、どうなってんだー(怒)」
こんな感じで、従業員どうしが牽制し合い、
社長も現場で起こっている問題が見えてきます。
その他にも不正を防止する手段は沢山ありますが
あらゆる手段を徹底したとしても不正は完全には無くすことが
できません。
それは、経営者自身による不正が残っているためです。
以前に、こんなことがありました。
預金の受払いと経理を全て奥さまが一人で行っていた会社がありました。
以前からどうしても預金の受払いが合わなかったため調査していったところ
犯人は社長の奥さまだったのです。
もちろん、その逆もありました。
売上金の集金をすべて社長が行っていたのですが、
入金額が少なく現金がマイナス残高になってしまうのです。
社長が奥さまに内緒で売上げの一部を抜いていました。
いずれも立派は『横領』です。
社長とその親族による横領は税務調査では大きなペナルティーと
なります。
日頃から、適切な経理を心がけ、税理士による監査を受けることは
税務調査対策だけではなく、大きな意味があるのです。

税率が変わるタイミングでよく耳にする話

税率が変わるタイミングでよく耳にする話
◆“消費税率が上がるタイミングでは、金(ゴールド)の購入がいい”
これはよく耳にする話です。
10,000,000円分の金の購入・売却を例に考えてみます。

■金の購入には消費税がかかるため、旧消費税率(例えば現状の5%とします)で金を購入すると税込みで10,500,000円の支出になる。
■その後、消費税率が上がった直後(例えば噂されている10%とします)に金を売却すると11,000,000円の収入になる。
■つまり、税率差分の500,000円が儲かることになる。

一見すると、非常においしい話に見えますが・・・、これには相場観が全然考慮されておりません。
このようなおいしい話があるのであれば、それは相場に反映され、消費税率が上がる前にはある程度の上昇を見せることになります。
そして、消費税率が上がった直後に値段が落ち着くことになる。つまりは、高く買って安く売ることになるため、税率差のうまみは消えてしまうのです。
◆これに似た話を最近耳にするようになりました。
“法人税率が下がるタイミングでは、保険の購入がいい”
皆さんご存知のとおり、4月より法人税率が下がります。(現時点では、正確には、下がるだろう・・・ですが。)
税制改正大綱にも記載されていましたが、実効税率ベースで約5%も下がることになります。
これを利用した保険購入のロジックは次のとおりです。

■法人税率が下がる前に保険に加入する。
■損金部分があれば、それに係る節税額は、高い旧法人税率で計算される。
■その後、税率が下がってから保険を解約する。
■損金となっていた部分は、解約時に雑収入として受け入れることになるため、法人税が課税されるが、その時には税率が下がった後の低い法人税率で課税されるため、税率差分のおよそ5%が儲かることになる。

先ほどの消費税と同様で、表面だけとらえると非常にロジカルでいい話のように聞こえます。
ですが、きちんとした検証を行うことは必要です。
むしろ、いい話に聞こえるからこそ、適切な検証を行う必要があるのです。
例えば、年払10,000,000円で全額損金となるタイプの保険に加入したとします。
払込額や返戻額、実質返戻率等の推移は次の通りとします。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
払込額 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000 0 50,000,000
法人税率 30% 25% 25% 25% 25%  25%
節税額 3,000,000 2,500,000 2,500,000 2,500,000 2,500,000 0 13,000,000 A
返戻額 50,000,000 50,000,000
単純返戻率 60% 70% 80% 90% 100%
納税額 12,500,000 12,500,000 B
A-B= 500,000 C

※税効果を除いた単純返戻率で100%を超えるのは、どんなに早くても丸5年はかかるので、解約のタイミングを6年目と仮定しました
節税額(A)から納税額(B)を差し引くと、1年目に払い込んだ10,000,000円に対する税率差として500,000円が儲かることになります。(C)
確かに、表面的な話どおりの
効果はあるようです。
ですが、その500,000円は、5年間資金を凍結させた見返りとしての500,000円(いわば利息)であり、また、単純返戻率が100%に達するという前提での話になります。
しかしながら、単純にすべてを否定できるわけでもありません。
資金に余裕がある会社であれば、5年間資金を凍結させても何ら困ることはなく、その結果として、年利1%の利息を受けながら保険の役務提供を受けることは悪い話ではないはずです。
また、被保険者の年齢や保険会社によっては、単純返戻率で100%を超えることもざらにあります。
つまりは個別事情による、ということです。
いずれにしろ、表面的な話だけに踊らされず、適切な検証を行ったうえで行動に移すことが必要です。
それは肯定的な話にしても、否定的な話にしてもです。